富田靖子

 中島裕翔(29・Hey! Say! JUMP)、吉川愛(22)の切ない純愛を描いたドラマ『純愛ディソナンス』(フジテレビ系・木曜夜10時)で“ある女優”の約30年前の怪演が再び話題になっている。

「'93年にフジテレビの木曜10時という同じ枠で『素晴らしきかな人生』というドラマがありました。ここで怪演女優として花開いたのが当時24歳だった富田靖子さん(53)なんです」

 とは、本誌連載でもおなじみの芸能評論家の・宝泉薫さん。『純愛ディソナンス』では吉川演じるヒロインの毒親役として、『素晴らしきかな人生』では織田裕二の元彼女でストーカーをする役を熱演。以来、富田靖子は怪演女優の名を轟かせることに。

 '02年には『昔の男』(TBS系)でヒロインの藤原紀香の元彼・大沢たかおの妻として紀香を追い詰める本妻役を好演。赤ずきんちゃんの格好で“おおかみさん”と紀香に迫る姿は影の主役とも言われ、第29回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の助演女優賞を受賞した。

周囲の男性に次々と問題が

 そんな彼女は'83年、中学在学中に映画『アイコ十六歳』のオーディションを受け、約127,000人の中からヒロインに選ばれ華々しくデビュー。当時の印象を宝泉さんはこう語る。

「この作品は女子高生の日常を描いたもので、爽やかなアイドル路線でいくのかと思ったのですが、当時彼女が目標として掲げていた女優が市原悦子さんだったんです。

 今考えると初志貫徹といえるのですが、当時はアイドル女優としては珍しいなと思いました。演技力は最初から高く評価されていましたね。富田靖子さんは角川3人娘(薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子)のアミューズ版のような印象でしたね」

 その後も大林宣彦監督の目に止まり『さびしんぼう』('85年)の主演に抜擢されるなど順風満帆な女優人生のスタートを切っているかのように見えたが、「彼女は作品運に恵まれないという印象がある」と、宝泉さん。続けて、

「デビュー作の『アイコ十六歳』の監督で、'83年に公開された2作目の映画『グッドバイ夏のうさぎ』では共演者だった今関あきよし監督が'04年に児童買春・児童ポルノ処罰法違反容疑で逮捕されて懲役2年4か月の実刑判決となり、デビュー作がテレビなどで扱いづらくなりました。

 また、3作目に主演した'84年公開の映画『ときめき海岸物語』では相手役の鶴見辰吾さんが大麻所持で捕まり上映中止に。さらに当時流行っていた大映ドラマのヒロインを務めたTBS系の『疑惑の家族』はドラマ中盤にさしかかった段階で共演者の木村一八さんがタクシー運転手への暴行容疑で逮捕され、打ち切りに。と、華々しくデビューしたわりには運のない出来事が重なっていたんです」

表の斉藤由貴、裏の富田靖子

 '90年代に入るとデビュー作の爽やか路線からはシフトチェンジしていく。

「彼女の持つ影の魅力が生かされる作品を選び、脇役で存在感を示すポジションに変わっていったように思います。私が彼女の作品で印象に残っているのは'91年のTBS系の東芝日曜劇場・単発ドラマ『秋・定年十年目の…』です。

 小林桂樹さん演ずる定年後の男性が俳句教室に通い、その先で恋してしまう若い女性生徒役が富田靖子さんでした。結局、若い女性生徒の方はそんなつもりはなく小林桂樹さんが振られるのですが、彼女が持っている天然の小悪魔感が生かされていた。

 私はこのような女優は“表の斉藤由貴、裏の富田靖子”と思っているんです。女の情念系を演じさせたら右に出るものはいない」(宝泉さん)

斉藤由貴

 '95年には香港と共同制作した映画『南京の基督』で娼婦を演じ大胆なヌードを披露。この作品で東京国際映画祭 最優秀主演女優賞を受賞した。

 舞台にも精力的に出演するようになり、私生活では若き日の筧利夫さんや堺雅人さんとの熱愛が報じられたことも。'06年6月にダンスインストラクターの男性と結婚。女児を出産している。

「結婚して出産をしたことで彼女の持つ” 妖気”が作品で消化されるようになった。それまでは彼女自身、自分の” 妖気”を役として消化しきれずに持て余していたように思います。

 '15年放送の近年ではNHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』で炭鉱夫の親切な妻として、'19年放送の『スカーレット』ではヒロイン戸田恵梨香さんのおっとりとした母親役を演じていますが、どこか不穏さを感じさせる。

 結局最後までいい人役だったのですが、何かあるぞと思わせる雰囲気が彼女にはあるんですよね」(宝泉さん)

 大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』('16年TBS系)でも新垣結衣の母親役、『私の家政婦ナギサさん』('20年TBS系)では多部未華子の良き上司役、『未来への10カウント』('22年テレビ朝日系)では木村拓哉の良き理解者的な教師役を演じ、その妖気は封印。

「'00年代前半くらいまではメインよりも目立ってしまいがちなバイプレーヤーでしたが、抑えることができるようになりましたね。普通のコミカルな役もでき、いるとその作品に厚みが出る女優に成長した。

 近年ではそんな意味で“富田靖子さんの無駄遣い”も気になりますが、私はもし『家政婦は見た!』をリメイクするなら主演は富田靖子さんが適任だと思ってるんです。情念系の女優の本領発揮して欲しいです」

『純愛ディソナンス』は物語も終盤に近付いた。怪演女優・富田靖子の本領発揮が期待される。

お話しを伺ったのは……宝泉薫(ほうせん・かおる)芸能評論家。アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)
 
吉川愛(本人インスタグラムより)
富田靖子さん

 

 

 

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富田靖子