MBS/TBSドラマイズムにてドラマ放送がスタートした『ロマンス暴風域』。冴えない人生を送るアラサー非モテ男子・佐藤民生が、気分転換に行った風俗で出会ったせりかにお金や肩書など関係ない“運命の出会い”を感じ、真実の愛を探して彷徨う。原作は、男女間の価値観や性を残酷なほど克明に描く漫画家・鳥飼茜氏。人はなにを求め、風俗に行くのか。そして、まさかの報告が――。
――風俗嬢の取材はしていなかったそうですが、どのように風俗嬢のキャラクターを具現化していったのですか?
もともと性風俗そののものに興味が強かったので、以前から風俗嬢のルポ本をたくさん読んでいて。でも読んで思ったのが、結局、質問する人が男性だと男性向けの答えが出てくるし、女性だと女性に対する答えになっているなと。それに、セックスワーカーの女性って、私のようなシャバの女の興味本位に対して、すごくガードが固い印象があります。もちろん、そうでない人もいるとは思いますが、相当なことがなければ本音は出てこないと感じていました。
そこで総論に近いと思ったのが、私の男友達の話でした。風俗に初めて行って、ハマり出して、好きなコができたという話で、客扱いされているようで限りなく恋愛に近いグレーの関係。その女性の腹の内はわからないけど、彼が語る「こう言われて、こう返したらこうなった」という会話や起きた出来事は、本当に近いことと言えるだろうと。彼の話が、おおまかなベースになっています。
人生を共にするほどじゃないちょうどいい人
――主人公のサトミンこと佐藤民生は、いい人なんだけどモテないという多くの男性が当てはまりそうな人物です。
なんか、ちょうどいい人って感じですよね。人生を共にするほどじゃないけど、いま寂しくて男の雰囲気だけ感じたいってときに。何もしゃべらなくてもいいから、30分だけ話を聞いてほしい。決して襲ってこないし、こっちがNOといえばそれ以上のことは強要してこない。そういった主体性のなさが、一緒にいて心地が良かったりする。女側からのそういう需要はあると思います。
――そんな主体性がないサトミンですが、悟ったようにラストには行動を起こします。
でも、漫画ではあれも“消去法”なんですよね。サトミンみたいに結構大事な場面を消去法で決める人っている気がする。多分、自分が主体的に選ぶと、後で面倒事とか失敗したときに、全部自分の自己責任ってなっちゃうのが辛い。例えば、「俺にはそんなにこのコが必要じゃないけど、このコはどうやら俺が必要みたい。じゃあ応じますか」みたいな。この“応じますか”っていうノリで結婚しちゃう人、何度か見たことあります。後になって、やっぱりうまくいかなくなったときに「俺からは一回も好きって思ったことがないし」っていう人って、実際いるんですよね。
風俗に救いを求めて
――風俗というサービスや利用する人の心理をどのように考察していますか?
肉体的な問題だけではなくて、埋められない孤独とか、圧倒的にうまくいかない人生や欠落みたいなものを少しでもぼやかそうしている。ここにきてお金を払えばそういったモヤモヤと性欲を一挙解消できる気がしちゃう。ハッピーセットみたいなものを求めてるんだと思います。
女性なら、何か心配事が起きたときに、同性同士で癒せる部分が結構あると思っていて。私も実際大小様々な悩みを、女友達に寄り添って解消してもらったし、ばーっと喋ってスッキリできる。でも、男の人は多分、感情的なモヤモヤを抱えたときに、同性同士で「こういう不安があってさ~」と打ち明ける機会が少ない。私が思うに、男性は基本溜め込んで、モヤモヤは全部彼女や妻にぶつける人がわりといるんじゃないかと。それが叶わない人、もしくは相手がいてもぶつけられない人が、風俗に救いを求めているような気がします。
描いていた当時は風俗を利用する人の気持ちがわからないって思っていたんですけど、今って女性向けの『東京秘密基地』とかってあるじゃないですか。存在を知ってから、ホームページをしょっちゅう徘徊してたんですけど、在籍している男性が迷うくらいたくさんいて、みんなかっこいいし可愛いんですよ。どの人がいいかな、でも、利用するのはさすがに……と悩んでいたら毎回朝の4時ぐらいになっていて、結局呼んだことはないんですけど。
少し前までは女性用風俗ってここまで充実していなかったと思うんですよ。だから、リーチしようとする女性も少なかった。でも、今は普通に街で出会ったら恋が始まりそうな男性と、風俗でお金を払えば介入できる。ネットで調べてサクッと呼べる利便性もある。男女ともにそうなったんですよね。女性も環境があれば、女性も男性と同じようにモヤモヤを埋めたいことは変わらないと感じています。
――女性用風俗を利用しようとしたのは意外でした。ちなみに、旦那さんはご存じなのですか?
まさか。結婚していた時、前の夫さんは週に一回程度、完全にご本人の任意のタイミングで帰宅されてたので、逆にどんだけ寂しくてもそういうのは呼べなかったですね、いつバッティングするかわかんないので…。あとやっぱり風俗は浮気と同等って私自身思い込んでいるので無理でした。
――え!? 離婚されていたとは。いつ、どういった理由からだったのですか?
離婚したのは今年の春ですね、理由言い出すとキリないけど相性じゃないですかね。前は私の方で課題があるほど燃えるというか、難しければがんばって乗り越えれば良しという根性があったのですが、年を重ねて何事も相性だなって思います。
――二度目の離婚となりましたが、また結婚したいと思いますか?
結婚自体は良いものだと思ってます、自分の妹とか、ちゃんと話し合えてうまく行ってる夫婦は素敵だなと思うし。幸運にも縁があればするんじゃないでしょうか。
<取材・文/ツマミ具依 撮影/山田耕司>