「初日、お客さん1人だったんですよね。あれって思って(苦笑)」
元ハロプロ・『メロン記念日』のメンバーであった大谷雅恵。彼女は今、“芸術家への第一歩”として自身の個展を開催している。
過去2度、『週刊女性PRIME』は大谷にインタビューを実施している。1度目の“生活保護の果ての自己破産”告白には、《自分に甘すぎる》《税金の無駄遣い》などという辛辣な声が彼女の元に多数届いた。
「私はこれがやりたかったんだ!」
1度目のインタビューへの批判の声について語った2度目のインタビューには一転、《生活保護受給して何が悪いんだ?》《正当な権利》という“理解”の声も集まった。2度目の取材時、大谷は絵画などの芸術作品、以前より続けているタイダイ染めのアパレルなどを展示する個展の資金をクラウドファンディングで募っていた。目標金額は70万円。
「(募集期間の)最終日まで“お願いします! お願いします!”って言って、なんとかゴールするものだと思ってたんですけど、顔見知りのファンだけではなく、91人の方から支援していただきました。結果、最終日の3日くらい前にゴール出来ました。本当に感謝してます。生活保護の記事で私のことを知ってくださった方もいらっしゃいました」(大谷、以下同)
途中経過時点では目標を達成するには厳しい数字であったが、結果的に集まった金額は目標を上回る118万円。目標の達成率は169%にも上った。
「ここまでいけるなんて思ってもいませんでした」
現在、東京・吉祥寺で開催中の“大谷雅恵・個展”。彼女が描いた絵画が10数点、陶器、そのほかにタイダイ染めをほどこしたTシャツを中心としたアパレルが展示され、その場で購入出来る(個展の開催は8月7日まで。商品や個数は初日時点。以降は販売状況で変動)。
「初めての個展ということもあり、“自分らしさ”ってなんだろうって改めて考えました。これまで実物を見てもらう機会はありませんでした。やっぱりSNSにアップする平面の写真と実際に見るのとでは違うと思うので、会場に来てくれた方が見てくださったり、制作についてのお話が出来るだけで、“私はこれがやりたかったんだ!”と思いました」
大谷の描く絵画は、さまざまな特殊な画材を使用した『テクスチャ―アート』がメイン。絵の具が隆起していたり、わざとヒビ割れた状態にしたりした絵画だ。
個展に来場するのはどのような人たちか。
「やっぱり“昔、ライブに行ってました”と言ってくださる『メロン記念日』のときから知っているファンの方が多いですね。ただ私のことを知らないという方もいらっしゃいます。このギャラリーによく来るアート好きの方だったり」
マグカップとお皿が完売!
もともとのファンが中心ということもあり、個展では来場者と“お話”する時間も長くなる。
「アートにしても、タイダイ染めにしても、見てくださった方のそれぞれの見方のお話が聞けるのがすごくうれしいです。私が思っていることと見た人の感想は違うことも勉強になります。私の考えと違う見方をしてもらっても、それもまた嬉しいです」
冒頭のように7月29日の個展初日の来場者は1人だった。平日のため致し方ない部分も……。
「ちょっと不安になりましたね、さすがに(笑)。期間を10日間にしてよかったと思いました。後日、来た方に聞いたら、“初日は混むかなと思って”と言っていました。やっぱりコロナのこともありますし」
現在は日に平均して10人程度が来場するという。ちょっとした悩みも……。
「来てくださって、作品を見ずにお話しに来る方もいて……(苦笑)。もしほかの展覧会などに行ったとしたら、それは作者さんに失礼だなと思いました。まずは作品を観てもらって、作品の感想を聞いてから昔のお話をしたいですね。でも話術は高まったと思います(笑)。そんな感じになったとき、徐々に絵に話を向けていったり、普段どういったTシャツを着ていらっしゃるのかとか」
個展では展示されている絵画や陶器といったアート、またタイダイ染めのアパレルを実際に購入出来る。
「陶器が完売したんです! マグカップとお皿を全部で12点作ったのですが、それが準備期間で作れる限界の数でした。陶器はツイッターに写真をアップしていたので、それを目がけて来てくださる方が多かったですね。本当はもっと作れたらよかったんですが……。
タイダイ染めは(派手という)先入観があって飛び込まない方も多いし、アートは“飾る場所がないんだよね”という方も多い。陶器はマグカップもお皿も普段使えるし、私の個性を出していきやすいなと思いました」
日本は海外に比べて“アート”に関する理解が薄いと言われる。日常的にアートに親しむ層は少ないし、それを購入し自宅に飾るという人はもっと少ない。しかし……。
「絵は今日までで6枚売れました(8月3日時点)。私が今回やりたかったことって、実際に観ていただいて、欲しいって思ってもらうことだったんですよ。アートに興味がなくても、家に飾る場所がなくても、“買いたい”じゃなくても、“初めてアートを欲しい”と思ってもらえる場所が私の個展だったらいいなって。
タイダイ染めもそうなんですけど、実際観てみたら“かわいいね”って言ってもらえると、やった意味があったと思います! 今まではオンラインショップで写真でしか判断できなかったものなので」
間を空けずに再び個展を
さらにタイダイ染めのTシャツも数十枚売れている。タイダイ染めのTシャツは
「靴下は全種類買っていただいた方もいました。Tシャツはそのまま着て帰った方も(笑)」
言葉を選ばずに表現すれば、彼女は芸術に関しては“駆け出し”に過ぎない。それでこの売れ行きは、かつて“ハロプロ”であり、そのファンが多かったとしても、このアートへの理解の薄い日本においては驚異的なものと言えないだろうか。絵は最安値で5000円。高いもので8万円だ。タイダイ染めのTシャツは1枚7000円、陶器(マグカップ・皿)は5000円となる。
初個展でこんなに“売れる”と思っていた?
「いやぁ〜! 思ってないですね! アート作品としては相場として安いかもしれませんが、結構な値段だと思うので、それを買ってくださる方は“ここに1点しかないものだから”って、そう言ってくださることがすごく嬉しいですね」
生活保護・自己破産からの復活。次なる目標は――。
「個展はあまり間を空けずにまたやりたいです。自分がお客様に見せられるクオリティの作品を作り続けるということはモチベーションになりますし、今までにないものを作っていこう! って思える。また、自分はまだアート界というところに全然入っていけていません。調べてみると、“新人展”として出展作品を募集しているので、そういったところに挑戦していきたいです。挑戦して飛び込んでいかなくてはいけない世界だと思うので」
前回のインタビューで大谷は、「生活保護は一生背負っていくもの。本当にすごく救われたし、その分元気に働いて社会に貢献していきたい」「やっぱり夢を諦められない」と語っていた。人は“諦めなければ”、また上を向いて夢を持って進んでいける。
“元ハロプロ”という枕詞が、いつか“芸術家”となる日は――。