チータはロックアーティスト!?
“チータ”こと歌手の水前寺清子がロックバンド・ギターウルフのステージにサプライズで登場し、代表曲『三百六十五歩のマーチ』のロックバージョンを披露、その実力に会場は大熱狂、話題は拡散され注目を集めた。
「ロックで紅白を目指せ。」
伝説が刻まれた、7月20日の新宿LOFT。この日開催されたのは、ギターウルフとサニーデイ・サービスの2マンライブ。
「それぞれ根強い人気をほこる2組のライブ、しかもそれがロフトで見られるという、もともとそれだけで神イベントでした」
と語るのは、ある芸能ジャーナリスト。
「ギターウルフのライブの盛り上がりが最高潮に達したところでサプライズでステージに登場したのが、ライダースに身を包んだ水前寺さん。その意外すぎる、しかも超大物の登場、そして名曲『三百六十五歩のマーチ』がギターウルフとのコラボで歌われる。これは会場にいた人は最高でしたでしょう」(同)
チータにとっても、ここへきての新しい挑戦には意欲と手応えが大きくあるのか、自身のYouTubeチャンネルに当日のライブ動画をドキュメンタリー風に編集し投稿。その動画タイトルには「ロックで紅白を目指せ。」と書かれている。
ある音楽ライターは、「水前寺さんに限らず、表現力が豊かで声量や音感も間違いない、演歌歌手とロックは実は親和性が高いと思います」と語り、続ける。
「近年は“エモ”という表現もありますが、ロックと演歌はエモーショナルな部分、抒情性の高さに共通します。広い意味でのシャウトともとらえると技術的な表現も近い。一部のロックステージの派手で豪華な演出や、様式美のような衣装などビジュアル面でも近い要素はあるといえるのではないでしょうか」
氷川きよしはヴィジュアル系
それを裏付けるように、実際にロックの要素を取り入れる演歌歌手も少なくない。わかりやすいところでは、人気アニメ『ドラゴンボール超』のオープニングテーマをロック歌手ばりに見事に歌いあげた氷川きよしが記憶に新しい。
「衣装や演出、メイクなどはヴィジュアル系のロックアーティストといっても遜色ないですし、楽曲の『限界突破×サバイバー』は演歌のカテゴリーではありません。ほかにもクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』の日本語カバーを歌ったりなど、ロックを取り入れるというか、正面から取り組んでいますね」
逆に、ロック側からのアプローチの例もあげる。
「デーモン閣下が、北島三郎さんの『与作』や谷村新司さんの『昴』などの名曲をカバーしています。原曲の魅力と閣下の歌唱力で見事にロックと演歌が融合している印象です」
古くは坂本冬美が忌野清志郎・細野晴臣とユニット『HIS』を組んでロックに挑戦したり、藤あや子はもともとエアロスミスやボン・ジョヴィの大ファンであることも有名だ。また神野美伽がかつてロックフェスに登場して『りんご追分』を熱唱し、大好評だったことも。
「ロックファンも平均年齢が高齢化しています。ビートルズ世代はもう60歳以上。ロックに親しんだ世代がシニアに突入したことで、“大人の聴く音楽”である演歌とロックの融合は、この世代にとって耳なじみのいいものなのかもしれません。これからもこの現象は増えていきそうですね」
チータがまさかのロックで紅白に電撃復帰の可能性も!?
〈取材・文/渋谷恭太郎〉