すべて成功させたいーー。歌手活動休養前のラストシングル『甲州路』を発売中の氷川きよし。なぜ、股旅演歌だったのか。そこに込められた思い、さらには『氷川きよし特別公演』、年末に向けた“その後”への意気込みを語った。
演歌でちゃんとお礼を
「ファンの方にはやっぱり、演歌で応援していただいているので。演歌でちゃんとお礼を、というとおこがましいんですが、間違いなく喜んでいただけるものを。今、こういう時代の中、少しでも気持ちが明るくなるような演歌作品を。そんな気持ちでこの曲を選ばせてもらいました」
今年12月末での歌手活動休養を発表している中、休養前のラストシングルに決めたのは『甲州路』(発売中)。
「“恋はこりごり甲州路”というサビは、すごくノリがよくて。誰でも口ずさめるフレーズなので、いろんなところでこりごりを使ってほしいです」
股旅演歌、そしてキャッチーなサビ。デビュー曲『箱根八里の半次郎』('00年)を彷彿とさせる。まさに原点回帰ーー。
しかも今回はA・B・Cタイプのカップリングを含め、すべて師匠の水森英夫さんが手がけているところにも、氷川の美学を感じる。
「スカウトして、東京に連れてきてくださったのはやっぱり水森先生ですし。23年たっても、変わらず恩師。お礼の思いを込めて今回、一緒に作品作りをさせていただきました」
ちなみに、どうして甲州を舞台にした楽曲を?
「自分がデビューしたばかりのころ、甲州街道の近くに住んでいて(笑)。そういう意味ではスタートの地でもあり、これからまた旅が始まるような感覚もあります」
股旅演歌のシングルリリースは、デビュー15周年記念シングル『ちょいときまぐれ渡り鳥』('14年)以来8年ぶり。
「デビュー20年を過ぎたころから、自分が歌いたかったものや見せたかった見せ方などをやらせてもらってきました。同時に、過去に学んできたものは生かされることを改めて感じています。やっぱり経験には無駄がない。『甲州路』は歌っていてすごく楽しいと思える曲なので、早くみなさんの前で披露したいです!」
演歌歌手からアーティストへと飛躍した氷川による股旅演歌。寄せる思いは、特別だ。
次に出発したときは全部ババロアで(笑)
東京・明治座での座長公演『氷川きよし特別公演』は連日、満員御礼のまま千秋楽を迎えた。7月23日からは舞台を大阪・新歌舞伎座に移し、“ザ・エンターテイメント”を届けている。
第一部のお芝居は『ケイト・シモンの舞踏会~時間旅行でボンジュール~』。氷川演じる子門慧音が、18世紀のフランスにタイムスリップ! コンビニ店員、ジャンヌ・ダルク風、アルセーヌ・ルパン風……など1人6役、大車輪の活躍を見せる。中でも教育係のメイド・ババロア役が好評で、本人もお気に入り。
「明治座の最初のころはほとんどシワがなかったのに、日に日にエスカレート。あちこちにシワ、クマを描きまくって、目もテープを貼って、もうしわくちゃのぐしゃぐしゃ(笑)。全部、自分でやっています。やっぱり、役柄を演じるときはなりきらないと! やるからには中途半端じゃなく、徹底してやりたいから」
くるくると衣装と役柄が変わっていく舞台の中で、それは大変なのでは?
「大変だけど、やっぱり客席の反応が楽しい。喜ばれることが好きですから」
と、誇らしげにニッコリ。物語においては、ババロアから『ベルサイユのばら』のオスカルを彷彿とさせる衛兵へとチェンジ。
「やっぱりメリハリが欲しいので。あまりにババロアが好評なので、YouTubeに『ババロアの大冒険』をアップしたんですが、2万5000回くらい再生されていて。次に新しく出発したときには、全部ババロアでお芝居しようかなと思っています(笑)。もう2時間、3時間、ひとりでやれますよ。おしゃべりが止まらないから(笑)」
新歌舞伎座の千秋楽は8月5日。その後、8月15日~27日は福岡・博多座、9月5日~15日は愛知・御園座が控えている。
「とにかく体調に気をつけて、全公演成功させたい。コロナ禍だけど、中止になるようなことは絶対に避けたい。座長として、キャストやスタッフに徹底してお願いをしています。対策は厳重にしているので、気分転換で劇場公演を見てもらって、気持ちを明るくしてもらいたいなと思っています。そして“やりきった”という達成感で東京国際フォーラム(クリスマスコンサート『きよしこの夜』)、年末へと向かいたい。それもすべて成功させたいです」
並々ならぬ思いのもと、熱い夏を駆け抜けるーー。
最近の“こりごり”は?
「うーん。やっぱり人が多い場所はこりごりですね。今は座長公演中なので、自分に何かあったらみんなに迷惑をかける。本当にみんなで一生懸命やっているので。だから人混みをなるべく避け、緊張感をもって日々過ごしています」