俳優の織田裕二(54)中井美穂フリーアナウンサー(57)がメインキャスターを務めた『世界陸上オレゴン』(TBS系)。
13回連続でコンビを組む2人の安定感は抜群だったが、織田の時代遅れ感、古びた価値観と表現が耳に残る大会になった。
「顔見て、同じアフリカと思えない」
サニブラウン選手が、男子100mで日本人として初めて決勝に進出し7位に入賞した際。感想を求められた織田は、
「男の中の男だと思います」
と言いきった。
織田は、「男」という表現が好きなようで、男子走高跳で、カタールの選手と韓国の選手が競り合っている際にも、こう言い放ったのだ。
「どっちも男ですよね」
アメリカの選手については、
「とんでもない男に育っていると思いますよ」
「とんでもない選手」で十分な表現に「男」をぶち込む織田の言語センス。
女子選手の活躍については、
「女の中の女」とは言わないし「どっちも女ですよね」とたたえたりしない。
冷や冷やする発言もあった。
男子3000m障害決勝の際、織田と中井の後ろには、有力選手2人の写真とプロフィールが映し出されていた。ケニアとモロッコの選手を見比べて織田は、
「顔見て、同じアフリカと思えないほど違うでしょう」
アフリカの人は同じ顔、という偏った理解が刷り込まれているとしか思えない、織田のコメント。「同じヨーロッパとは思えないほど違うでしょう」と言うのだろうか。
女子1500m決勝でケニアの選手が世界記録ペースで金メダルを獲得した際には、織田は贔屓の選手の名前を出し、
「世界記録を出さないでと願っていました」
とテレビとは思えない偏向発言を堂々と言い放った。さらに「(世界記録が)出てほしいけど出てほしくない気持ちをくんでいただいてありがとうございます」と、金メダルを獲得した選手の名前まで出し、洒落にもならない歪んだ感謝の言葉を伝えたのだ。呆れるしかない。
女子三段跳の選手に対しては「かわいいです」と男性目線丸出し。やり投げの選手については「日本人(選手)の2人が若い。あとはおねえさんばかり」と、選手と言わずに“おねえさん”と表現するセンス。
女子3000m障害のアメリカの選手に対しては、
「きれいと3000m障害というギャップのすごさ、たまらない魅了です」
いやはや、である。
選手の人種に対しても、織田は踏み込む。
男子400mハードル決勝では、ノルウェーの選手に対し、
「すごい白人選手が出て来たと思います」
「すごい選手が出て来た」で通じるところを「白人選手」と織田は伝える。一方で、「すごい黒人選手が出て来た」という表現を耳にすることはなかった。
「ダメダメダメ、メダルなんて望んでない」
男子200mを走った日本人選手が、リレーについて聞かれた際の織田は、失礼極まりなかった。
「今まで日本はメダルを取ってきているので、メダルを目指して頑張りたいと思います」
と選手が高らかに希望を宣言した。それに対して織田は、
「ダメダメダメ、そんなこと思っちゃダメ。メダルなんて望んでないから、今回。そんなの望まなくていい。なぜならば今回は、1回もリレーに出たことのないメンバーしか残ってないから」
「ダメ」を連呼するのは失礼の極みだし、リレーに出たことのないメンバーだからメダルは無理と決めつける理不尽で浅すぎる思考。
後輩にも慕われているというアメリカの女子選手を紹介する際には、
「アメリカ(選手の中)で、こんなにできた人はいないと思います」
と身勝手な思い込み全開。「こんなにできた人はいないと思います」で十分な表現なのに、「アメリカで」と検証不能な表現を加えてしまう。
22歳の女子選手に対する発言は、多様性の現代の真逆を行くそれだった。
「ママさんになったアリソン(・フェリックス)のように、逆に若くして先に産んで、(競技に)戻って来るのを早くして、記録をばッと出す選手になるのか、妄想が止まらない」
と、人の人生を勝手に決めつける、出産することを勝手に決めつけるという暴走。これには隣の中井フリーアナも、
「いろんな生き方がありますね」
と返すだけだった。
中継を通して感じ取れたのは、偏見が透けて見え、時代に合わせて言葉のバージョンアップを怠った織田の、自信たっぷりの伝える力。
1997年から務めた織田&中井のメインキャスターコンビも、今回で仕事納めになる。
中井フリーアナ! お疲れさまでした。
〈取材・文/薮入うらら〉