お笑いコンビ・TKOの木本武宏(51)が、所属事務所の松竹芸能を退所した。
原因は投資活動をめぐるトラブル。後輩芸人などに投資話を持ちかけ、一時は利益も生んでいたものの、最近、数億円単位の損害が生じてしまったという。レギュラー番組を降板するなどした木本は、
《必ず近日中に事の経緯をきちんと説明させて頂く所存です》
と、ツイッターでコメント。所属事務所は本人が被害者でもある可能性を踏まえつつ、退所希望を受け入れたとした。TKOといえば、相方の木下隆行(50)も2年前、不祥事で退所。こちらは後輩芸人へのパワハラだ。
木下と木本の騒動は似ている
ただ、同じころ、木本は「いいひと」キャラで株を上げていた。NHKの朝ドラ『スカーレット』にヒロインの友人役で登場。信楽太郎の名で訥々と歌った関西弁のバラード『さいなら』がファンのあいだで絶賛されるなどした。
その縁で、この4月には信楽高原鐵道のPR動画に主演。元キングオブコメディの役者・今野浩喜がそうであるように、不祥事で相方がいなくなってもなんとかやっていけそうに見えていたのだが──。
実は木下と木本の騒動は似ている。どちらも人間同士の「密」な距離感を好むスタンスが背景にあるからだ。
木下のパワハラには、角界で兄弟子がやる「可愛がり」みたいなふしも感じられた。木本も悪気なく投資をすすめていたようにも見えるが、損害を埋めるためにさらなる投資を迫っていたというのが事実なら、後輩芸人にとってはそれもパワハラだろう。
とはいえ「密」を好むスタンスはお笑いに役立つものでもある。そこで思い出されるのが、NHK Eテレの『Rの法則』(2011~'18年)だ。ジェシーや田中樹、高田夏帆、ほのかりんといった若手タレントが多数出演した若者向けバラエティーで、TKOはコント企画の常連だった。
この番組の魅力は、10代後半の男女たちが「密」になり、和気あいあいと繰り広げる空気感。ネットでは、誰と誰とが付き合っているのではという話題も盛り上がった。そんな空気感に大人世代ながら溶け込んでいたのが、司会の山口達也であり、TKOだったのだ。
しかし、山口が出演していた女子高生タレントに対し、強制わいせつ騒動を起こしたことで、番組は終了。その2年後にはコロナ禍が到来して、こういう「密」な番組作り自体、成立しづらくなった。いわゆるコンプライアンス的にも「密」な距離感は嫌われがちな状況だ。
そんななか、TKOが去っていくのもある意味、象徴的である。なお、サンドウィッチマンの伊達みきおによれば、木本は、
「巻き込まれたんや。反省と後悔の日々や」
と、ぼやいていたという。ただ、木本は巻き込んだ側でもあるわけで「密」を好むタイプの人は常にリスクを覚悟しておかなくてはいけないのだろう。
また、伊達は芸能人が投資にハマりやすい理由を「何があるかわからない世界だから」と指摘。収入の不安定さを投資で補おうとする人がいる、という意味だ。
そのあたりが、芸能人もまた水商売だと呼ばれるゆえんだ。そういえば、ある種の猥雑さが味になるという点で、芸人の世界はキャバレーやスナックなどの接待系飲食業にも通じるところがある。
TKOを地上波のテレビで見ることは当分なさそうだが、どこかの店で木本が『さいなら』を歌うところに遭遇したら、ちょっと泣けるかもしれない。