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 生の魚料理を指す「お刺身」と「お造り」。もともとは両方『切り身』と呼ばれていたが、どのように変化していったのだろうか。知って楽しい、おもしろ雑学をお届け。

Q. 「お刺身」と「お造り」の違いってなに?

A. 「お刺身」は関東で生まれた呼び方で、「お造り」は関西で生まれた呼び方です(和文化研究家 齊木由香さん)

 生の魚料理を指す「お刺身」と「お造り」。この2つにはどんな違いがあるのだろう。

 和文化研究家の齊木由香さんによると「もともとは関東でも関西でも『切り身』と呼ばれていましたが、武家社会の鎌倉時代になり、『切る』という言葉が嫌がられるように。魚の種類がわかるように切り身の近くにその魚の尾頭を刺していたことから言葉を取って『刺身』に名前を変え、関東から全国へと広まりました。

 しかし関西では『刺す』も『切る』と同様に縁起が悪いとされていて、魚を切ることを『造る』と表現していたため、関西では『お造り』と呼ばれるようになったのです」
とのこと。

 さらに、関東の「お刺身」と関西の「お造り」では、盛り付け方も違ったのだとか。

「江戸では、人をもてなす華やかな料理(会席料理)が好まれていて、『お刺身』もおもてなしの席で出す料理だったため、さまざまな種類の魚や野菜、山菜などが盛り付けられました。一方関西では飾り気のない料理(懐石料理)が一般的で、『お造り』もひと皿に盛り付けるのは1種類の魚のみという簡素なものでした」(齊木さん、以下同)

お刺身やお造りはなますがルーツ。もともとは生肉を細かく刻んで酢であえていたが、室町時代以降、魚肉を酢であえて食べるようになった

 しかし現在、意味は逆に。

「『お刺身』と『お造り』の両方が全国に広まった結果、言葉の持つイメージによってでしょうか、現在では『お造り』は宴会や会席など人をもてなすための料理を指し、『お刺身』はお皿に魚をのせただけの料理を指すことが多いです」