9月19日は敬老の日。ということで、動物園にいる“日本最高齢”のご長寿さんたちが大集合。中には、人間でいうと“120歳以上”に相当するコアラも!
動物研究家のパンク町田さんによると、
「体の大きな草食動物は寿命が長い傾向にあります。代表格はゾウですね。動物が外敵から身を守る方法としては、肉食動物よりも足が速くなるか、自分も強くなるかのどちらかです。肉食動物よりも体が大きければおのずと勝ちやすくなります」
人間は男性よりも女性のほうが長生き傾向だが、
「動物も同じです。メスのほうがテストステロン(男性ホルモンの代表格)の分泌量が少ないからといわれています。
ちょっと極端な例かもしれませんが、宦官(かんがん)は一般男性よりも寿命が長かったそうですし、馬でも(去勢された)せん馬は長生きする傾向にあります」(パンク町田さん、以下同)
野生よりも長生きする理由
動物園で暮らす動物と、野生動物の寿命に差は?
「基本的に動物園の動物のほうが長生きです」
南極や北極、砂漠など極端な地域に生息する動物だと当てはまらないケースもあるというが、
「飼育下に置かれた動物は、人間の養護を受けられるので、寿命は延びます。動物園の努力はすごいですよ」
例えば、加齢によって歯が減ったり、なくなった動物は野生では死ぬしかない。
「でも動物園では食べ物をすりつぶしたり、流動食を飲ませたり、入れ歯を入れたり。非常に細かいケアが施されるので、歯がなくても生きていける。エサにはビタミン剤なども混ぜられているので、栄養バランスもいい。
その種に対応したワクチンがあれば毎年、接種してもらえるので感染症にかかるリスクもだいぶ減る。昼間は屋外展示されていても、夜は温度調整されたバックヤード(ナイトルーム)でゆっくり睡眠をとることができます」
キリンは夜、立ったまま寝るという話は有名だが、
「動物園のキリンは、寝っ転がって眠る子もいっぱいいるんですよ。“この環境は安全だ”という認識があるからです。キリンに限っていえば、野生よりも動物園にいるほうが3割ほど寿命は長いですね。
よく“動物は野生にいるほうが幸せだ”と言う人もいますが、一概には言えません。動物園では食に困らず、命を狙われる心配がないことや、スタッフや来園客から注がれる愛情を動物たちはしっかりと理解しています。そんなストレスフリーの環境だからこそ、長寿がかなっているんだと思います」
みどり・25歳・メス
昨年“史上最高齢の飼育されたコアラ”など2つのギネス世界記録に認定された。「コアラの平均寿命は15歳、人間でいうと120歳以上に相当するといわれています。何事にも臆しないマイペースな性格で、歯が丈夫で食欲も旺盛。そして淡路島の新鮮なユーカリを常に与えられる環境が長寿の秘訣だと思います」(コアラ飼育担当・平山さん)
●淡路ファームパーク イングランドの丘
兵庫県南あわじ市八木養宜上1401
ハツカ・29歳・オス
「キリンの平均寿命が25〜26年とすると、人間年齢なら90歳ぐらいになります」と飼育課長の磯哲雄さん。「衰えを全く感じさせません。若いオスと、メスを取り合うくらい元気ですが、体のほうはシワが増えてきました。メスたちといつも一緒にいられ、ストレスがかからないようにエサや飼育環境に気をつけていることが長生きにつながっているのだと思います」
●宇都宮動物園
栃木県宇都宮市上金井町552-2
マンゴー・25歳・メス
「人間の平均寿命と対比して計算すると100歳は超えていると思われます」と飼育展示担当の湯澤菜穂子さん。「日中は眠っていることが多いものの、まだまだ元気。獣医と飼育員が綿密に情報交換して体調ケアをしています。勝気な性格で、もう1匹のメスライオン・トモ(11歳)をライバル視しているのが生きる張り合いになっているのかもしれませんね」
●秋田市大森山動物園
秋田市浜田字潟端154
ミユキ・31歳・メス
飼育下でのホッキョクグマの寿命は24〜28歳。“灘の貴婦人”とも呼ばれている。「耳が遠くなってきてはいますが、持ち前のマイペースでのんびりした性格が長生きの大きな要因のひとつだと思います。また大型の降雪機によって夏場でも雪山で遊んで快適に過ごせるなど、極力ストレスを与えないことも要因かもしれません」(飼育担当・小川高志さん)
●神戸市立王子動物園
兵庫県神戸市灘区王子町3-1
ワイン・33歳・オス
今年1月“史上最高齢の飼育されたウォンバット”など2つのギネス世界記録の認定を受けた。「人間年齢で換算すると100歳は超えています。人懐っこく、細かいことは気にしない性格です。山の中にある自然豊かで静かな動物園なので、ストレスなく元気でいられるのかもしれません」(園長・松本慎也さん)
●五月山動物園
大阪府池田市綾羽2-5-33
ジュリー・57歳・メス
飼育下のオランウータンの平均寿命は40〜50歳くらい。「大人のオランウータンには少し厳しいところがありますが、子どもにはやさしく、とにもかくにも子ども好きの性格です。国内初の代理母として、チェリア(7歳)を受け入れ、現在も子育て中です。長生きの秘訣は、そんな心身の充実が大きいのかなと思います」(飼育担当・山本さん)
●多摩動物公園
東京都日野市程久保7-1-1
アヌーラ・69歳・オス
スリランカ(当時はセイロン)の建国2500年記念式典に三笠宮ご夫妻が臨席されたことで寄贈された。「白内障を患っていて、目がほとんど見えていないながらも、エサを求めて大きな放飼場を歩き回っています。新アジアゾウ舎は2メートルほどの砂が敷き詰められ、患いやすい足に優しい環境なのも長生きの秘訣ではないでしょうか」(飼育担当・松本さん)
●多摩動物公園
東京都日野市程久保7-1-1