映画『死刑に至る病』『孤狼の血』『凶悪』などを手掛けた映画監督・白石和彌氏。現在は、西島秀俊と中村倫也がW主演を務める監督作『仮面ライダーBLACK SUN』(Amazonプライムビデオ)の配信開始を10月に控えるなど、精力的に活動しているが、ネット上では、白石監督が過去、俳優に詳細を伝えないまま濡れ場シーンの撮影を行っていたことが物議を醸している。
「もしかしたら(キスの)先までいくかも」
白石監督といえば、今年、日本映画界の性暴力/ハラスメント告発が相次いだことを受け、いち早く防止策への提言を行っていた人物だけに、驚いている人も少なくないようだ。
SNS上で問題視されている映画は、2016年6月公開の綾野剛主演作『日本で一番悪い奴ら』。日本警察史上最大の不祥事とされる北海道警察の「稲葉事件」をモチーフにした作品で、綾野は正義感が強い好青年だったものの、業績を上げるために裏社会とのパイプを築き、悪事に手を染めていく北海道警察の刑事・諸星要一役を演じている。
「あるスポーツ新聞が配信した、当時の同作のトークイベントのレポート記事が、SNSで大拡散されたんです。物議を醸しているのは、諸星と、矢吹春奈演じるすすきののホステス・田里由貴の性行為シーンに関する“裏話”。
白石監督によると、同作には、諸星が薬物に溺れた由貴を殴りながら性行為を行うシーンがあるものの、当初、台本にはなかったとのこと。しかし、綾野が≪監督、俺、セックスしたいっス≫と申し出たため、矢吹に詳細を明かさぬまま、≪『もしかしたら(キスの)先までいくかも』くらいに≫伝えたといいます。
スポーツ紙の記事は、綾野がスケベ心から性行為シーンを要求したと書かれており、そこはさすがに自身の役と作品のことを考えての提案だったと思いますが、矢吹にしっかり了承を得ぬまま撮影した点は見過ごせません」(芸能ライター)
矢吹本人は≪脱がされても、何が起こってもいいように≫マイクを外し、そのシーンを演じきったといい、「日刊スポーツ」のインタビューでは≪クスリに溺れているわけですから、セックスを求める気持ちが強くなるんじゃないか。いろいろ悩んだんですけど…キレイに撮ってくださって、とても好きなシーンになりました≫とも述べているが、「俳優側が苦痛を感じる可能性のある演出」(同・前)と言っていいだろう。
「ハラスメント監督じゃん」の声
「今年3月、『週刊文春』(文藝春秋)が、榊英雄監督の性行為強要問題を報じて以降、監督や俳優、映画プロデューサーといった日本映画界の著名人たちの性加害問題が次々に発覚。同時に現場のハラスメント問題も明るみに出ました。
そんな中、性的なシーンの撮影で、俳優が身体的、精神的に苦痛を感じることが珍しくないということも浮き彫りになり、『インティマシー・コーディネーター』――監督やプロデューサーと俳優の間に入り、意見の調整を行い、俳優の心身をサポートする専門家の存在が注目を浴びるようになったんです。
『日本で一番悪い奴ら』の撮影時は、まだこうした配慮の必要性が映画業界に浸透していなかったかもしれませんが、監督が相手役の了承も得ないまま、だまし討ちのように濡れ場シーンを撮影するのは、一般人からすると『あり得ない』と感じるのでは。ちなみに白石監督は、トークイベントで≪矢吹さんには申し訳なかったんだけど≫と言っていたそうなので、“良くないことをしている”という認識はあったのでしょう」(スポーツ紙記者)
SNS上では、レポート記事が拡散されるとともに、
≪邦画界ってヤバ過ぎ≫
≪女優さんたち、脱ぎたい人は脱げばいいけど、少しでも迷いのある人はこんなこと受け入れなくていいよ≫
といった批判が噴出。また一方で、
≪結局、白石和彌監督もハラスメント監督なんじゃん≫
≪白石監督ってセルフでパワハラチェックしてたような監督って思ってたけど この撮影の後の話か、それともセクハラは別か?≫
など、白石監督が日本映画界の性暴力/ハラスメント防止に積極的な人物であることから、記事内容に驚く人も散見された。
だまし討ちのような濡れ場シーンの衝撃
「白石監督は、今年6月に放送された『クローズアップ現代』(NHK)の『封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~』に出演。映画界の性加害について、≪30年近く映画界にいて、こういったことに気づけなかった、直すことができなかったということに大きな責任を感じています≫と語り、≪現場にハラスメントがあっては、おもしろい映画は絶対できない≫と断言していました」(映画誌編集者)
白石監督は自身の監督作で、日本で先駆けて「リスペクト・トレーニング」というハラスメント防止の取り組みを実施したことでも知られている。
「2021年8月公開の映画『孤狼の血LEVEL2』では、キャスト/スタッフ全員が『リスペクト・トレーニング』を受講。これは、お互いを尊重し合う気持ちを持つことで、ハラスメントをなくしていこうという取り組みで、具体的には、参加者全員で『何がハラスメントにあたるのか』を考えていくのだそうです。
白石監督は、過去に上司から殴られたり、逆に自分がスタッフに暴力を振るってしまった経験があるといい、日本映画界の悪しき体質を嫌というほど実感してきたのでしょう。だからこそ、性暴力/ハラスメント防止に乗り出したと思うのですが、6年前のこととはいえ、矢吹に対するだまし討ちのような濡れ場シーンの撮影は衝撃的。今はこのようなことはしていないと願いたいです」(同・前)
今後、白石監督は、日本映画界から性加害/ハラスメントをなくていくために、どのような取り組みを行っていくのか――多くの人がその動向を見守っている。