さる9月1日は防災の日、1923年、東京をマグニチュード7.9(推定)の地震が直撃し、死者・行方不明者約10万5千人を出した痛ましい関東大震災の日だが、この日オープンした小さな喫煙所が注目を集めている。
関東大震災の際、地震で発生した火災旋風で38000人もの人々が犠牲になったという横網町公園にも近い東京都墨田区横川1丁目。防災喫煙所「イツモモシモステーション」だ。
JT生産技術センターの正門・西門前にあり、壁には、「火災の際の避難場所を示した地図」「設置に対しての思い」などが表示されている。また内壁には「避難場所と避難所の違い」「災害用伝言板・災害用伝言ダイヤルの使い方」などが表示されている。
つまり、イツモは「スモーカーとノンスモーカーの共生」の場所として、モシモ(災害時)の際は災害時に役立つ情報を提供する場として機能するわけだ。
正しい防災情報を知っていさえすれば……
このイツモモシモステーション、日本たばこ産業(JT)が墨田区と、防災についての啓発事業を行っているNPO法人プラス・アーツの協力を得て設置したものだが、JT東京支社支社長の島川敏彦氏はこう思いを語る。
「東日本大震災の日、私は福島と栃木を管轄する支社におりましたが、いざというときの避難場所を把握していなかったこと、また避難場所についての間違った情報で右往左往した経験がありました。避難場所について正しい情報を誰か一人でも知っていれば、正しい避難ができたわけで、このイツモモシモステーションを通じて、防災についての正しい情報を知る人を増やしていくことができればと考えています」
そもそも東京都墨田区は、沖積層という軟弱な地盤が広がる場所で、揺れやすいという特徴がある。また木造建築が多く、延焼火災が起きやすい懸念、また北部は入り組んだ路地が多く、火災の際に消火作業が難航するという想定もある。「イツモモシモステーション」はそのような防災上の弱点を抱えた地域に設置するのはうってつけの施設といえるだろう。
9月1日、この東京墨田と大阪に第一号がオープンし、今後全国に広げていくという。デジタルサイネージを利用した防災情報の提供や災害対応自販機、備蓄倉庫などの機能も持たせていくことも構想されている。
平常時は、スモーカーとノンスモーカーの共生に貢献し、災害時は誰もを助ける存在にーー。イツモモシモステーションの可能性に期待したい。