もしかして2022年の国民的ヒット曲って、今のところゼロ!?
売れたCDとダウンロードされた曲の違い
8月中旬現在、今年発売された“みんなが知っている曲”といえば何があるのだろうか。また、すぐに思い浮かぶ曲はなんだろうか。参考までに、オリコン22年上半期のCDセールスランキングは、以下のとおりだ。
1.『ブラザービート』Snow Man
2.『I(CALL 199/We Are)』INI
3.『The Answer/サチアレ』なにわ男子
4.『Actually...』乃木坂46
5.『Lovi’n you/踊るように人生を。』King & Prince
6.『わたし』SixTONES
7.『僕なんか』日向坂46
8.『WANDERING(僕らの季節/Prologue)』JO1
9.『共鳴』SixTONES
10.『元カレです』AKB48
今をときめくアイドルたちがランクインしているが、ファン以外の人が「知ってる!」となる曲は、いくつあるのだろうか。
ちなみに、ダウンロード数やラジオのオンエア数、動画再生数など、CD売上以外の指標も加えられるBillboard JAPANの上半期ランキングだと、以下のような顔ぶれにガラリと変わる。
1.『残響散歌』Aimer
2.『ベテルギウス』優里
3.『一途』King Gnu
4.『ドライフラワー』優里
5.『なんでもないよ』マカロニえんぴつ
6.『逆夢』King Gnu
7.『シンデレラボーイ』Saucy Dog
8.『水平線』back number
9.『Butter』BTS
10.『Cry Baby』Official髭男dism
いかがだろうか。
「CDセールスが基準のオリコンは、購買力のあるファンを抱えたアイドルグループの楽曲がどうしても上位を占めてしまうことは、今年に限ったことではありません。ビルボード上位にランクインしている優里の『ドライフラワー』やBTSの『Butter』は、耳にする人も多い曲だと思いますが、『ドライフラワー』は2020年発売でヒットのピークが昨年、その余波のようなものが今も続いています。『Butter』も昨年リリースのロングヒットです。
純粋に今年リリースした最新ヒットは『鬼滅の刃 遊郭編』の主題歌『残響散歌』で、耳にしたことのある人は多いかもしれませんが、やはりLiSAの『紅蓮華』『炎』ほどの浸透度はない気もします」
と、あるスポーツ紙記者。
上半期ヒット曲がたくさんあった過去3年
近年、毎年のように「最近は国民的ヒット曲が全然生まれない」と言われてきているが、昨年の『ドライフラワー』や『Butter』、そして鬼滅関連曲のように、サビや曲名でピンとくる曲は、それなりに生み出されている気がする。
過去3年のBillboard上半期ベスト5は、以下のとおりだ。
<2021年>
1.『ドライフラワー』優里
2.『炎』LiSA
3.『Dynamite』BTS
4.『夜に駆ける』YOASOBI
5.『うっせぇわ』Ado
<2020年>
1.『Pretender』Official髭男dism
2.『I LOVE…』Official髭男dism
3.『白日』King Gnu
4.『紅蓮華』LiSA
5.『宿命』Official髭男dism
<2019年>
1.『Lemon』米津玄師
2.『マリーゴールド』あいみょん
3.『U.S.A.』DA PUMP
4.『今夜このまま』あいみょん
5.『Flamingo』米津玄師
楽曲の浸透度や捉え方は、人それぞれ異なるが「よく流れてたな」「よく耳にしたな」と思える曲は、過去数年を振り返ってみると上半期だけで複数存在していた。
「下半期も含め年間でみると、2019年はFoorinの『パプリカ』、20年には瑛人の『香水』などが出てきたりしていました。でも、やはり“誰もが知っているヒット曲”は上半期に出そろうことが多く、それが紅白歌合戦に直結してきています。そういう意味で今年は、まだそのようなヒット曲は出ていないように感じます」(同前)
流行曲に限らず、国民的ヒットが生まれづらい背景には“趣味嗜好の細分化”が理由と言われているが、ある音楽ライターは「生活の中心がテレビや雑誌からスマホになったことで、より“個”の重視傾向は強まっています」という。
つまり、これまでの対面での“つながる文化”よりも、SNSで“広がる文化”にシフトチェンジしているというわけだ。前出のライターが続ける。
「個人個人の好きなものをより濃く、深くという流れもあります。コロナ禍で“集まる”という機会も激減したことも、それを加速させたかもしれません。カラオケも大勢で盛り上がるより“ひとりカラオケ”の注目度が高く、動画サイトなどの“歌ってみた文化”の浸透などもあり、盛り上がり系のカラオケヒットも生まれにくい。
誰もが口ずさめるよりも、個性強めな難易度高めの曲のほうが注目される流れもあります。リアルの仲間との流行り、街で流れている曲というよりも、自分のタイムライン上に出てくるものが馴染みになっていく。TikTokでみんなが使っているものが一番“いいもの”になっていく。今年はまだガツンとくる大きなものが見つかっていないということでしょう」
ドラマや映画がヒットしたからといって、それらの主題歌もヒットするとは限らない。CMきっかけも然り……。
とはいえ、2022年はまだ3分の1残っている。「22年は◯◯の年だったな」という、思いもしないメガヒットがこの先登場する可能性を信じたい。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉