ゴミ袋が高い。全国でも有料化している自治体は増加傾向にあり中には1枚200円なんていう地域も。あらゆるモノの値段が上がって、ため息ばかりの日々。買い物の段階からモノとの向き合い方を考えて、ゴミを可能な限り削減しよう!
ゴミ袋代だけで年間1万円超え!?
「ゴミ袋の有料化は全国で年々増えています。実施率は、今では約6割にまで広がっています」と話すのは、ゴミ処理に詳しい東洋大学名誉教授の山谷修作さん。
有料化の広がりとともにその値段の高さにも注目が集まっている。特に高いのが北海道で、40~45Lの大袋1枚が100円を超える地域が多数。日本一高いえりも町では1枚200円!1週間で2枚使ったとすると1か月で1600円、1年では1万9200円にもなる。100円を超えないまでも、東京の多摩地区や神奈川県の湘南、鎌倉エリアなども比較的高く、1枚80円。値上げラッシュで家計は苦しいのにゴミ袋まで……出るのはため息ばかり。
たかが袋1枚、どうしてこんなに高いのだろう?
「諸事情ありますが、可燃ゴミの処理費用を住民に負担してもらうという側面があるためです」(山谷さん、以下同)
焼却施設の維持管理費や収集車の燃料費、人件費などゴミ処理には多くのコストがかかる。
「北海道地方がとりわけ高いのは、ゴミ処理施設の老朽化、広大な面積や積雪の影響によるゴミ収集のコストが割高になるケースが多いからと思われます。十分な税収が得られていないのも影響しています」
いまだに有料化を実施していないのが東京23区。
「地方に比べれば税収が格段に豊かなので、まかなえているのだと思います。また23区は各区がそれぞれ行政を執り行っていますが、ゴミ処理に関しては区で線引きができず、有料化しにくいという点もあります」
例えばゴミ処理施設を例にとると江東区に21%も集中しているが、千代田区や文京区には1つもない。ゴミ処理施設を共同で利用しているため、区単独の有料化がしにくいのだ。
「とはいえ自治体としては有料化したいというのが本音。23区も有料化の可能性は、将来的にはゼロとはいえないでしょう」
袋代を減らすにはゴミを減らすのみ
生活している以上ゴミは出続け、ゴミ袋代もなくすことはできない。ならば、ゴミ自体を減らすしかない。家事アドバイザーの矢野きくのさんは、「とにかく分別を徹底させましょう」と話す。
「ほとんどの自治体ではリサイクルゴミは有料化していないので、食品の外箱、トイレットペーパーの芯、プラスチックなど細かく分類してリサイクルゴミに出すといいでしょう。分別を徹底すると可燃ゴミは10Lや20L袋で十分収まるようになっていきます。袋が小さければ値段も安くなるので、節約効果は確実に得られます」(矢野さん、以下同)
さらに買い物の際にもゴミが出ないように配慮を。
「例えばキャベツの外葉。家で捨てると、かさばるのでゴミ袋もいっぱいになりやすい。スーパーの売り場で捨てられるようならその場で捨てるなど、ゴミを減らす意識を持って買い物をすることも大切です」
詰め替え容器のものを購入したり、紙コップや紙皿など使い捨てのものをやめるのも有効。
有料化に伴い、生ゴミ処理機であるコンポストを購入する際には補助金を出す自治体も多いので、それを利用してもいい。洋服は、資源ゴミとして回収するサービスなどを利用するか、衣料品店の無料回収に出しても。フリマアプリの利用もおすすめしたい。ラップの代わりにシリコンのふたを使うなどして、ゴミを出さない工夫が大事。
前出の山谷さんはこう話す。
「ゴミ袋を有料化した自治体では、ゴミの量が2~3割は減っています。有料化することで、ゴミに対する住民の意識が変化した証拠です。有料化のいちばんの意義は、ここにあると思います」
ゴミ処理ではCO2が排出され、温暖化などに悪影響を与えてしまう。地球環境の観点からもゴミの削減は誰もが真剣に取り組むべき課題。ゴミ袋も、石油高騰の影響でさらに値上がりする可能性は否定できない。
ゴミ捨てのスキルを上げて、エコ&家計を守り抜く力を、しっかり養っていきたい。
【ゴミを減らす3大アクション】
(1)買い物基準は“ゴミを出さない”
買う時点で、ゴミが出にくいか、資源ゴミに分別しやすいか、などを判断して買い物を。「以前、夏によしずを購入したのですが、捨てる際に手間がかかって大変でした。なので今は布製のオーニングに。これなら布扱いで資源ゴミになるし、小さくカットすればかさばらずにゴミ出しできます」(矢野さん)。ほかにフローリングワイパーのシートは雑巾に変える、メイク落としはクレンジングシートではなく手で落とすタイプにするなど、小さなことからコツコツと。
(2)しっかり分別、“資源ゴミ”へ
プラスチック、ペットボトル、瓶、缶、古紙、布類といった資源ゴミは多くの自治体では無料。しっかり分別して資源ゴミの日に出すことで有料ゴミを減らすことができる。とはいえゴミの分別は手間がかかるので「古紙はここ、プラゴミはここ」とわかりやすくしておき家族みんなに協力してもらおう。「わが家では大きな紙袋を用意して、あらゆる古紙を入れています。捨てるときは紙袋ごと捨てられて、便利です」(矢野さん)
(3)捨てるときは“カット&圧縮”
小さいゴミ袋であればその分安くなるので、かさばるゴミは切るなどして圧縮を。「キャベツの外葉などは、そのまま捨てるとすぐに袋がいっぱいに。小さく切って無駄な空間をつくらないようにして。生ゴミならコンポストを使ってもいいですね。燃やせないゴミが有料袋使用となっている場合、金属も切れるノコギリがあると便利。私はパイプ椅子を捨てる際、ノコギリで切って分解し、小さな袋で出すことができました」(矢野さん)
伺ったのは……山谷修作さん ●ごみ減量資料室代表/東洋大学名誉教授。環境省の廃棄物会計基準・有料化ガイドライン策定検討委員会委員、福井県ごみ減量化推進会議議長、その他地域の審議会会長を歴任。ゴミに関する著書も多数。
矢野きくのさん ●家事アドバイザー/All About節約ガイド。家事の効率化、家庭の省エネなどを専門にテレビ、雑誌、講演などで活動。『シンプルライフの節約リスト』(講談社)など著書多数。
〈取材・文/樫野早苗〉