不動の人気No.1はチキン味!3代目キャラクター・ホシオくん

 8月2日(お(0)や(8)つ(2))は“ベビースターの日”。『ベビースターラーメン』といえばおなじみ、おやつカンパニーのスナック菓子で、フライ麺のパリポリ食感に子どものころ病みつきになったという人も多いはず。今や誰もが知るロングセラー商品だが、その誕生は60年以上前のこと。戦後の食糧難を知る創業者の思いが開発のきっかけになったという。

「もともと弊社は製粉・製麺業を営んでいましたが、即席麺を天日干ししているとどうしても麺のカケラがポロポロこぼれ落ちてしまう。それを見た創業者が、“もったいない!”と活用して作ったのが始まりでした」(おやつカンパニー広報・諸岡亜由美さん)

 従業員におやつとして配ると、これが大好評。ならばと商品化を試みるも、調理して味わうラーメンとそのままつまんで楽しむスナック菓子では必要な原材料もまた違う。

「即席麺に使われるかん水はモチモチした食感を生みますが、苦味もあり、そのまま食べるには邪魔になる。そのまま食べて美味しい配合と、味つけの鶏がらスープにこだわり、試行錯誤を重ねていきました」(諸岡さん、以下同)

 発売は1959年。“小さなカケラのラーメン”の意味から、商品名を『ベビーラーメン』と命名した。即席ラーメンをアレンジした、かつてないスナック菓子の誕生である。

「どうやって食べるの?」当初は苦戦

「ただ当時はまだラーメンが今のような国民食になる前で、日本にスナック菓子という言葉自体がなかったころ。ラーメンをおやつにしたことは、あまりに画期的すぎたのかもしれません。お湯も丼もお箸も必要ないと言われ、大人たちから“一体どうやって食べたらいいのだろう”と不安視するような声が上がり、当初は苦戦を強いられました

 日本ではスーパーも今ほど身近でなく、まだコンビニも上陸していなかった時代。主な小売先は地元・東海地方の駄菓子店と、流通も限定された。

「けれど昔も今も『ベビースターラーメン』のファンは子どもたち。固定観念のない子どもたちがまず自由な発想で楽しみ、そこから口コミで広まっていきました。発売2年後には売り上げも倍増しています」

 販路も拡大し、人気は全国区へ。1973年には“子どもたちのおやつの中で一番星になりたい”との思いを込め、“スター”を加えた現在のブランド名に変更している。

初代キャラクター・レトロベビーちゃん(左)と、2代目・ベイちゃん

 発売時は女の子のイラストが袋に描かれていたが、1988年のリニューアル時に2代目キャラクター・ベイちゃんが登場。同時に従来のチキン味に加え、カレー味とみそ味の販売をスタートした。

「当初、味は1種類のみでしたが、選ぶ楽しさを提供すべくバリエーション化を図りました。ベイちゃんは衣装で各フレーバーを表していて、まだ文字の読めない小さい子どもたちに、どんな味か伝えるアイコンの役割を果たしています

 チキン味は中華服に中華帽姿で、カレー味はターバンを、みそ味は笠を頭にかぶり、それぞれ味のイメージをわかりやすく表現。追って2000年のサラダ味発売時には妹のビーちゃんが登場し、以降兄妹設定のキャラクターが継続した。

4万件以上の公募から選ばれた

 ベイちゃん・ビーちゃん兄妹は大きな人気を博すも、2016年に引退。現在活躍中のホシオくんは3代目キャラクターで、名前は公募で約4万7千件の中から選ばれた。

「ベイちゃん・ビーちゃんの引退を発表したところネットニュースで大きく取り上げられ、これはわれわれにとっても予想以上の反響でした。“ホシオくん”の名前はキラキラ輝くイメージや響き、愛着を感じられるネーミングということで採用に。ホシオくんは歌とダンスが得意で、食べたときのワクワク感を体現してくれています」

 時代とともに味も進化を繰り返してきた。チキン味は発売時から続くロングセラーだが、実は当初と現在では使う材料も配合も異なるという。

「改良はかなり頻繁に重ねていて、発売当時と今を食べ比べると味が大きく変わっているのがわかります。ただ従来の味が好きというファンをがっかりさせないよう、毎回わずかな変更にとどめているので、ほとんど気づかれることはないですね。

 また時代の流れとともに味覚や食のトレンドも変わり、配合もそれに合わせて変えてきました。ここ最近は、塩気を抑え、コクやうまみを強調する傾向に。トレンドに敏感に、時代ごとに誰が食べても一番美味しいと感じてもらえる味を目指して開発を行っています」

人気2位のソース味と3位のうましお味。あなたはどの味が“推し”?

 定番フレーバーのほか、期間限定商品、全国の地域限定商品など新フレーバーも続々登場し、ラインアップも大幅に拡充した。さらに幅広麺の『ドデカイラーメン』、麺をぎゅっと丸く固めたひと口サイズの『ラーメン丸』、ピリ辛味の麺にピーナッツを組み合わせた『ラーメンおつまみ』も加わり、一大ベビースター・ブランドを形成している。

兄弟ブランドまで含めると常時約30種類を定番として販売しています。これまで発売したフレーバーは約420種類。市場調査やお客様の声をもとに社内で企画開発を行っていますが、試作だけで発売に至らないものもたくさんあります。

 今も昔もダントツ人気はチキン味で、2位はソース味、3位はうましお味。再販のご要望が多いのがみそ味で、期間限定発売すると“待ってました!”との声をいただきます」

世界30か国で販売されている

 日本のみならず海外にも進出し、それぞれご当地オリジナルの味で親しまれてきた。

「1983年にまず香港で販売をスタートしました。2017年には台湾にも製造拠点をつくり、定番のチキン味に加えパクチー味や、台湾では一般的なアヒルの卵を塩漬けにした、ソルティエッグ味などその土地に合わせた味も販売しています。またアジアや北米ではソース味やとんこつラーメン味など日本の味も人気を集めています」

 現在はアジア、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニアの約30の国と地域で販売。今なお世界各地で展開を進めている。

 時代に合わせて変えていくものもあれば、変えることなく大切に守り抜くものもある。

「ずっと変えずにいるのは『ベビースターラーメン』らしさ。ラーメンのカケラから生まれたという経緯と歴史を大切に、ラーメンらしさを変わらず守り続けてきました」

 製麺業を原点に、製法もラーメン作りの工程を取り入れる。それがまた独特の魅力を生み出していると話す。

「『ベビースターラーメン』はラーメンの製造工程に近く、まず小麦粉を練るところから始めています。ポテトチップスは後からフレーバーをかけて味つけをしますが、『ベビースターラーメン』は小麦粉にいろいろな材料を混ぜ合わせたり、スープで味つけをしていく。なので味がしっかり麺に染み込み、食べる際も粉が手につくことなくお楽しみいただけます」

16種類のアレンジメニューを販売

 発売から60年あまり。子ども向けのスナックとして長く親しまれてきたが、近年では『ラーメンおつまみ』など大人向けの商品も加わり、ファン層もぐんと広がった。フレーバーや派生商品も多く誕生した今、ベビースター・ブランドがこの先目指すものとは?

『ベビースターラーメン』の製造工程。麺の形になった時点で味つけもできているので、しっかりと麺に味が染み込んでいる

『ベビースターラーメン』を食べると子どものころを思い出す、との声をよくいただきます。同時に『ベビースターラーメン』は絶えず挑戦を続けてきたブランドで、そうした姿が“元気になれる”と支持されてきました。昔を思い出し、そして明日の活力になるように、この先たとえ形は変わっても“ベビースターらしいね!”と言われる商品をお届けできたらと考えています」

 おやつカンパニーでは8月2日の“ベビースターの日”を記念し、各種コラボイベントを展開。その一例が東武百貨店池袋店とのコラボ企画で、計16種類のアレンジメニューを期間限定で販売する。

『ベビースターラーメン』がますます多くの方に愛されるようにと2018年に制定したのが“ベビースターの日”。実は『ベビースターラーメン』は料理との相性が非常に良く、これまでも多くのアレンジレシピを発信してきました。さまざまなシーンで『ベビースターラーメン』の魅力を感じていただけるよう、今年も記念日に合わせていろいろな企画をご用意しています。この機会にぜひお楽しみください」

 進化を止めない懐かしのスナック。60年以上愛され続けるその訳を再発見してみては?

取材・文/小野寺悦子