性別・年齢不詳のものまねタレント、りんごちゃん。武田鉄矢や大友康平……そのフェミニンなルックスとは真逆のドスの利いた声のものまねで大ブレイク。最近テレビで見かけない気がするけれど……。
「今も元気にしてますよ〜! 少なくなったけどテレビのお仕事もしているし、インスタグラムやユーチューブ、ティックトックなどのSNSで発信もしています。全国各地を営業で回ったり、故郷・青森県十和田市の観光大使としても活動中です!」
杞憂に過ぎなかったようで、現在もかなりご活躍の様子。ならば、ものまねの新作も生まれていたりする?
「最近は桑田佳祐さんが『降りて』きています(笑)。もともと、ものまねは作り出すというよりは、自然と降りてくるタイプ。新しいネタを生み出すのは降ってくるのを待つしかないから、楽ではないんです」
怒られてばかりだった高校生時代
りんごちゃんのものまね人生は、幼少期から始まった。
「昔からものまねをして、人が喜んでくれる姿を見るのが好き。3歳くらいのころ、祖母が美空ひばりさんのファンで、一緒にビデオを見ながらまねしていました。自分で着物を着て和ガツラまでつけて(笑)。武田鉄矢さんのものまねは、中学生のころに見た『金八先生』の第7シリーズと、武田さんのクセを強調したコロッケさんのものまねに影響されて始めました」
農業高校に進学してからも、人を楽しませるのが大好き。授業中も突然立ち上がって歌い出したりして、先生によく怒られていたそう。
「いつも私のことばっかり怒って、いやだなーと思っていたけど、数年前に24時間テレビでお会いしたときに『りんごちゃんのことはいちばん気にかけていたからこそ、注意していたんだよ』と言われて、ブワーッと号泣しちゃいました」
年齢はりんご34個ぶん!?
りんごちゃんの芸風といえば、ものまねと並んで欠かせないのが個性的なルックス。りんごちゃんって何者なの?
「りんごちゃんはりんごちゃん! スターって私生活がミステリアスでしょ? 私もそうありたいし、性別や年齢にこだわらず、1人の人間として見てほしい。この間はイベント先で『6月の誕生日でりんご34個ぶんになりました〜』って発表しちゃいましたけど(笑)」
では、そのルックスはいつから?
「小学5年生くらいから浜崎あゆみさんのファン。あゆのメイクやネイルを雑誌で研究してまねしていました。ものまねと同時にかわいさも追求し続けて、今のギャップ芸ができた感じですね」
そんなりんごちゃんには、かわいさを保ち続けるコツがある。
「常に恋をすること(笑)。好きになるのは現場のスタッフさんが多いかな。好みのタイプは特にないですね。最近見た映画に出ていた山﨑賢人さんみたいなルックスはすてきだと思うけど、好きになるのは結局中身。優しい、気が合うとかですね」
ヒロミやマツコにも認められてついにブレイク!
バラエティー番組でブレイクする前は、下積みも長かったという。
「高校卒業後に青森から上京して、勤めていた飲食店の上司に芸能界に憧れていると話したところ、その知人の紹介で、ドラマやアーティストのPVに出させてもらうことに。ものまねのオーディションにも行っていました。それが15年前くらい。10年前から年1〜2回テレビに出るように。そのときは『りんご』という芸名で、まだ『ミュージック、スターティン!』という決めゼリフもありませんでした」
転機はりんご30個ぶんになる年の誕生月である6月だった。
「ちょうど将来のことで悩んでいた時期でした。飲食店の上司に相談をすると『ここで変わらないと、この先もずっと変わらないと思う』と言われて、雷に打たれたような衝撃を受けて。自分がなぜ青森から出てきたのか、これからどうありたいのかをあらためて考えました」
そこから意識したのが、人間としての土台をしっかり整えること。
「変わるといっても、何か格好つけるようなことをするより、人としていちばん大事な、挨拶や感謝することをしっかりやろうと思いました。『おはよう!』『ありがとう』と元気に言ってみると、そのぶん返ってくるのが楽しくて。仕事でもお客様とコミュニケーションをとる時間を大切にし始めたら、仕事の評価が急に上がって!」
上司のアドバイスから半年後、ものまねの仕事にも勢いがつき、2019年末に日本テレビ『うちのガヤがすみません!』(日本テレビ系)に出演し、ドカンとブレイク!
「MCのヒロミさんやフットボールアワーの後藤さんから“今までどこにいたの?”“これから忙しくなるで”とコメントをいただいて。『行列のできる相談所』でマツコ・デラックスさんが『今気になる人物』として呼んでくれたりもして、どんどん忙しくなっていきました」
電車で移動しても誰も『りんごちゃん』だと気がつかない
ずっと憧れていた、テレビに毎日のように出ている状況はまるで夢のようだった、とりんごちゃん。
「スターって、収録で一度家に帰って2〜3時間したらマネージャーさんが迎えに来てまた仕事して……と分刻みに仕事しているイメージ。私もリアルにそういう日があって『スターになった!』って喜んでいました。でも忙しすぎて、それまで大事にしてきた感謝する心を忘れかけてしまう時期も。やはり時間に余裕がないとダメですね」
給料は一桁増えたが、生活はまったく変わらなかった。
「もらえるお金が増えても『今だけ』という意識があったし。もともと豪邸、高級車、ブランドものには興味なし。ずっと100均やプチプラファッション、コスメなどが好きで、それはブレイクした当時も今も変わりません。地元に帰ってプチプラショップに行っても『これかわいいけど4000円もするのかー。どうしようかな?』と、しぶったりするので、姉からは笑われています」
移動もずっと「素りんご(すっぴん)」のときは電車だ。
「周囲にとけ込む技を持っているし、テレビ出演のときは特殊メイクくらいのレベルで盛っているので(笑)、全然気づかれないんです」
最近は直接ファンの人と交流する場も多く、楽しいという。
「SNS以外にも、地方のステージに立って、ものまねを披露したりしています。テレビに出る機会は減りましたが、その分、営業イベントでファンの方と会える機会が増えました。イベントに出ると“以前テレビでよく見てました”“今は何してるの?”なんて言われて“私って過去の人〜?”と思うこともありますが、あまり気にしないですね」
1日警察署長でもハウンド・ドッグ大友を
青森県十和田市の観光大使となって、3年目。
「コロナ禍の始まりのころに就任したんですが、最初は東京から移動できずつらい思いをしました。今は毎月青森へ。先日も1日警察署長をさせていただきました!」
十和田署の1日警察署長を務めた際は県警音楽隊の生演奏でハウンド・ドッグ大友康平の歌まねなどで観客を盛り上げていた。変わらずりんごちゃんらしく活動している。
「私はものまねはできるけど、お話もうまくないし、だめなところもある。でもそれも全部自分。私らしく、できることを精いっぱいやっています。今後も全国を回って、みなさまに会いたいですね。観光大使の仕事も頑張ります! 私は地元が大好き。もっと県の魅力をアピールして地域貢献したいです。これまで自分がたくさん夢を叶えてもらったので、今度は故郷に恩返ししたり、全国のみなさまの夢を叶えていきたいです!」
ものまねタレント。武田鉄矢、大友康平、吉幾三などのレパートリーを持つ。『ものまねグランプリ』や『ウチのガヤがすみません!』(ともに日本テレビ系)といった番組で活躍。'19年にはネタ中の決めポーズ「スターティン!」が『流行ポーズ大賞』で2位を獲得。
<取材・文/野中真規子>