なすを使った料理(撮影/矢島泰輔)

 旬を迎えた夏野菜。中でもなすは、クセのない味でどんな食材とも合わせやすく食卓にのぼる機会も多い。なすといえば茄子紺とも呼ばれる濃い紫色が特徴的だが、実はこの色には身体のサビをとる栄養が含まれている。

一緒にとりたい食材

「なすの紫色は、ポリフェノールの一種であるナスニンによるもので強い抗酸化作用があります。身体の中では増えすぎると害を及ぼす活性酸素が発生しますが、ナスニンがこの働きを抑え、老化や高血圧、糖尿病などを予防するといわれています」

 と教えてくれたのは栄養士で料理研究家の落合貴子さん。栄養を逃さないために、なすは皮付きのまま食べるのが鉄則。なめらかな食感や果肉の翡翠色を生かすために皮をむいたときは、皮だけを使ったきんぴらや佃煮にすると無駄なくおいしくいただける。

 そのほか、健康のためになすと一緒にとりたい食材は?

「栄養面でなすと相性のいいの食材は、みそやトマトです。みそのレシチンとなすのカリウムが高血圧予防に効果的。トマトのビタミンC、ビタミンEとなすのβ-カロテンを一緒に取ると抗酸化作用がアップします」(落合さん、以下同)

 ラタトゥイユや鍋しぎは、栄養面でも理にかなった料理というわけだ。旬のなすをおいしく料理するためのコツを落合さんに聞くと、

「なすはアクが強く、切って置くと茶色く見た目が悪くなり渋みも出ます。すぐ調理しない場合は、切ったなすを濃度1%の塩水にさらすと変色を防げます」

 また、なすは水分が多いので乾燥は大敵。ひとつずつラップや新聞紙に包み、ビニール袋に入れて野菜室で保存すると長持ちする。買い過ぎたときは、使いやすいサイズに切って保存袋に入れ冷凍もOK。丸ごとラップで包みレンチンして冷やした蒸しなすなら、3〜4日冷蔵保存がきく。

「なすは90%以上が水分で身体を冷やす働きもあるので、熱中症対策にもおすすめです。また、利尿作用のあるカリウムが豊富で余分な塩分を排出するのにも役立ちます」

 身体の内側から体温を下げ、むくみも解消するとは真夏の心強い味方! ちなみに夏に収穫したなすは皮が厚く身がつまっているので、炒めものや煮物にしても崩れにくいそう。

 飽きのこない食べ方で夏の健康維持に取り入れよう。

※電子レンジは600Wを使用。

なすローストでコク旨

じっくり焼いたなすはやわらかく、濃厚な味が凝縮。グリルで焼くだけの手軽さもうれしい。

照り焼きなすボート(撮影/矢島泰輔)

照り焼きなすボート

材料(2人分)
・なす……1本
・焼き鳥缶……1缶
・マヨネーズ……適量
・ゆで卵……適量

【作り方】

(1) なすはヘタを落として半分に切り、中心の身はくりぬいてざく切りにする。

(2) ざく切りにしたなすと焼き鳥をあえ、なすのくりぬいた部分に戻し入れて耐熱皿にのせ網を外したグリルで10分焼く。

(3) 取り出してマヨネーズをしぼり、ざく切りしたゆで卵を散らす。

《POINT》くりぬいたなすは、細かくしすぎないほうがジューシーな食感を楽しめる

たらこチーズ蛇腹なす(撮影/矢島泰輔)

たらこチーズ蛇腹なす

材料(2人分)
・なす……2本
・たらこ(ほぐし)……大さじ2
・ピザ用チーズ……20g

【作り方】

(1)なすはガクを取り、身の部分に切り込みを数か所入れる。

(2)切り込みを入れたところにバターナイフなどでたらこを挟む。耐熱皿にのせてチーズを散らし、網を外したグリルで10分焼く。

《POINT》なすの切り込みは、厚み3分の2程度まで入れるとたらこが挟みやすい

〜おいしいなすの選び方〜
 水分が多い野菜なので、ずっしり重いものが、新鮮でしっかり育った証拠!
 ガクの部分……黒くスジがはっきりしていてトゲが鋭い
 実の部分……皮は濃い紫色でハリ、ツヤがある

なすで糖質オフのおつまみ

淡泊な味のなすは、和洋中どんな料理にも応用可能。食べすぎてもお腹が疲れません♪

なすの冷やし中華風(撮影/矢島泰輔)

なすの冷やし中華風

材料(2人分)
・なす……4本
・ゆで卵……1/2個
・みょうが……1個
 Aめんつゆ(2倍濃縮)……大さじ3
 A水……大さじ5
 Aごま油、酢……各小さじ2

【作り方】

(1)なすは皮をむいて縦に薄切りにしてから細切りにし塩水(分量外・水500mlに塩ひとつまみを溶かす)に5分程度さらす。みょうがは小口切り、ゆで卵は半分に切

(2)鍋に湯を沸かしてなすを1分ゆで、冷水にとってざるにあげ水けをきる。

(3)なすを器に盛って具材をのせ、Aを混ぜてかける。

《POINT》切ったなすは、ゆでる直前まで塩水につけておくと色止めになる

なす餃子(撮影/矢島泰輔)

なす餃子

材料(2人分)
・なす……2本
・豚ひき肉……100g
・キャベツ……100g(大きめの葉2枚)
 A片栗粉……大さじ1
 Aみそ……大さじ1
 Aごま油……大さじ1/2
・サラダ油……大さじ1

【作り方】

(1) なすはタテ5mm幅に切って、塩水(分量外・水500mlに塩ひとつまみを溶かす)にさらして水けをきる。耐熱皿に並べてラップをかけ、電子レンジで1分30秒加熱し冷ます。

(2)キャベツはみじん切りにして塩ふたつまみ(分量外)をふってビニール袋に入れ、ひき肉、Aを加えてよく混ぜる。

(3)1のなすの水けを拭き取り、片面に片栗粉(分量外)を薄くふり、2のタネを等分にのせて半分に折る。

(4)フライパンにサラダ油を熱し、3を並べて焼く。焼き色がついたら裏返し、フタをして弱火にし、火が通るまで2分ほど蒸し焼きにする。

《POINT》なすはレンジでしっかり火を通すと、肉だねを包むときに割れない

蒸しなす副菜

レンジ蒸しなすは火を使わず調理したい時の救世主。しっかり加熱&しっかり冷ませば美しい翡翠色に。

蒸しなすのレモンあんかけ(撮影/矢島泰輔)

蒸しなすのレモンあんかけ

材料(2〜3人分)
・なす……3本
・鶏ひき肉……80g
 A白だし……大さじ1と1/2
 Aレモン汁……大さじ1
 A水……大さじ5
 A砂糖……小さじ1
・水溶き片栗粉……適量
・レモンスライス……適量

【作り方】

(1)なすはヘタを取ってしま目に皮をむき、1本ずつラップをして電子レンジで3分加熱する。粗熱が取れたらひと口大に切る。

(2)鍋に鶏ひき肉とAを入れて混ぜ、中火にかける。沸騰したらあくを取って全体を混ぜ、肉に火が通ったら火を弱めて水溶き片栗粉でとろみをつける。

(3)1を器に盛って2のあんをかけ、レモンスライスをのせる。

《POINT》レンジの加熱ムラがあったら、なすのかたい面を下にして30秒ほど再加熱を!

蒸しなすと豚しゃぶのアジアンサラダ(撮影/矢島泰輔)

蒸しなすと豚しゃぶのアジアンサラダ

材料(2人分)
・なす……2本
・豚ロース肉(しゃぶしゃぶ用)……150g
・パクチー……1束
 A赤トウガラシ(輪切り)……1/2本
 Aナンプラー・レモン汁……各大さじ1
 A砂糖……小さじ2

【作り方】

(1)なすはヘタを取りラップで1本ずつ包む。電子レンジで3分加熱したらラップごと氷水で冷やし、粗熱が取れたら手で縦に裂く。パクチーはざく切りにする。

(2)豚肉はふつふつと弱く沸騰するくらいの湯で1分ほどゆで、ざるにあげあおいで手早く粗熱を取る。

(3)すべてをボウルに移し、Aをかけてあえたら器に盛る。

《POINT》なすは裂く前にキッチンペーパーで水けを取ると水っぽくならない

あると便利ななす常備菜

特売でなすを買いすぎても大丈夫! ご飯、パン、麺のお供にピッタリなおかずを紹介します。

なす皮とじゃこのアヒージョ風(撮影/矢島泰輔)

なす皮とじゃこのアヒージョ風

材料(作りやすい分量)【保存】冷蔵で1週間
・なすの皮……2~3本分
・じゃこ……50g
・白ごま……小さじ1
・ごま油……大さじ4
・しょうゆ……小さじ1
・ラー油……小さじ1/2程度

【作り方】

(1)なすの皮は食べやすい大きさに切る。

(2)フライパンにごま油を熱してじゃこを炒める。じゃこがこんがりしてきたらなすを加え、じゃこがきつね色になるまで炒める。

(3)白ごま、しょうゆ、ラー油を加えて火を止め、保存容器に入れて冷ます。

なすのみそ漬け(撮影/矢島泰輔)

なすのみそ漬け

材料(作りやすい分量)【保存】冷蔵で4~5日
・なす……4本
・ごま油……大さじ4
 Aみそ、しょうゆ、みりん……各大さじ2
 Aいり白ごま……大さじ2
 A酢、きび砂糖……各大さじ1
 A赤トウガラシ(輪切り)……適量
・万能ねぎ……適量

【作り方】

(1)なすは厚さ4〜5mmの輪切り、万能ねぎは小口切りにする。

(2)保存容器にAを混ぜ合わせる。

(3)フライパンにごま油となすを入れ、よくなじませてから弱めの中火にかける。両面を色よく焼き、焼けたなすから2に入れる。

(4)万能ねぎを散らし、冷蔵庫で保存する。

〜なすと相性のいい食材〜
・みそ……なすのカリウムとみそのレシチンが高血圧予防に効果的。
・トマト……なすのβ-カロテン、トマトのビタミンC、ビタミンEで抗酸化作用アップ。免疫力を上げ、シミ予防効果も。油と一緒にとると吸収率が高まる。

◆レシピ作成・調理・スタイリング/落合貴子

落合貴子さん。栄養士・料理家・フードコーディネーター
PROFILE●落合貴子●栄養士/料理家/フードコーディネーター。栄養士免許取得後自然食品メーカーにて栄養カウンセリングなど実務経験を積んだのちフードコーディネーターに転身。多数の料理家のアシスタントを経て独立。テレビ、雑誌などでレシピ・料理製作、スタイリングなどを手がける。

(取材・文/廣瀬亮子)