「誰かニーニーをマジで何とかしてくれ !」
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』で仲間由紀恵演じる母の壮絶な戦争体験を聞いても、心を入れ替えないクズニーニー(竜星涼)にまたしても批判殺到していた第79回。
第80回では、これまで何年も揉めていた長女(川口春奈)の『本家の嫁』問題が、今まで一度も姿を現したことのなかったオバァが突如登場してあっさり解決。
毎朝毎朝「これじゃない」と、視聴者の不満とため息がSNSから聞こえてくる。そんな『ちむどんどん』は沖縄を舞台にした作品として期待されていたのだが……。
「これまで放送された朝ドラで沖縄を舞台にしたものは『ちむどんどん』と『ちゅらさん(2001年)』、『純と愛(2012年)』の3作。なかでも『ちむどんどん』と『ちゅらさん』は、いろいろな面で共通点がありながらも、評価は天と地ほどわかれてますね」(テレビ誌ライター)
『ちゅらさん』は地上波の初回放送時における平均視聴率22.2%、最高視聴率29.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と多くの視聴者を魅了した。NHKが2003年に行った放送50周年記念「もう一度見たいあの番組リクエスト」では、連続ドラマ部門で第1位をとり、パート4まで続編が制作された大ヒット作だ。
一方、『ちむどんどん』は4月11日からスタートして以来、連日SNSでは酷評続き。同じ沖縄を舞台にしながら、2作品の評価がここまで分かれたのはなぜだろうか?
ちむどんどんとちゅらさんの明暗
両作品が似ていると言われるのは、話の大筋が似通っているからだろう。沖縄の豊かな自然の中で、家族に囲まれて育った少女が、上京して夢を追う。青年との恋の展開も酷似しており、タイトルの付け方も沖縄方言だ。さらに、主演も主題歌も沖縄出身の女優とアーティストを起用している。
家族構成など多少違う面ももちろんあるが、家が貧乏な点や、ダメな兄がいること、周りに迷惑をかけて騒動を起こすという点も既視感のある理由だろう。
これほど共通点があるのに、評価がこんなにも違うのには理由があると話すのはテレビ誌ライターだ。
「『ちゅらさん』は、登場人物がみんな魅力的でした。なんといっても国仲涼子さん演じる主人公・えりぃの、太陽のようなキラキラした笑顔に朝から元気をもらえました。それに比べ、『ちむどんどん』の登場人物はアラが目立つというか、感情移入しにくい人物が多いように思います。話題になったのは、竜星涼さん演じるムカつく兄こと“クズニーニー”でしたし(笑)」
それにひきかえ『ちむどんどん』は?
とはいえ、『ちむどんどん』も記念作品のひとつで、本作は沖縄本土復帰50周年「つなぐ未来へ」キャンペーン参加番組のひとつとして制作された。公式ホームページでは「本土復帰からの歩みを描く笑って泣ける朗らかな、50年の物語」と謳っているが……。
「沖縄戦や沖縄本土返還について触れながら、過酷な状況でも、主人公がたくましく生きていく姿を視聴者は期待していたと思います。そういったことに、ほぼ触れることなく、沖縄の少女の上京物語として序盤から展開してしまい、何を見せられているんだろうと思った人もいると思います」(前出、テレビ誌ライター)
ストーリーに入り込めない、主人公に感情移入できない、そもそも沖縄を舞台にした意味はあるのかなど、SNSでは作品に対する不満が噴出している。
《いくら「物語なんだから楽しまなきゃ」といっても、設定がめちゃくちゃだと、楽しむ以前に違和感しか感じないんですよね》
《わからん。ほんまにわからん。登場人物のことも、制作陣のことも、こんなにもわからんことだらけのドラマってあるんか》
《沖縄出身の俳優を起用していたので、もっと歴史を掘り返す、当時の苦しみに寄り添うお話が展開するのかと思いました。名優をあの程度の使いよう……》
そんな批判が続くなか、7月20・21日の第73・74回でようやく沖縄戦について触れられた。
仲間由紀恵演じる母親と、遺骨収集活動をしている男性が、それぞれの悲惨な戦争体験を語ったのだ。仲間の迫真の演技には、「感動した」「涙が止まらなかった」という感想も見られたのだが、その余韻に浸る暇もなく……。
「ようやく沖縄戦の悲惨さが語られましたが、それが主人公の恋の成就の前座のような扱いになっていて、より視聴者の反感を買ったようですね」(前出、テレビ誌ライター)
ドラマの評価がそのまま俳優へも
『ちゅらさん』のヒットをきっかけに国仲は一躍国民的女優としてブレイク。一方で『ちむどんどん』主演の黒島結菜には厳しい声が向けられることも。
《もうこの主人公も30近いだろうに、いつまでこのバカっぽいキャラで行くんだろう?または、ただ演技が下手なのか??》
《好きだった役者さん、特に黒島結菜ちゃんの事ガチで嫌いになりそうなのでもう見ません》
《黒島結菜ちゃん大好きなのに悲しくなってくる…。もっと素敵な女性を演じさせてあげてよ。絶対上手くできるのに。悔しい》
『ちむどんどん』の放送は9月30日までの全125回と発表された。あと2か月で、『ちゅらさん』の人気には追い付かなくとも、せめて役者たちの黒歴史にならないような展開を期待するのだが。
(取材・文/志村結衣)