お盆が過ぎてもまだまだ夏の暑さが厳しい毎日。そこで、背筋が凍る怖い話はいかがですか? 怪談・手相でおなじみの芸人・島田秀平が遭遇した日本各地で本当にあったゾゾゾッとする話。
肉じゃがの女の本当の狙いとは?
僕は以前、「号泣」という漫才コンビで活動していたんですが、(2020年に再結成)当時はよく地方へ営業に行っていました。その日も宮城県のイベント会場に入ろうとしたら30代くらいの女性に声をかけられたんです。
「島田さん、ファンなんです。これ食べてください」
そう言って彼女から渡されたのは小さな紙袋でした。お礼を言って楽屋で袋の中を見たら容器が入っていたんです。中身は肉じゃがだったんですけど、肉じゃがの下に黒いものが大量に沈んでいて……。
黒いものをよく見たら、細かく刻んだ髪の毛! もし細かく刻まれた髪を食べたら内臓に突き刺さって危険なんだそうです。僕のことを殺したいほど恨んでいたのか、殺したいほど好きだったのかわからないけど、その日のライブは客席に俺を殺したい人がいるんだと思ったら、テンションが下がってスベりまくりました。
島田にしか見えない女性の正体
めがね橋で出会ったネルシャツの女性
これは5~6年ほど前に情報番組のロケで、群馬県にある「めがね橋」を取材したときに僕が体験した話です。
「めがね橋」はレンガ造りの橋で、廃線跡を利用したハイキングロードになっている高さ40mの絶景スポットなんですが、そこを紹介しようと僕とカメラマンとディレクターの3人で出かけたんです。本当に美しい景色が広がっていて、気持ちよくロケをしていました。ディレクターから、
「僕とカメラマンが橋の下に下りて、島田さんが上から手を振るところを撮るので準備ができたら合図しますね」
という提案があり、橋の上で1人待っていたんですけど、ふっと横を見たらちょうど僕の2m先にネルシャツに赤いリュックを背負った若い女性が同じように橋の上から景色を眺めていたんです。“ああ、1人で観光に来ていらっしゃるんだなあ”なんて思っていたら、ディレクターから「準備OKです」という連絡がきました。
でも横の女性が気になったので、「今、1人女性の方がいらっしゃるから、あの方が帰られたら手を振りますね」と伝えたら、ディレクターは「何を言ってるんですか? 上にはずっと島田さんしか見えないですよ」
え? じゃあ、帰られたのかなと思って女性が立っていた足元を見たら、その場所に花束が供えられていたんです……。後から聞いた話ですが、2週間前に若い女性がそこから転落して亡くなったということでした。
僕は霊感がないと思っていたけど、幽霊って普通にはっきり見えるんですね。普段は気づいてないだけなのかもと思ったら、一気に怖くなってしまいました。
深夜にやって来たマッサージ師
今年の2月なんですが、岡山で泊まりの仕事があったんですね。遅くに仕事が終わってホテルにチェックインしたのが夜の11時でした。エレベーターで7階へ上がっているときに、マッサージの張り紙を見つけたんです。
ホテルが提携してるところらしく、「従業員は全員女性なので女性のお客様も安心です」と書かれていて。ま、僕は男なので関係ないんですけど、「久しぶりにマッサージをお願いしてみようかな」と思い、番号をメモって部屋に入って電話をかけてみました。
ホテルにお礼を伝えると……
「すみません、まだマッサージお願いできますか?」
「できますが、時間が遅くて女性従業員がいないので、男性でもいいですか?」
「僕は大丈夫です」
「では、すぐに行かせます」
それから電話を切って1分くらいで部屋のドアがノックされたので、開けたら腰が曲がった80歳くらいのおじいさんが立っていたんです。マッサージ師が着ているようなユニフォームじゃなくて、赤い上下のジャージ姿でした。簡単なあいさつを交わして、部屋を暗くしてマッサージを始めてくれたんですけど、そのときにいろいろ世間話をしてくれて。
「お兄さん、出張ですか?」
「仕事で東京から来ました」
「こんなご時世に仕事があるなんて、お兄さんは仕事ができるんでしょうね。東京の会社ってどちらなんですか?」
「目黒です」
「私の息子も目黒で働いてまして。ま、小さな証券会社なんですけどね」
「僕なんかより息子さんのほうが立派ですよ。自慢の息子さんじゃないですか」
「自慢じゃないですよ。年末に疲れたから辞めたいって相談されてね。もう少し頑張れって言ったところなんですよ」
「そうはいっても健康がいちばん大事だと思いますよ」
「そうですよね、健康がいちばんですよね。それでこの前、息子ね、自殺しちゃったんですよ」
……。薄暗い部屋で2人っきりで急に心臓がバクバクしてきて。息子さんが亡くなった傷が癒えてなくて気を紛らわすために働いてるのかなとか、いろいろな感情が巡って眠れなくなっちゃって。
でも朝、起きたら身体中のこりがほぐれてたんです。それで仕事関係のスタッフさんに、マッサージが上手なおじいさんにやってもらって疲れが取れたからホテルの方にお礼を伝えてほしいとお願いしました。
そうしたら後日、スタッフさんから「おじいさんのマッサージ師はおりません」という返答があったと連絡が来たんです。おじいさんが幽霊だとは思わないですけど、あの夜は何だったんだろうって今でもたまに思い出します。
島田の立っていた位置に大きな落下物が
旧日本軍の砲台施設跡は今でも兵隊の霊が…!?
心霊スポットを巡るロケをしていたときの出来事です。千葉県の大房岬という心霊スポットでも有名な自然公園があるんですが、ここは昔、旧日本軍の砲台があった場所で、今では家族連れがキャンプをしたりする緑豊かなレジャー施設になっています。
ただ、防空壕や武器庫など遺構が所々に残っていて、僕たちも長いトンネルの中を歩くことになったんですけど、スタッフの方に、
「カメラを持って1人で入って、突き当たりまで行ったらまた戻ってきてください」
と指示されたんですね。
「えー、みんな来ないんですか? 怖いなあ」
なんて言いながら懐中電灯を片手に奥まで行って折り返して、あと出口まで100mというあたりで僕の横を男の人がスーッと通ったんです。恐怖のあまり「うわー!」って悲鳴を上げて走って出たんですけど、トンネルの外にいたスタッフたちも顔が青ざめていて。
「今さ、島田くんが悲鳴上げたでしょ? 同じタイミングで男の人の声で『オイッ』て聞こえたから、こっちも全員悲鳴を上げたんだよ」
その言葉を聞いて怖くなってゾゾゾッとなったんですけど、エンディングを撮影しないといけないのでそれを撮ったら帰ろうということに。それで木が生い茂ってる場所の下でエンディングのあいさつをしてOKをいただいたのでその場から離れたとたん、僕が立っていた位置に大きな枝がドーンって落ちてきたんです。
もしもトチったり、もう少し長くしゃべっていたら大ケガをしていたでしょう。きっと兵隊さんの霊が立ち入る者を排除しようと、今もこの地を守っているのかもしれません。
島田秀平(しまだ・しゅうへい) 1977年生まれ。長野県出身。お笑い芸人。怪談や都市伝説の語り部として活躍中。YouTubeチャンネル「島田秀平のお怪談巡り」は登録者数48万5000人突破の人気チャンネルに。