医師が警告!減らすべき薬とは(※画像はイメージです)

 年齢を重ねるほど身体に不調が出るのはしかたないが、そのつど新しい薬をのんでいたら、いくつ薬をのめばいいか、わかったものではない。

副作用が起こりやすくなる

「厚生労働省の調査から算出すると、75歳以上の4人に1人が6種類以上の薬をのんでいます()。たとえ医師から処方されたものでも、6種類以上の薬をのむと副作用が起こりやすくなることがわかっているので注意が必要です」

※出典 令和3年 社会医療診療行為別統計

 と言うのは、多剤併用の問題に長年取り組んできた神戸大学名誉教授の平井みどり先生だ。

 また、種類や量は同じでも、のむ人の年齢によって薬の効き方も変わってくるという。

「加齢により肝臓や腎臓の働きは低下していきます。口からとり込んだ薬が分解されて体外に排泄されるまで、高齢者は時間がかかるので、そのぶん薬の成分が体内に長くとどまり薬が効きすぎてしまう場合があるのです」(平井先生、以下同)

 薬が効きすぎていることに気づかずに長年同じ量をのんでいたせいで、ふらついて転んで大腿骨を骨折、寝たきりになってついには認知症を発症……などという事態も、最悪の場合にはありうるのだ。

シニアが注意したい薬とその副作用

 薬には大なり小なり副作用がある。特にシニアが気をつけたい副作用には、ふらつきや転倒、食欲不振、便秘、排尿障害、うつ、物忘れ、せん妄(頭が混乱して興奮したり、ぼんやりしてしまう症状)などがある。こうした症状が出る場合は、薬ののみ方を見直したい。

長年寝たきりだった人が入院して、のんでいた薬を一時中断したら、血圧も下がって元気になり退院時には歩いて帰れたとか、高齢者介護施設の入所者が朝晩10年のみ続けていた胃薬を朝だけにかえたら暴言がおさまった、といったことが実際にあります。どちらも薬の副作用が強く出すぎていた例ですが、こういうケースは案外珍しくないことなんですよ」

 高齢者がのみ続けると副作用が強く出やすい薬とはどんな薬だろうか。

「例えば睡眠薬です。種類によっては認知機能を低下させる副作用があるため、のんでいた高齢者が認知症を発症したと周りが誤解するおそれもあるので要注意です」

 ほかにも、うつ病の薬や血液をサラサラにする薬、高血圧や糖尿病の薬など、シニアがのむと副作用が出やすい薬がある。代表的な薬とそれぞれの副作用を一覧にしたので、ぜひ参考にしてほしい。

薬を上手に減らす3つのステップ

 自分や高齢の親がのむ薬が多すぎると思っても、自己判断で薬を減らしては絶対にいけないと平井先生は強調する。

「どんな薬も治す目的で処方されたもの。勝手に減らせば症状を重くするなどの問題が起きるかもしれません。大事なことは、医師に優先順位をつけてもらうことです」

 そこで、薬を上手に減らすための3つのステップを紹介する。

ステップ1

 特に要注意の「6種類の薬」をのんでいないか確認する

1.「不眠症」の薬
2. うつ病の薬
3. 高血圧の薬
4. 血液サラサラの薬
5. 糖尿病の薬
6. 過活動膀胱の薬

 上記で紹介した6種類の薬の中に、普段のんでいるものがないかをまずは確認したい。あれば、それが減らす薬の第1候補になる。また、自分ではなく、高齢の親がのんでいる薬を確認する際にはちょっとしたコツがあるという。

「『年をとると副作用が出るから薬を減らすべきだ』などと頭ごなしに言うのはよくありません。薬をたくさんのむことで安心しているシニアも少なくありませんので、『お薬も卒業できるらしいよ』などと声をかけて、一緒に整理しつつ種類を確認するのがおすすめです」

ステップ2

 薬やサプリは「お薬手帳」にすべて記入する

 お薬手帳には、病院で出された薬はもちろん、普段のんでいる市販薬やビタミン剤などのサプリメントもすべて記録したい。例えばサプリの成分が、処方された薬の効きを弱めたり、逆に強めていたりする可能性もあるからだ。

 さらに、身体に異変を感じた日や予防接種を受けた日などもメモしておけば、問診などの際に伝え漏れも防げる。お薬手帳を、医師や薬剤師との連絡帳として上手に活用したい。

ステップ3

 かかりつけ医に薬を減らせないか相談する

 薬やサプリを記入したお薬手帳をかかりつけ医に見せて「薬を減らしたいのですが、減らせますでしょうか?」と相談しよう。

 もしも医師に相談するのはハードルが高いと感じたら、まずは処方箋を持っていく薬局の薬剤師さんを頼るのもテ。しっかり相談に乗ってくれる。

「薬は種類の多さがいちばんの問題ではなく、その人にとって適切な薬が適切な期間のめているかが最も大事です。もし、薬への不安や疑問があれば、そのときは薬剤師に遠慮なく聞いてください。医師だけでなく、薬局や薬剤師を上手に活用していただきたいですね」

今回教えてくれた先生は

平井みどり先生

 神戸大学名誉教授、京都大学医学研究科特任教授。薬剤師と医師の免許を持ち、長年、薬の適切な使い方や予防医学の大切さを訴えてきた。

<取材・文/冨田ひろみ>