安倍晋三元首相、岸田文雄首相

 9月27日に東京・日本武道館で実施予定の安倍晋三元首相の「国葬」にすきま風が吹き始めている。

 岸田文雄首相が珍しく素早い決断を下した“国家行事”だが、全国政治部記者は「丁寧な説明の至らなさが国民の不信感を募らせている」と、政府の思惑がことごとく外れていることを指摘する。

 8月下旬に閣議決定された、当初の支出額を約2億5000万円と算出していた岸田首相。しかし、これが警備費や海外要人の接待費等を除いた、式典のみの費用であることが判明。総額16億6000万円が見込まれていること、また旧統一教会問題を有耶無耶にするような姿勢も相まってさらなる反発を招いてしまった。

 朝日新聞のよる最新の世論調査(9月11日、12日に実施)によると、国葬実施の賛成38%に対して、反対は56%と大きく上回っている。

「朝日さんの数字は特に高いですが、他社の世論調査でも軒並み“反対”が過半数を超えているのは確か。自民・公明党が主権を振るう現政権下ではそんな“民意”は反映されず、1度決めた国葬を中止するはずもなく完遂することでしょう」(前出・政治部記者)

『G7』メンバーの参列は1人だけ

 さらに政府にとって誤算だったのが、警備費用も含めた14億円を費やす予定だった海外要人の参列状況だ。

 岸田首相は国葬実施の理由の一つとして当初、「安倍元総理が培った外交的遺産を受け継ぎ、発展させるという意志を内外に示していく」と、各国首脳ら要人との「弔問外交」を声高に訴えていた。

 この言葉を鵜呑みにするならば、歴代最長の在任日数を誇る安倍元首相が培ってきた外交人脈によって、名だたる主要国トップが参列するものと思われた。以後も「諸外国から多数の参列希望が来ている」と胸を張っていた岸田首相ーー。

 ところが9月8日に公表したのは、『G7』メンバーからはカナダのトルドー首相のみで、友好国・アメリカからはハリス副大統領が出席。他参列者も確かに要人ではあるものの、明らかに主要国トップとは言い難い面々。

 一方で、同じ国葬でも顕著な差を見せつけたのが、70年間の在位期間の末に亡くなった英国・エリザベス女王の国葬だ。

安倍元首相の“顔に泥を塗る”

 海外事情にも精通する政治ジャーナリストによると、

「無論、イギリス国内から国葬への反対意見が聞こえることはほぼなく、多くの国民が純粋に女王に哀悼の意を表しています。そしてバイデン米大統領がすぐに参列を発表したように、こちらにはG7をはじめ、世界各国の首脳らの訪英が予想されます。

 安倍元首相の外交功績は讃えられるべきではありますが、両国における国葬の“現実”が物語るように、これが現政権の人気と人望も含めた、世界から見た日本に対する評価の現実なのかもしれません。

 安倍元首相の死をも逆手に取って、国民総出の国家行事で内閣支持率の上昇と、自民党政権の盤石化を図った政府ですが、逆に故人の顔に泥を塗る結果になってしまわないか、不安は尽きません」

 そしてトルドー首相をはじめとした参列者の発表は、岸田首相ら政府による“フライング”だったとする声も。

参列者は政治的、また警護の観点からも国葬直前に発表する方針だったと言います。が、国葬への風当たりが強まっている今、政府はなんとか正当性を主張するために、体裁を保つために早々と発表に踏み切ったとも。これでトルドー首相らが不信感を募らせて、やっぱり“欠席”ということにならなければいいのですが(苦笑)」(同・ジャーナリスト)

 2021年の就任以来、諸外国に計7兆円以上もの支援を表明している岸田首相。“バラマキ”政策をしておきながら、イマイチ支持されないのは国内外でも同じようだ。

 
安倍元首相銃撃事件の現場。二発目の銃声が鳴る直前の女子高生の姿。その後、混乱に巻き込まれる(目撃者提供)
安倍元首相に発砲された瞬間、警護と思しき者は驚いて後ろを振り返り…(読者提供)
安倍元首相を銃撃し取り押さえられる山上容疑者(共同通信イメージズ)
安倍元首相銃撃事件の現場周辺には随所に《お花やお供えなどは、故人へのお気持ちと共にお持ち帰りください》という貼り紙が