(左から)チェッカーズ時代の藤井フミヤ、JUDY AND MARY時代のYUKI

 大好きなアーティストのCD発売日を心待ちにしながら、友達と雑誌の切り抜きを交換し、テレビの歌番組にかじりついていた'80〜'90年代のあのころ……アイドルブームからバンドブームまで、音楽とともに時代を駆け抜けてきた週女世代が選ぶ、もう一度復活してほしいバンドとは?(インターネットアンケートサイト「Freeasy」にて8月10日、20歳以上60歳以下の女性1000人を対象に実施)

1位 チェッカーズ('80〜'92年) 155票

 栄えある第1位はダントツ人気だったチェッカーズ

 '83年に『ギザギザハートの子守唄』でデビューし、翌年の『涙のリクエスト』で大ブレイク。チェックの衣装やアップテンポな楽曲、そして何よりクールなルックスのメンバーにキュン死する人が続出。あのころ、クラスの女子は光GENJI派とチェッカーズ派で二分していたりも。

'84年にリリースされた2枚目のシングル『涙のリクエスト』も名曲!

「まさに青春。あのころを思い出したくて、よくカラオケで歌いながら懐かし映像を見ています。大人になったチェッカーズを見てみたい!」(49歳・千葉県)

「ボーカルのフミヤさんも還暦と節目の年なので、もしかしたら……とつい望みをかけてしまいます」(51歳・茨城県)

「人気絶頂期に高校時代から付き合っていた地元の同級生と結婚し、円満な家庭を築きあげているフミヤさん、永遠に推せます」(45歳・東京都)

 過去にはメンバー間の確執なども報道されたこともあったが、“今でもファンです”という意見が多く見られた。ここまで熱く支持されるのはなぜか?

『チェッカーズの音楽とその時代』など'80年代の音楽をテーマにした本を数多く上梓している音楽評論家・スージー鈴木さんはその魅力をこう語る。

「彼らがデビューした'80年代初頭は、アイドルブーム、原宿ブームの全盛期。デビュー当時のチェッカーズは少し不良っぽい要素があり、ほかとは違った立ち位置でした。彼らがすごいのは10年の活動期間で浮き沈みがなく、常にヒットチャートの上位に位置していたこと。アイドルとしてブレイクした時期からセルフプロデュースする方向に転換しても高値安定でした」

 “不良っぽさ”のあるロックバンドながら、“可愛い”と声が上がる、ほかにはいない存在だった。デビュー当初は女性ファンが多い印象だが、男性からも憧れの存在として支持を集めるようになった。

「また最近、昭和ポップスブームで再注目されています。ただ、そのころの流行風俗現象としてというよりも、高い演奏力と歌唱力を持つ実力派ミュージシャンとしてチェッカーズにスポットが当たっている印象です。

 メンバーの演奏力の素晴らしさ、聴き心地の気持ちよさが突出していますよね。古びたものにならない楽曲自体の強さもあります。あと、私が書いた本の中で鶴久政治さんが『今ロックバンドは世の中にたくさんいるけどロックンロールバンドがいない』と語っています。

 ロールというのは、前衛的なファッションやショーアップされたダンスといったエンターテインメントの部分。そういうところを兼ね備えたバンドはいない。チェッカーズはまさに唯一無二といえるでしょう」

2位 JUDY AND MARY('92〜'01年) 124票

 続いて2位はJUDY AND MARY

 '93年にデビューし、シングル『Over Drive』でブレイク後はミリオンセラーを次々達成。アルバム『THE POWER SOURCE』は邦楽ロックバンド史上初の280万枚というセールスを記録したモンスターバンドだ。ボーカルYUKIのガーリーパンクなファッションに憧れ、ヴィヴィアンウエストウッドのバルーンスカートやぱっつんボブをまねしていた人も多かった。

ロリータパンクの先駆けで女性ロックボーカル像に貢献したYUKI

YUKIちゃんの可愛さが衝撃的でした。またバンドで楽しそうに歌う姿が見てみたい」(42歳・東京都)

青春時代真っただ中で聴いていたグループでした。『そばかす』や『くじら12号』などまた聴きたい曲がたくさんあります」(40歳・千葉県)

 ちなみに'13年に『週刊女性』が行った「復活してほしいバンドランキング」では1位だったが、その後'19年7月の直撃取材でYUKIとほかのメンバーが連絡をとっていない状態ということがわかり、ファンの間でも再結成は諦めモードなのかも。

3位 BOOWY('81〜'88年) 120票

 上位のランクインがもはや当然とも思えるBOOWY(ボウイ)が3位。ギタリスト布袋寅泰の作るアグレッシブな楽曲、そしてカリスマ的なたたずまいと超絶した歌唱力で歌い上げる氷室京介の姿に熱狂する若者が続出。日本の音楽シーンに革命を起こしたといわれているロックバンドだ。

現在数多く活動するロックバンドのロールモデルともいえるBOOWY

「ソロの氷室京介さんも好きだけど、やっぱり布袋さんの曲でいちばん光るしカッコいい」(41歳・青森県)

「復活したら奇跡だと思いますが、だからこそ見てみたいです」(55歳・神奈川県)

「最後のライブツアーに行きました。本当にカッコよかったので、またライブに行って当時を思い出したい」(55歳・愛知県)

 GLAYや氣志團を筆頭に、現在もリスペクトしていることを公言するバンドが後を絶たないBOOWY。活動はたった6年間のみ。人気絶頂の'87年12月24日、渋谷公会堂でのライブ中、突如の解散宣言にファンも絶句した。

「BOOWYは音的にもビジュアル的にも前衛的で、先ほど挙げたチェッカーズのノリとは全く違う硬派な雰囲気が魅力でした。

 本人たちのカリスマ性に加え、メジャーシーンでブレイクしてから解散までのスピードがすごく早かったのも伝説化している要因なのではないかと思いますね」(スージー鈴木さん)

4位 プリンセス プリンセス('83〜'96年、'12〜'16年) 119票

 4位は女性バンドとして最も成功したといわれている、プリンセス プリンセス

プリンセスプリンセス

「自分が高校生だったころカラオケで必ず歌っていた。女性目線の歌詞で心に刺さるものが多かった」(48歳・神奈川県)

「中学時代、彼女たちに憧れてバンドを結成しました。『ダイアモンド』とかまた聴きたいです」(43歳・栃木県)

 16年ぶりとなった'12年の再始動の際も華々しい活躍を見せた彼女たち。もう一度だけ再結成、なんてことに期待したい!

5位 ZARD('91〜'07年) 113票

 5位は坂井泉水さんの透明感あふれる歌声が印象的だったZARD

ZARD

「ZARDなしではあのころは語れないほどの思い出がある」(53歳・東京都)

「歌詞が心に響く曲が多かった。今でも好きです」(49歳・大阪府)

 ここまでのランキングに女性が選んだというこのアンケートの特徴があると分析するスージー鈴木さん。

「上位にJUDY AND MARYとプリンセス プリンセスがランクインするのが、非常に興味深いなと感じました。女性が選ぶアーティストらしいというか、もし男性に向けて同じ質問をすると、BOOWYやTHE BLUE HEARTSなど男性バンドが上位を独占するかもしれません。

 JUDY AND MARYやプリンセス プリンセスなど、'80〜'90年代はこれまでにいなかった、女の子の気持ちをストレートに歌う女性ボーカルバンドが活躍した時代でした。今聴いても胸を打つものがありますね。

 '12年から'16年にプリンセス プリンセスが再結成していましたが、当時のファンからするとたまらないステージだったでしょう。

 5位のZARDはもともとテレビなどでの露出も少なく謎めいた存在でしたが、ボーカルの坂井さんが亡くなってしまったことで、存在自体が伝説化しているのではないでしょうか」

6位以下

 6位は「ヒロトの歌い方のインパクトにハマった」(43歳・兵庫県)「名曲が多すぎて」(51歳・東京都)と名前が挙がったTHE BLUE HEARTS。7位は「私の青春の象徴でした」(35歳・東京都)という爆風スランプ。8位には「無表情のダンスをまた一緒に踊りたい」(45歳・岡山県)などという意見でWinkがランクイン。

「THE BLUE HEARTSは歌詞のレベルがとにかく高く、当時のバンドの中でも突出しています。青春時代にリアルタイムで聴いていた人の心に刻まれるのも納得です。

 爆風スランプは個人的には江川ほーじんさんというベーシストがいた初期のころが好きですが、やはり『Runner』の疾走感で大化けしたバンドですね。Winkは日本をディスコビートが席巻した時代の象徴のような存在。私はBaBe派でした(笑)」

 9位には「2人とも今もカッコいいからイケると思う」(48歳・神奈川県)と年を重ねても変わらない布袋寅泰さんと吉川晃司さんのユニットCOMPLEX。10位には「大恋愛をしていたころ『星のラブレター』をよく聴いていた」(45歳・北海道)という意見のあったTHE BOOM。スージー鈴木さんもこうしたグループがランクインするのは非常に納得だそう。

「COMPLEXの布袋寅泰さんと吉川晃司さんは、2人とも背が高くてルックスの迫力が洋楽的でしたよね。解散コンサートも行きましたが、とにかくカッコよかったです。THE BOOMは世界中のさまざまなリズムを取り込んだ楽曲が素晴らしいバンド。『島唄』のイメージが強いですが、実は奥の深い知的なバンドで私も大好きでした」

 10位以下もL⇔R(エルアール)、バービーボーイズ、たま、米米CLUBなどなど、懐かしい名前が挙がる結果となった今回のランキング。最後に、今回のアーティストが活躍した時代の音楽シーンをスージー鈴木さんに振り返ってもらった。

意外に思われるかもしれませんが、実はチェッカーズやガールズバンドが活躍していた'80年代中盤の音楽マーケットは底打ち状態で、売上規模は低迷していました。ちょうどレコードからCDに切り替わる時期で、音楽業界自体が低迷していたんです。

 '90年代に入り、カラオケボックスが流行しavexアーティストがミリオンセラーを連発する前の非常に地味な時代といえるでしょう。今回のランキングに登場するアーティストは、その谷間の時代で勝ち残る楽曲の強さを持っていました。だからこそ、人々の記憶に残り、再結成を待ち望む声が上がり続けているのではないでしょうか」

◆復活してほしいバンド ベスト10◆
1位 チェッカーズ('80〜'92年) 155票
2位 JUDY AND MARY('92〜'01年) 124票
3位 BOOWY('81〜'88年) 120票
4位 プリンセス プリンセス('83〜'96年、'12〜'16年) 119票
5位 ZARD('91〜'07年) 113票
6位 THE BLUE HEARTS('85〜'95年) 58票
7位 爆風スランプ('84〜'99年、'04、'05、'10年) 39票
8位 Wink('88〜'96年) 33票
9位 COMPLEX('88〜'90年) 23票
10位 THE BOOM('86〜'14年) 19票
※インターネットアンケートサイト「Freeasy」にて8月10日、20歳以上60歳以下の女性1000人を対象に実施
※( )は活動していた年

'80年代’90年代にデビューした解散or休止のバンド&デュオ

UP-BEAT('81〜'95年)
C-C-B('82〜'89、'15年)
キララとウララ('84〜'87年)
ピチカート・ファイブ('84〜'01年)
たま('84〜'03年)
TOM★CAT('84〜'88、'09年)
THE MAD CAPSULE MARKETS('85〜'06年)
KATZE('86〜'91年)
BaBe('87〜'90年)
フリッパーズ・ギター('87〜'91年)
BLANKEY JET CITY('87〜'00年)
東京少年('88〜'91年)
KUSU KUSU('88〜'94年)
BAKU('89〜'92年)
L⇔R('90〜'97年)
KAI FIVE('91〜'94年)
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT('91〜'03年)
KIX-S('91〜'99年)
MALICE MIZER('92〜'01年)
MANISH('92〜'98年)
猿岩石('94〜'04年)
class('94〜'96、'03〜'09年)
SUPER BUTTER DOG('94〜'08年)
Something ELse('94〜'06年)
↑THE HIGH-LOWS↓('95〜'05年)
Pool bit boys('97〜'01年)
SUPERCAR('97〜'05年)
BEAT CRUSADERS('97〜'10年)
19('98〜'02年)

スージー鈴木(すーじーすずき)●音楽評論家、小説家、野球評論家。『チェッカーズの音楽とその時代』、『恋するラジオ』(共にブックマン社)など著書多数。近著に桑田佳祐の歌詞の世界に迫った『桑田佳祐論』(新潮新書)がある

(取材・文/諸橋久美子)

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