史上最年少の三冠王、そして本塁打数のシーズン最多記録に挑んでいる村上宗隆選手に痛いアクシデントだ。
9月12日に行われたプロ野球『東京ヤクルトスワローズ』対『横浜DeNAベイスターズ』の21回戦。村上選手のホームランをこの目で見ようと、観客が期待を込めて押し寄せた超満員の横浜スタジアム。
そして第3打席まで快音が聞かれなかった村上選手が、8回表の4打席目に立った時のこと。DeNAのエスコバー投手が投じた2球目、155キロのツーシームが村上選手の右太ももを直撃。苦痛に顔を歪ませながらもランナーとしてプレーを続けるも、後の守備には就かずに退いたのだ。
試合後に「明日以降はまだわかりません」と、出場の可否について言葉を濁したヤクルトの高津臣吾監督。村上選手の記録更新に暗雲が立ち込めている。
この死球にヤクルトファンが怒るのは当然ではあるが、退場後のヤクルトベンチの言動に対する野球ファンの憤りの声が上がっている。村上選手が交代した直後のDeNAの攻撃、1アウト1塁の場面で三番打者の佐野恵太選手が打席に入ったのだがーー。
「内角行け〜! 当ててもいいんだぞ、こっちも!! 内角ぅ〜! 行け!!」
ヤクルトベンチの方角から佐野選手に向かって、わざと死球を投げさせる、バッテリーに“報復”を促すようなヤジが飛んだのだ。これに集中力を切らしたのか、打席を一旦外して仕切り直す佐野選手。そしてサインを確認するように、ベンチに何度も視線を向けたヤクルトの中村悠平捕手は戸惑いの表情。
「当初はスタンドのファンかと思っていました」とはスポーツ紙野球担当記者。熱心な野球ファン、そして酔っ払った観客からのヤジは球場でよく見る光景だ。ところが、
「ヤクルトベンチ内から鬼の形相を浮かべて、中村選手に向かって指示するようなジェスチャーを繰り返す人物がいたのです。マスクを外して罵声を浴びせ続ける姿に、周囲のコーチ陣や選手も何も言えるはずもありません(苦笑)」
バッテリーは徹底した内角攻め
このヤジ音声が放送に乗ると、ネット上ではヤクルトベンチの“報復”示唆を批判する声が溢れたのは言うまでもなく。
《ヤクルトベンチのえげつないヤジのせいで、佐野が打席に立てなくなってる。》
《村上に当てられたらキレるのは当然 ただそれを報復しようとしたりヤジ飛ばすことを正当化する理由にはならんだろ》
《ヤクルトのベンチから汚いヤジ飛んでるのに、審判って何も言わないんだな?警告与えていいレベル》
そして試合再開後、ヤクルトバッテリーが投じたのは内角球。完全に腰がひけていた佐野選手はたまらず打席を外すように避けるも、球審の判定はストライク。徹底して内角攻めの配球に、6球目を打たされてファーストライナーのダブルプレーに倒れたのだった。
「昔から野球にヤジはつきものとは言います。2021年7月には当の村上選手も、阪神(タイガース)ベンチのサイン伝達行為を疑って指摘したことで、矢野燿大監督ら首脳陣から“やるわけないやろ、ボケ!”などとヤジられて、一触即発の場面になったことは記憶に新しい。
真剣勝負の場であるからこそ、特に味方選手が“被害”を受けた際にはチームとして黙っていられない、守らなくてはいけない性分があるのかもしれません」(前出・野球担当記者)
ヤジを飛ばした“犯人”が名乗り出た
さて、死球を促した“ヤジの主”ではあるが……、試合終了から数時間後の深夜に自ら名乗り出て謝罪をしていた。
《この度僕が口にした言葉に対して不快な思いさせてしまい、そして落胆させてしまい大変申し訳ありませんでした。》
自身のインスタグラムに投稿したのは、画像がない真っ黒な画面と添えられた謝罪コメント。その主はヤクルトの森岡良介一軍内野守備走塁コーチ。
《言い訳の余地はありません。僕が相手ベンチに口にした言葉は事実です。それによって佐野選手にもストレスを与えてしまいました。》
ファンと佐野選手、そして小さい子どもとその親にも謝罪と反省の弁を述べた森岡コーチ。そして自身のヤジについて、
《これを機に汚い言葉を使うのはやめます。もっと違う選手の守り方を考えて行こうと思います。》と改心することを誓ったのだ。
少子化に伴い、また他スポーツ人気もあって、白球を追いかける子どもの数は年々減少傾向にある。ホームランを含めたプレイで魅せると同時に、社会人としてのカッコよさを見せることもプロ野球人の義務なのかもしれない。