「こんにちは!」
まさか自分を待ち伏せ中の男とは思わず、同級生と連れ立って帰宅した9歳女児は、礼儀正しく挨拶したという。なぜならば、住んでいる集合住宅の敷地内だったから。
男は内心、狼狽したに違いない。それでも躊躇することなく、鬼畜の所業に取りかかったのだから許しがたい。
その男は大阪府吹田市在住の病院職員・柳本智也容疑者(26)。
今年の5月中旬、府内の集合住宅で小学校から帰宅した冒頭の女児A子さん(9)のあとをつけて同級生B子さん(9)ともども部屋に押し込み、いずれも13歳未満であると知りながら性的暴行を加えたり、裸を撮影するなどした疑い。
府警捜査1課は7月22日、強制性交等、強制わいせつ、住居侵入容疑で逮捕した。
「待ち伏せしたのは集合住宅の共有エリア。A子さんが玄関ドアをカギで開けて部屋に入った直後、うしろからB子さんも室内に押し込み、部屋に侵入。ふたりに目隠しをした上で全裸にし、裸体を撮影するなどわいせつな行為におよんだ。撮影は“口止め”目的ではなく、撮ることじたいが目的だったのではないかとみて調べている」(捜査関係者)
おぞましいことに、柳本容疑者はA子さんの身体を舐めたりしているという。
警察は女児の家族から通報を受け本件の捜査に着手。しかし、容疑者を割り出すのはたやすいことではなかった。
「防犯カメラに映りにくい場所を選んで動いていたからだ。犯行現場周辺の画像を調べると、どのカメラにも容疑者そのものずばりの姿は映っていない。細かく丹念に見直し、画像の片隅をサッと横切る影をとらえ、そうした点から次の点をたどり、姿がしっかり映っている場所まで線でつなげていった。死角に近いルートを選択をしていたとみられる」
と前出の捜査関係者。
割り出しができたのは、被害女児らが容疑者の特徴を覚えていたから。
「目隠しされる前に目撃した姿を忘れていなかった。例えば水色のシャツにカバン、そうした記憶によって容疑者を特定できた」(捜査関係者)
犯行現場までの移動には、黒色のスポーツタイプの電動アシスト付き自転車を使用。容疑者宅は高台にあり、周辺は坂道が多い。体力に自信がなかったのか、あるいは逃走スピードを考えたのか。自転車はすでに警察に押収されている。
現場周辺の防犯カメラに細心の注意を払い、犯行前後の足取りを追えないようルート工作する姿からは臆病で緻密な素顔がちらつく。
いまや街の随所に防犯カメラが設置されており、前方を監視するタイプや、半球体で広範囲をカバーするタイプなどさまざま。こうしたカメラの向きや画角まで計算し、動き方を決めていたとすれば相当な準備が必要だったはずだ。
「犯行時、女児宅に家族はいなかった。留守にする時間帯などを事前に把握していた可能性があり、現場の下見を含めた犯行の計画性について詳しく調べているところだ」(捜査関係者)
逃げ切る自信があったのか、逮捕当初は警察の取り調べに対し、
「記憶にありません」
などとしらばっくれていたが、その後、
「小学生の女の子ふたりにわいせつな行為をしました。その子らを全裸にさせ、撮影しました」
などと犯行を認める供述をしたという。
6年前から類似する手口の犯行が6件発生
大阪府警によると、犯行現場から約900メートルの範囲内で6年前から類似する手口で小学生女児を狙ったわいせつ事案がほかに6件発生しており、うち5件で犯行に刃物が使われている。
「本件では刃物は使っていないが、犯行の態様が似ているため容疑者が関与した可能性もあるとみて慎重に捜査中だ」(同)
類似案件は1年に約1件のペースとなるが、毎年決まった時期の犯行ではなく、1年以上動かないことも。警戒をかいくぐる目的で期間をあけていたとも考えられる。
その間、犯行現場近くでは、同じ年ごろの娘を持つ父母らが怯えることに……。
「数年前から、小学生の女の子を狙い、目隠しして撮影する男が出没するとママ友のあいだで情報共有していました。容疑者が捕まってホッとしている親は少なくないはず」
と小学生の子を持つ母親は話す。
なかには被害に遭わないよう、夫婦共働きにもかかわらず強引に時間をやりくりし、娘の送り迎えをしていた家庭も。
別の母親は、「雨の日に女児があとをつけられた、という話を聞いたことがあります」といまだ恐々とした様子でポツリ。
見えない影を恐れる日々はさぞ辛かったに違いない。
容疑者宅は約11年前に新築されたオートロック式分譲マンション。住人によると、容疑者は母親と弟との3人家族という。卑劣な手口で小学生を傷つけた容疑者に容赦ない言葉を浴びせる住人も。
「やることが人間じゃない。まるで獣。そんな隣人がいたなんてゾッとする」(男性住人)
事件の全容解明が待たれる。