(左から)玉川徹氏、羽鳥慎一アナウンサー

 平日の午前8時から始まる情報番組は3つある。日本テレビ系『スッキリ』とテレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』、フジテレビ系『めざまし8』だ。

 視聴率トップは『モーニングショー』。2017年から昨年まで、世帯視聴率と個人全体視聴率の年間平均値が最も高かった。

 ただし、世帯視聴率はテレビ業界でもう使われていない。昨年4月以降は性別、年代別にその番組を見ていた人の割合が細かく分かる個人視聴率が標準になった。

 新聞や雑誌に掲載される個人視聴率は、個人全体視聴率のことで、性別、年代別の個人視聴率を合算したもの。3つの情報番組の性別、年代別の個人視聴率はどうなっているのだろう? それを調べると、目を疑いたくなるような事実が浮かび上がった。

年代別の個人視聴で分かる情報番組の特色

 王者『モーニングショー』は50代以上の男女からは断トツの支持を得ているものの、40代以下には人気薄。特に40代以下の女性の個人視聴率は低く、最下位なのだ。

 3番組の個人視聴率は以下の通り(ビデオリサーチ調べ、関東地区、8月1日~3日の平均値、『スッキリ』は午前9時半までの第1部)

『スッキリ』
■世帯5.7%■個人全体2.8%
《男性20~34歳、1.5%》《同35~49歳、2.5%》《同50歳以上、2.0%》
《女性20~34歳、1.5%》《同35~49歳5.6%》《同50歳以上3.8%》

『羽鳥慎一モーニングショー』
■世帯9.4%■個人全体5.2%
《男性20~34歳、0.5%》《同35~49歳、2.0%》《同50歳以上、8.8%》
《女性20~34歳、0.7%》《同35~49歳、1.6%》《同50歳以上、10.3%》

『めざまし8』
■世帯4.8%■個人全体2.5%
《男性20~34歳、0.8%》《同35~49歳、1.3%》《同50歳以上、2.7%》
《女性20~34歳、1.8%》《同35~49歳、3.0%》《同50歳以上、4.7%》

 購買力が高いのでスポンサーが最も喜ぶF1層(女性20~34歳)は『めざまし8』が強い。MCを務めている俳優・谷原章介(50)の甘いマスクとソフトな語り口も魅力の1つなのだろう。

 やはりスポンサーが大歓迎するF2(女性35~49歳)は『スッキリ』が握っている。MC・加藤浩次(53)の男っぽさに惹かれる視聴者も多いはずだ。

 謎めいているのが『モーニングショー』。どうして50代以上には絶大な人気を誇りながら、それ以下の年代の女性には敬遠されているのだろう。

おそらく『モーニングショー』の収益は3番組の中で一番低い。視聴者の年齢層が高いから、CM枠が高く売れない」(日本テレビ情報番組スタッフ)

 MCの羽鳥慎一アナ(51)に理由があるとは到底思えない。羽鳥アナは各種「好きなアナウンサーランキング」で上位の常連。幅広い層に好感を抱かれている。

 となると、扱う情報が関係するはず。『スッキリ』はトレンドやエンタメの情報が手厚い。若い視聴者が多いのはうなずける。『めざまし8』は独自取材のニュースや天気予報など身近な情報が充実している。やはり現役世代である若い視聴者向きだろう。

 一方、『モーニングショー』は政治が絡むネタや東京五輪の不正疑惑など硬派な情報が多い。連日のように天下国家が語られている。だから政治や社会にさほど関心が高くないとされる若い視聴者には人気薄で、年配の視聴者を惹き付けるのではないか。

 レギュラーコメンテーターの玉川徹氏(59)の存在も大きい。視聴者が見る、見ないの判断材料になっているはずだ。なにしろ羽鳥アナと共に連日登場し、番組の顔なのだから。

玉川徹氏の存在が左右か

 どうでもいい発言に終始するコメンテーターも多い中、玉川氏は歯に衣着せぬ物言いをする。それだけに発言が物議を醸すこともたびたび。

 今月5日には政府内でコロナの感染者数の全数把握について見直し論が出ていることに触れたあと、「僕は全数把握を続けるべきだと思っています」と、きっぱり。

 するとツイッター上には《これ以上医師、看護師に負担を掛けてどうするんですか?》といった反論がズラリと並んだ。もちろん、賛同の声もある。「玉川さんの言う通り! 検査をした方が良いのは常識」。

 また玉川氏はコロナの感染拡大を抑制するためには行動制限もやむなしという考え。玉川氏はコロナ問題では一貫して政府に否定的で、なおかつ慎重派だ。そんな玉川氏の主張に対し、アクティブに動きたい若い層は反発し、健康第一と考える年配者は賛同しているようだ。

 玉川氏は反権力色を隠さないが、近年は若い人ほど自民党支持の傾向が強い。これも玉川氏の若い年代からの人気薄、年配者からの厚い支持に繋がっていると見る。

 昨年10月の衆院選時にNHKが行なった調査によると、自民党に投票したと答えた人は、18歳と19歳は43%、20代は41%といずれも4割以上も占める。30代が39%。40代と50代は36%とまだ高めだが、60代になると34%に落ちる。

 同3日放送では、自民党の茂木敏充幹事長(66)が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と党との関係を否定し、議員ごとの調査は行わないと発言した件について、玉川氏は「他の政党が(議員ごとの)調査しているわけですから、調査をしないで逃げ切れると幹事長が考えているなら、甘いんじゃないかなと思います」とピシャリ。

 ここまで旗幟鮮明なコメンテーターも希有だ。視聴者の好き嫌いがハッキリと分かれるのはやむを得ないだろう。ファンも多いが、アンチもまた多いタイプなのだ。

 日経広告研究所の7月に発表した2022年度の広告費予想によると、民放の広告費は前年度より1.5%減少する。スポンサーの獲得が難しくなっている中、民放はドラマとバラエティを49歳以下の若い視聴者に向けてつくり始めている。

 情報番組も「いかに若い視聴者に見てもらうか」を重視する時代になりつつある。そうしないと、高収益が望めないからだ。

 情報番組界は変わり始めている。王者『モーニングショー』も安泰ではない。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。
 
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「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)

 

 

 

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