阿部勝容疑者の自宅アパート

「ええ、知っていますよ。背は170センチくらいでそれほど高くないのですが、恰幅は良くてイカつい顔の人。彼のアパートには部下のような男性が週に5日ぐらい出入りしていた。急に呼ばれたのか、夜中に来ていたことも」

 埼玉県さいたま市岩槻区にある容疑者の自宅アパート近くの住民はそう証言する。

 埼玉県警岩槻署は8月30日、土木建築会社の男性社員Aさん(41)に対する強盗致傷の疑いで、同社の社員で被害男性の上司の阿部勝容疑者(44)を逮捕した。

30分にわたって孫の手で部下の背部を数十回殴打

「29日、阿部容疑者は自宅アパートにAさんを呼びつけ、かねてから要求していた罰金370万円について“明日だけど大丈夫だろうな?”などと脅しながら、約30分にわたって孫の手でAさんの背部を数十回殴打。さらに包丁を突きつけるなどの暴行をしたというものでした」(全国紙社会部記者)

 部下の男性は全治不詳の打撲を負い、翌日になって岩槻署に相談して逮捕に至ったという。

 そもそも、罰金370万円とは一体……。

「部下が電話にすぐ出ないと1万円。部下にお使いを頼んで買ってきた商品が間違っていると10万円などといった、まったく理不尽な罰金です。何かとイチャモンをつけて、その合計金額は数年間で370万円に膨れ上がっていた。その支払い期限日が8月30日だったのです」(同・社会部記者)

 この罰金システムが2人が勤める土建会社のルールだとしたら、とんでもないブラック企業ということになるが……、

「いまのところ、会社ぐるみのものではない。容疑者と被害男性だけの“特殊”な関係だった」(捜査関係者)

 冒頭の住民はこう話す。

「部下の男性はいつも容疑者のアパート前の道路に駐車していた。すごく邪魔だったからよく覚えています」

毎日のように部下が呼びつけられていた阿部容疑者の自宅アパートの一室。部下を孫の手で殴ったのもこの部屋だった

 容疑者の“パシリ”をするために路駐していて、

「近くのセブンイレブンに買い物に行かされたりしていたようです」(同・住民)

 別の住民は、被害男性をおもんぱかる。

「土日もいたから、ほぼ監禁状態よ。彼もいい歳だから家族がいるだろうに……見ていて気の毒だったわ」

 一方、阿部容疑者は1LDK、家賃月6万円、築16年のアパートで独り暮らしだった。

「以前は女性と一緒にいるところを見たこともあったけど、最近はずーっと独りだったみたいよ」(前出・住民)

被害男性は洗脳されていたのか

 それにしても、なぜ被害男性は警察沙汰にする前に、会社に訴えなかったのだろうか?

「被害男性はやや気弱なタイプではあるが……。もしかしたら洗脳のような状態にあったのではないか」(前出・捜査関係者)

 被害男性は容疑者に対してこれまでで1000万円ほど、罰金という名のカツアゲをされてきた。給料だけでは足りずに、消費者金融で数百万円ほど借りていたという。

 警察の取り調べに対して容疑者は、

「孫の手で叩いたり、包丁を突きつけたりしたことは間違いありません」

 と暴力に関する容疑は認めている。部下への指導のつもりがだんだんエスカレートしていったのか。だが、

「(罰金を)回収しようとしただけ」

 と、孫の手で殴打した理由の正当性を主張するような供述をいまだにしているという。

 いずれにしても、上司の単なるパワハラでは済まされない事件となった。

 

週3、4回は部下が呼びつけられていた阿部容疑者の自宅アパート。部下を孫の手で殴ったのもこの部屋だった
阿部勝容疑者は1LDK、家賃月6万円、築16年のアパートで独り暮らしだった

 

 

 

 

埼玉県警岩槻署