東京五輪・パラリンピックの“負のレガシー”が後を絶たない。
大会スポンサーをめぐり、出版大手「KADOKAWA」の元役員らが逮捕されたり、NHK-BS1スペシャル『河瀬直美が見つめた東京五輪』後編に、「重大な倫理違反があった」とBPO(放送倫理・番組向上機構)に認定されたり、レガシーを吹き飛ばすような醜聞が続く。
「サメの脳みそ」に激怒か
そんな中、出版業界をザワつかせているのは、文春オンラインが報じた森喜朗(85)東京五輪・組織委員会会長(当時)の「講談社は絶対認めない」という強い言葉。これは東京五輪・パラリンピックの大会スポンサー契約をめぐり、KADOKAWAの競合相手だった講談社に対する発言だ。
「森さんは、こんなもの(講談社)を認めるなら辞めようと思う、と進退を持ち出したと言いますから、講談社に対する恨みはかなり根深いものがあったということです」
そう指摘するのは、ベテラン編集者だ。森発言の裏側を次のように読み解く。
「あまりにも失言が多かったため、“サメの脳みそ”と揶揄した出版社を森さんは許せなかったということです。以前、石破茂さんの顔のことを“バカボンパパ”とからかった週刊誌がありましたが、石破さんもそのことを根に持っていましたね。『家族もいるんだから、あれはないよね』と、やんわりとでしたが直接文句を言われた、とライターさんに聞いたことがあります」
森さんの、絶対許さないという意気込みが通じたのか、出版社枠の公式スポンサーに選ばれたのはKADOKAWAだった。
前出・ベテランン編集者が続ける。
「出版業界では五輪は講談社、という暗黙の了承があったのです。小学館も文藝春秋も、手をあげたりしないのはそのためです。1964年の東京五輪の際に講談社が関わったことがその後に続いているようで、長野五輪の際も、写真関係は講談社、文字関係は地元の信濃毎日新聞とすみ分けができていました。
五輪の出版物というのは、一般的に書店で販売される書籍だけでなく、選手村に毎日配られる印刷物などを作るためノウハウが求められる。それが講談社にはあった。大きな商売をやろうとしたKADOKAWAがそこに割って入ったわけですが、結果は逮捕者を出すというありさまです」
森さんが「絶対許さない」と講談社を敵視したばかりに、逮捕者を出し、会長宅にまで家宅捜索が入ることになったKADOKAWA。ブランド名は大きく傷ついた。
〈取材・文/薮入うらら〉