25日、中村格(いたる)警察庁長官は記者会見で辞職する意向を示した。7月に起きた安倍晋三元首相銃撃事件は奈良県警の警備体制が問題視されており、警察のトップが責任を取るかたちとなった。
「警察庁長官が辞めたのなら、警視総監も辞めざるを得ない」
そう話すのは、元大阪府警刑事の犯罪ジャーナリスト・中島正純氏。
「この事件は奈良県警の警備体制の甘さが招いたようなもの。奈良県警本部長の辞職は当然だし、あの銃撃の現場にいた捜査一課長や警護の指揮を取った責任者も何かしらの責任を取るべきだと考えています」
だが、もっとも責任が重いのは警視総監だという。
「安倍元首相のそばには警視庁から派遣されたSPが1人いましたよね。確かに県を跨ぐ警備を行う場合、SPはその県の県警の指揮に入り、指示をあおぐことになります。とはいえ、警視庁のSPが警備したにもかかわわず、安倍元首相を守り切れなかった。警視庁のトップである警視総監の責任は免れないのでは」
警察庁長官の辞職が発表された直後、鬼塚友章・奈良県警本部長も警察庁に辞職の意思を伝えたという。警視総監の辞職も時間の問題だろう。
警備体制の甘さが悲劇を生み、警察のトップが辞職に追い込まれるほどの大事件に。あの時、銃撃現場で起きていた“SPの落ち度”を改めて振り返る。
(以下は2022年7月16日に配信した記事の再掲載です)
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「本来のSPの位置はこうあるべきですね。これができていれば、あの事件は起きなかった……」
そう話すのは、元大阪府警刑事の犯罪ジャーナリスト・中島正純氏。あの事件とは、7月8日に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件のことだ。大手新聞社社会部記者によると、
「奈良市の近鉄大和西大寺駅前で安倍晋三元首相が自民党候補の応援演説中、手製のハンドガンで撃たれました。殺人未遂の現行犯で逮捕されたのは、奈良市内に住む元海上自衛隊員の無職・山上徹也容疑者(41)。安倍元首相は救急車とドクターヘリを乗り継いで奈良県立医科大付属病院に搬送されるも、同日午後5時すぎに死亡が確認されています」
事件後、週刊女性PRIMEは前出の中島氏による「SPの“落ち度”」を指摘していた。
SPを配置する場所に問題があった
「警備にあたっていた私服のSPは13、4人。現役ではなく、元首相であれば妥当な人数でしたが、根本的な警備がなっていなかったため事件が起きてしまった。その中でも、SPを配置する場所に特に問題があったと思います」(中島氏、以下同)
安倍元首相の公式Twitterには、今も参議院選挙の応援演説を行うため全国行脚する彼の姿が掲載されている。中島氏によると、その中にSPを理想的に配置しているものがあったという。
「それは愛媛県西条市で行われた応援演説です」
《山本順三候補の応援に大分から愛媛へ。新居浜市と西条市で街頭演説でしたが暑さが半端ないなか最後まで聞いて頂いた皆さん有難うございました。山本さんは私と同い年の予算委員長。宜しくお願いします。》
6月30日、この文言とともに掲載された写真を見ると、
「中央には演台に立つ安倍元首相。その周囲にSPが3人いるんですが、安倍元首相の両側に各1人ずつ、背後に1人。背後のSPは安倍元首相に背中を向けていて、背後からの襲撃に備えています」
ポイントは、安倍元首相のSPとの距離感だという。3人とも安倍元首相に密着していて、両方ともSPが密着していて、有事に備えていた。特に安倍元首相の右側にいたSPは、
「出馬候補の山本順三氏の内側に、安倍元首相寄りに立っています。これによって、危険を察知した際、何の障害もなく、安倍元首相の身を守る行動ができる」
あの日、この配置ができていたら、どうなっていたのか。
SPが安倍首相を守れていた可能性
「一発目の銃声が鳴り響いた瞬間、SPが安倍元首相にタックルなどをして身を屈めさせつつ、身を挺して安倍元首相に覆い被さり防弾カバンを向けて銃弾から身を守るというベストな対応ができたでしょう」
警備に当たっていた奈良西署には、こんな話も出てきている。
「事件前日から奈良西署は不祥事の対応に当たっていた。そこに、安倍元首相の警備の準備が重なってしまい、対応に追われていたと言います」(前出の社会部記者)
ひとりの命が奪われるという、取り返しがつかないミスとなった。