「ここで逃げたら役者としてやっている意味がないなと思って」
明治後期、吉原での耽美な悲恋を描く舞台『桜文』に出演中のゆうたろう。当代随一と謳われる花魁・桜雅(おうが)(久保史緒里)の初恋の相手・仙太と、彼と同じ目を持つ小説家・霧野一郎を演じている。
和服を着てついた自信
“笑わない花魁”の桜雅と奇妙な出会いを果たす霧野。2人は次第に心を通わせるようになるが、桜雅は紙問屋の旦那・西条(榎木孝明)に身請けされようとしていた。笑顔を失った桜雅、その背景には悲しい初恋の記憶が……。
中性的でかわいい印象が強いゆうたろう。実直な霧野が桜雅との交流によって変わっていく様は、
「エネルギーの出し方がふだんの自分とまったく違うので大変でした。みなさんが抱いているイメージとはかけ離れたゆうたろうになっていると思います」
また、袴での演技も初。
「稽古の初日から着て練習したんですが、最初は歩くだけでもひと苦労。お腹を締めているせいか胃が小さくなったみたいで、食欲がなくなったりしました。でも毎日7〜8時間着ていたので、今はだいぶ慣れましたね」
自身の袴姿については、
「なで肩だから和服が似合うと着付けの方に褒めていただいて、自信がつきました。きれいに着ていると、自分でも“おー、カッコいいな”と思います(笑)」
現場は「みなさん本当にやさしくて楽しいんです」と微笑む。
「野球好きの久保さんに、高校野球の話を聞いたり、榎木さんに着付けを教えていただいたり。第一線で活躍されている方々は人柄も素晴らしいんだなって、日々感じています」
小説家の霧野と同じく、文を書くことが好きというゆうたろう。
「父の影響で昔から好きなんです。自分の気持ちを言葉にするのが得意じゃないんですけど、モヤモヤしているとき、そのとき感じていることを単語で紙にひたすら書き出して、くしゃくしゃにして捨てるとスッキリする、ということを一時期やっていました」
「わ、生きてる!」って感じる時間
また、手紙にも思い入れが。
「初めてファンレターをいただいたときにすごく感動したんです。何回も書き直したあとがあって、いろいろ考えながら、長い時間かけて書いてくれたんだろうなと思うと、うれしくて。それで、僕も20歳のころから自分の誕生日に母へ手紙を書いてます。
すごく応援してくれていて、会えなくても温もりを感じる存在なんですよね。僕は素直じゃないので好きな人ほど強く当たっちゃったりするんですけど、ふだん言えないことをこの日は言っちゃおうって。母は全部取っていて、たまに読み返してるみたいです。感想は聞きません。恥ずかしいから、言わないでって思う(笑)」
だが、舞台の感想は大歓迎!
「見終わってお客さんがどういう気持ちを抱くのか。想像できないし、すごく楽しみなので、ぜひ言葉にして届けてもらえたら嬉しいです。SNSでも、あるいは手紙でも!」
【家に帰ってまずすることは?】
「帰ったらすぐお風呂に入るというのを毎晩のルーティンにしています。ソファに座ると1時間くらいゆっくりしちゃうので。家でもしっかり汗をかきたいので、夏でも湯船につかります。重炭酸入浴剤を入れると、短時間でもめちゃめちゃ発汗するんですよ。“わ、生きてる!”って感じる時間です(笑)」
(公演情報)
パルコ・プロデュース2022
『桜文』
■東京/PARCO劇場 公演中〜9月25日
■大阪/ COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール 10月1日、2日
■愛知/名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館) 10月5日
■長野/サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)大ホール 10月8日
撮影/吉岡竜紀 ヘアメイク/木暮智大(bloc japon)