患者を治療する立場の医師ががんになることも少なくない。今回は子宮頸がんを経験し、現在も闘病中で自身でブログの更新もしている居原田麗(いはらだ・れい)先生に話を聞いた。居原田先生は「がんを経験したから、やりたいことがある」と語る。
がん発覚し夫と泣き明かすも2日後には前向きに
居原田先生が大きなショックを受けたのは、最初に子宮頸がんと診断されたときより、組織検査でがんのタイプがわかったとき。子宮頸がんの約1%しか症例がなく、見つかりにくく進行の早い小細胞がんだとわかったのだ。一昨年3月のことだ。
「定期的に人間ドックは受けていたのに、数年で死んでしまうのかも?と、その日は夫と2人で泣きあかしました。でも2日後には、この先の治療で脱毛することを考えて、さっそく、眉のアートメイクをしました。これが、まずやったことですね」(居原田先生、以下同)
居原田先生は「麗ビューティー皮フ科クリニック」院長を務める美容医療医。人に美しさを提供することをライフワークとしてきた。中学校1年生から保育園通いの幼児まで3男1女の母でもある。
子宮の摘出手術、抗がん剤投与などの治療で脱毛も経験。翌年夏には肝臓とリンパ節に転移し、2度目の手術を受けた。子どものことや仕事など心配と不安は尽きない。
それでも、根気よく治療を続け、がんをコントロールしながら、身体によいと思うことは、フットワークよく試してきた。
「1つは“温活”。もともと体温が低くて、汗もあまりかかないタイプ。でもお風呂に1時間つかったり、ブーツ型の足用の湯たんぽを使ったり、身体を温めるようにしたら、汗もよくかくし、体調もよくなりました。身体を温めると免疫細胞の働きもよくなるといいますしね」
アロマテラピーも生活に取り入れた。もともとアロマテラピーアドバイザーの資格を持っていたという。アロママッサージは毎日ご主人が慣れない手でやってくれるとか。治療の副作用のつらさがやわらぐなど、効果を実感中だ。
がんになって、やってはみたものの、やめたこともある。
「食事にも気をつけようと、人にすすめられて糖質やタンパク質を制限したり、食材を厳選していたら、食べられるものが限られてしまい、10kgもやせてしまったんです。これは無理だと思い、今は制限はほどほどにして、適正体重を保っています」
治療の支えになっているのは夫や子どもたち。そして、ブログを通した交流だという。
「ブログは長く続けていますが、がんのこともオープンにして、とてもよかった。落ち込んでいると励ましてもらえるし、何より同じように闘病を続けるフォロワーさんから、“ブログを読んで元気になりました”などというコメントがあると、こちらもすごく力づけられます」
近年のがん医療では、脱毛対策や爪のケアなど、がん患者のアピアランス(見た目)のケアを重視するようになっている。居原田さんも今はウィッグや帽子でのおしゃれを楽しんでいる。
さらに、がんを経験した美容医療医として、もっとできることがあると感じている。
「頬がこけたらヒアルロン酸を入れて。しみはレーザーで消せる。なんとでもなります。
私も副作用がつらいときは気持ちがふさぐこともありますが、きれいでいようと思うことって、生きていく力になると思うんです。私も美容のためのルーティンは今も欠かしていませんし、通院もおしゃれして行きますよ」
娘を持つ母としても、今後は世のお母さんたちに向けて「子宮頸がんワクチン」接種の大切さを訴えたいと話す。
「私だからこそ伝えられることもあるはず。これからも人が元気になれるような情報を発信していきたいですね。
近々、社員旅行で沖縄に行くのですが、ウィッグでスキューバダイビングにトライする予定です。ブログにアップしたときのフォロワーさんの反応が、今から楽しみです!」
始めたこと(1)「眉のアートメイク」
組織検査の結果に大泣きした2日後にクリニックへ。さっそく治療に備えて、眉のアートメイクをしてもらった。「脱毛が始まり、眉毛が抜けても特に悩みませんでしたね」(居原田麗先生公式ブログより)
始めたこと(2)「アロマテラピー」
精油を香らせたり、夫にアロマオイルでマッサージしてもらうように。「寝つきもよくなるので、助かっています」(居原田麗先生公式ブログより)
ブログでは、美容情報や日々の暮らしのほか、脱毛状況など闘病についても配信。多くの女性や、がん患者の共感を得ているようだ。
(取材・文/志賀桂子)