9月11日に『FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~』(フジテレビ系)に出演。久しぶりにテレビで歌を披露したASKA。彼がここ数年熱心なのが、自身のブログやSNSを使った健康についての情報発信だ。
公開された論文やデータを提示してワクチンを否定
しかし、以前『週刊女性PRIME』でも報じたが「すべての雑菌、ウイルスを死滅させてしまう」(ASKAの弁)という『オゾン水生成機器』の開発など、その内容については疑問符が付くものが多い。
ASKAの情報発信は、長らく世界中の人々を悩ます新型コロナウイルスについてのものが目立つ。スタンスは“ワクチン(接種)否定派”だ。今月5日に更新されたブログでも……。
タイトルは、《ワクチンよりも自然免疫の方が効果があることをCDCが認めた。》。
※『CDC』…アメリカ疾病予防管理センター。アメリカ・保健福祉省所管の感染症対策の総合研究所。
ブログ本文には以下の記述があった。
《世界の医療従事者は騙されていた。》
《今後、ワクチン接種者の90%以上が「血栓」による死と直面します。事実、イタリアでは、「新型コロナワクチン」接種者の94%に血栓形成の前段階である異物が発見されました。》
《なぜ、これをメディアは伝えないのでしょう。政府は、一刻も早く、「イベルメクチン」の、緊急承認をしなくては「陰謀」に加担したと思われてしまう出来事に発展しかねない。》
《菅元総理は、総理の時に「イベルメクチン」を口にしていた。総理の発言をも止める人物、組織は誰だったのでしょう。》
《データは嘘をつかなかった》と研究結果の“数字”を引き合いに出しつつ、陰謀論に展開。一時はファンクラブ限定記事だったが、広く知ってもらいたいと考えたのか一般公開に変更。さらに追記を3度加えるなどいつも以上に熱がこもっている。
ワクチン“懐疑派”医師も論文に疑義
ASKAは研究結果という“データ”を声高に叫んでいる。このような“事実”はあるのだろうか。新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦氏に話を聞いた。
1つ断りを入れると、岡田医師は新型コロナのワクチンに対して懐疑的・否定的なスタンスだ。つまり、新型コロナワクチンについて、立場をざっくり大雑把に2つに分けるとすれば、ワクチンを否定し続けているASKAと同じスタンスといえる。
新型コロナについて、ワクチンよりも自然免疫の方が効果があるのか。『自然免疫』といっても、“コロナ感染によって出来た免疫”なのか、“人間が体内でもともと持ち合わせている免疫”があるが、ASKAはこれまでワクチン接種に異を唱えてきたため、前者の感染によって生まれた免疫と考えられる。
「自然免疫が、実際に感染したあとに体内で作られるものという意味なら、そのとおりです。多くの論文でそのような研究発表がずいぶん前からあります。
自然免疫はコロナウイルスに対しさまざまな抗体を作ります。もう1度コロナウイルスが入ってきたときにウイルスのあちこちに中和抗体がつくので、ウイルスが分裂するのを抑え込む作用が強い。
一方、ワクチンはスパイクタンパクに対する抗体しかないので、その分、若干効力が落ちるということはこれまでも言われてきていますし、理論的にも正しく、この点はそのとおりです」(岡田医師、以下同)
しかし、この“理論”は、この後に大事な話が続く。コロナに対する自然免疫は、コロナ感染によって獲得されるものだ。
「自然免疫の方が再感染予防の効果が高いのは確かにそうなんですが、“だからワクチンがダメ”とは誰も言っていません。感染予防をするためにわざわざ感染するのは怖いですから。“その代わりにワクチンを接種しましょう”というわけです。
100%の予防効果はないけれども、しないよりはずっとマシ、感染してない人はワクチン以外に予防する手段はないので、ワクチンで予防しましょうというのが、CDCも含めて世界中の公的機関が言っていることです」
ASKAがタイトルにも掲げた「ワクチンよりも自然免疫の方が効果がある」は、ことさら珍しいことではなく、世界の共通認識。そしてそれはワクチン接種と“セット”で考えるべき話。
事実、CDCは8月の広報発表でワクチン摂取の重要性を《引き続き推進》、また、『COVID-19ワクチンに関する誤解と事実』という発表でも、《COVID-19のワクチンを接種することは、COVID-19に感染するよりも安全で確実な免疫の作り方です》としている。
つまり、“ワクチンよりも自然免疫の方が効果があることをCDCが認めた”とは言っていない。
しかし、ワクチン“自体”にはさまざまな意見がある。
「ただ、私自身はワクチンそのものに重大な疑義を持っている。副作用が非常に強いのですが、このことがメディアで正しく語られていないからです。ただ、“一般論”としては、ワクチンよりも感染によって体内で作られる自然免疫の方が効果があるというのは正しい」
では、もう1つASKAが主張する「ワクチン接種による血栓」はどうだろうか。
「原著論文を読んでみました。まず、血栓ではないんですね。“血栓”とは論文のどこにも書いていない。論文には顕微鏡で見た血液を撮影した写真が掲載されています。同じ人の血液をワクチン接種前と接種後で比較したものです。
健康だった赤血球が接種後はくっついてしまっているとしています。この状態を“連銭形成”といいます。連銭とは『銭形平次』が持っていたあれです。つまり、赤血球が積み上げた銭のように並ぶ状態。これが免疫異常などで起こることは昔から知られています」
しかし、こちらも疑義がある。
「論文を読むと非常にずさんなものでした。まず、血液の変化ですがそれが本当にワクチンによって生じたものかの証明がなされていない。例えば、血液というのは非常に微妙な条件で健康が保たれているものです。
血液を1滴取り出して試験管に入れたり、顕微鏡で見るためにガラスに乗せたりすると、とたんに温度変化やpH、つまり酸性・アルカリ性の数値が変わったり、表面の電気状態が変わったりして、細胞同士がくっついたり、破れたりします。
従って血液を観察する際は条件を厳密に調整しないと、人間の血液中で本当に起こった病的変化なのか、人工的な操作によって生まれたものかわからない。専門家は当然知っていることであり、本来論文では“こういう工夫をして人工的な操作による産物や変化を防いだ”ということを記述しなくてはなりません。
しかし、この論文にはそれがありませんでした。それが無い状態で“数例こんなの見つけました”みたいな論文です。私が論文を採否する編集委員ならただちに却下するような内容で信憑性に乏しい」
世の中を混乱させる情報「気楽に発信していいものではない」
ASKAはこの研究結果について、論文ではなく、それを取り上げている“ニュースサイト”を情報ソースとしているように見える。事実、ブログに貼られた画像はニュースサイトのものだ。
論文ではさらに4人のワクチン接種後の血液の写真を多数載せている。ガラスのように見える異物、粒状の異物、そしてチューブ状の異物が見える。
「論文の著者はむしろこっちを強調したいようですね。変な異物が見つかったと。ずいぶん前からいろんな人がファイザーやモデルナのワクチンの悪口を言うために“異物が入っている”と主張しているんですね。
しかし、この論文にある異物も、赤血球の変化と同様に人工的な操作の産物なのか、空気中のゴミなどではないかがわからない。こんなにハッキリ写っているのであれば、今はさまざまな分析方法があるのですから、それらの異物が何なのかをはっきりさせるべきです。
単なるゴミなのか、血液中で反応して生じたものなのか、あるいはワクチンに添加されていたものなのか、分析できるはずなのに一切やっていない。
この写真をそのまま信じるわけにはいきません。本当ならばメーカーに突きつけて分析させるべきで、どうしてそれをやらないのか。この論文は“フェイクニュース”に近いような気もします。同論文で紹介された4人には、ワクチン接種後に口の中の焼けるような痛み、呼吸困難など何らかの症状があったのだそうです。
しかし、赤血球の変化や血液中の異物は、1000人以上調べて、そのうち94%に起こっていたとも書いています。そんなことはありえないですよね。ワクチンを接種した1000人の大部分の人が体調が悪くて悶え苦しんでるなんて話はないですから」
また、論文自体に《血栓形成の前段階である異物》とは書かれていないという。
本件、論文自体ではない部分にも問題がある。
「ここまでお話した内容は専門性が高い話です。そのため専門的な知識をお持ちでない方が中途半端に解釈して、気楽に発信していい情報ではないと思います。今一番まずいのは、間違った情報あるいはフェイクニュースを本物だと信じて、伝播・拡散してしまう人がたくさんいて、世の中を混乱させていることです。
ワクチンの正当性も副作用も、専門家が正しく解釈して、正しい情報を世間に流すべきだと思います。いい加減な情報を出すこと、拡散することはやめましょうと強く言いたいですね」
SNSではコロナに限らずさまざまな情報が飛び交う。
「かなり信ぴょう性が乏しいものが目に付きます。意図的なフェイクニュースもあれば、論文を間違った解釈で拡散していたり。どんどん真実から離れてしまう。専門家でさえ意見が分かれる問題なのです。
サイエンスにおいて真実は1つのはずです。その真実を見極める混沌とした過程が今。だから意見が分かれるのもやむを得ないし、これも科学の歴史の1ページです。後に歴史が証明してくれる、それに期待するということですね」
政治アナリストの伊藤惇夫氏が以前テレビ番組で語った発言が今、ネットで“名言”と呼ばれ、広く使われている。
「数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う」
ネット社会、SNS社会になって久しい。それが無かった時代と比較すると、触れる“情報”は何百倍にもなった。“嘘”や“デマ”もそのぶん増えただろう。いたずらに情報を信用したり、“粗雑”に解釈することは危険といえる。
『ラフ&ミュージック』。
笑いの「ラフ(laugh)」が、粗雑の「ラフ(rough)」であっては笑えない。11日に披露したように、彼は美しい「ミュージック」を持っているのに。