5人に1人が年収200万円以下という時代に突入した。物価高は進み、年金制度も不透明、投資する元手もなく、再就職など収入を得るハードルも高い。20年前に著書がベストセラーになったことがきっかけで「年収300万円」が流行語大賞になった森永卓郎さん。年収200万円時代に突入したいま、どう生きていくべきか話を聞いた。
ついに到来した超・低年収時代
《これから、過去に例のないほどの大不況が訪れ、年収200万円時代が到来する》
そう私が予見してから2年がたったいま、昨年の国税庁の調査で日本の労働者の5人に1人以上が年収200万円以下であることが明らかになりました。正確にいうと、給与所得者5245万人のうち年収200万円以下の人は全体の22・2%。さらに、200万~300万円の割合が15・5%ですから、なんと給与所得者の4割近くが年収200万円台以下です。
この状況は、非正規社員の割合が爆発的に増えたことが原因と考えられていましたが、ここ数年を見てみると、正社員であっても年収200万円台という人が増えてきています。
原因として考えられるのは弱肉強食社会での経済格差の拡大です。稼いでいる人はより大きな収入を得られる一方で、低所得者はさらに貧困に追い詰められていくという格差社会が問題の根源にあると思います。残念なことに、私はこの状況がさらに悪化していくと予想しています。
戦後生まれの団塊の世代が後期高齢者に入る2025年以降、年金や医療、福祉などで国の負担は急速に増えていきます。その打開策として政府が打ち出したのが、労働力人口を増やすというもの。
労働力人口の減少は税収の減少に直結しますから、高齢者や女性、そして外国人労働者を安い賃金で働かせようというのが国策になりました。その結果が年収200万円問題なのです。この国最大の課題である少子高齢化が止まらない限り、経済格差はこれからも広がり続けます。
支出の大半は「家」。都会を捨てる選択も
年収200万円でも「豊かさ」を手に入れたいなら、まず、支出の大部分である住宅費に注目です。
東京であれば23区内に3LDKのマンションを持つと管理費などで最低でも月数万円はかかります。賃貸であれば年収200万円のほとんどが家賃に消えてしまうでしょう。
そこでオススメしたいのが「トカイナカ」。私は都会と田舎の中間地点にあるトカイナカこそが、理想郷であると思うのです。実は私は30年以上前から、東京都心から電車で1時間半かかる埼玉県の所沢市内でトカイナカ生活を送り、そこから都心に働きに出ています。家賃相場は東京23区内に比べると3分の1以下、負担が大幅に減りました。
物価に関しても大きな差を感じていて、特売品を上手に利用すると実質的な生活費は半分以下になる印象。私は自分で野菜も作っているのですが、30坪ほどの畑があれば家族分の野菜は十分に作ることができるし、健康的にもメリット満載です。
以前ライザップのトレーニングを受けていたのですが、畑で1回農作業をするとライザップ1回分のトレーニングに匹敵する運動量だと実感しています。
もちろん、都心での暮らしを維持するために一生懸命働くのもひとつの選択肢ですが、働けば働くほど税金や社会保険料は増えます。一方で、物価の低いトカイナカで生活費を下げた分には税金はかかりません。節約は無税ですからね(笑)。
コロナ禍の影響でリモートワークが進む今、トカイナカへの移住は人によっては大きな負担になりませんし、定年を控えたご家庭ならなおさら。住む場所を変えてゆったりと暮らすのも大いにアリではないでしょうか。
また、少し大胆ですが、私は日本でいちばんおトクなのは「住民税非課税世帯※」の人だと思うのです。世帯全員の住民税が0円になるだけでなく、医療費や国民健康保険料、介護保険料などの負担は最低ラインに軽減され、国から給付金が出たりといいことずくめです。
※所得金額が各地方自治体の定める額より低かったり、生活保護を受けていたりする世帯が、税金や保険料などの負担が軽減される制度のこと
基準は自治体によって異なりますが、おおまかにいうと年収200万円以下なら住民税非課税世帯になるケースも少なくないので、条件を満たす人はぜひ活用を。
ただし、該当していても役所などから連絡があるわけではなく、自分での申請が必要です。当てはまるかなと思ったら、自治体の窓口に相談してみてください。使える制度は使わないとソンしますからね。
年収200万円時代を生き抜く知恵
・最大の支出である住宅費を削る
・住民税非課税世帯に該当しないか要確認
お話を伺ったのは……
経済アナリストとして執筆するほか、テレビやラジオ、雑誌、講演などでも活躍中。主な著書に『年収200万円でもたのしく暮らせます』がある。
〈取材・文/オフィス三銃士〉