※写真はイメージです

 職場の上司や同僚から急にマウントを取られたり、SNSで友達のキラキラ投稿を見かけ、自分と比べて落ち込んだり……。イヤな経験に振り回されて、憂うつな気分を引きずったことがある人も多いのでは?そんなときは1ステップの切り替えアクション。不快な気分を消し去って生き方上手になろう!

ネガティブ感情は無理に抑えつけない!

 不安は膨らみやすく、イヤなことはいつまでも頭に残る……これは誰にでも経験があるはず。さらに秋から冬にかけては日照時間が減るので、気分は上がりにくくなる。

「人は悪いことを考え始めると、その考えが雪だるま式に大きくなる傾向があります。マイナス感情を引きずっていると、さらに悪い状況を招きやすいです」

 と話すのは公認心理師の大野萌子さん。ささいなことで腹を立てたり、他人の言動を悪いほうに捉えると、よりストレスがアップ。負の感情がどんどん増幅し、限界状態となれば自分でもコントロールがきかなくなり、うつなどの病気を引き起こしかねなくなる。

「毎日を朗らかに過ごすためにも、イヤな気分は早めに切り替えることが大切」(大野さん、以下同)

 大野さんいわく、てっとり早いのは行動や環境を変えること。例えば仕事で不愉快な気持ちになったら、友達と飲食を楽しんだり、ショッピングをするのもいい。このとき気をつけたいのは、深酒や散財など度を越さないこと。

 後で後悔するレベルまでやると、かえってストレスになるからだ。またマッサージもおすすめ。マッサージで身体をほぐすと、心もほぐれることは往々にしてあるという。

「やってはいけないのが、ネガティブ感情を抑えつけたり、無理に考えないようにしようとすること。考えてはいけないと思えば思うほど、思いが強固になり、さらに忘れられなくなるんです」

 では、ほかにどんな切り替え方法があるのか? 大野さんが教えてくれたケース別気持ち切り替え術をチェック!

ケース別 切り替え術【家庭編】

◆将来が漠然と不安

→→スケジュールを予定で埋めてみる!

 不安を感じるメカニズムは脳が答えを探してさまよっているから。答えが出ないから心がモヤモヤしてしまうのだ。逆にいえば“答え”や“次にやるべきこと”があれば、不安は消えていく。また時間や心に余裕がある場合も、いいようのない不安が膨らみやすい。

 不安の原因が老後資金なら、仕事を増やす、マネー講座に行くなど、とにかくアクションを起こしてみよう。目が回りそうなくらい忙しければ、予定をこなすことに意識が向き、不安から気をそらすことができる。

◆子どもにひどいことを言われた

→→「悲しい」とストレートに感情を伝えて

 ひどいことを言われた悲しさから、カッとなって「なんでそんなこと言うの!」と叱りたくなるが、これだと子ども側も怒りや悲しみが膨らみ、お互いに感情を爆発させてしまう。

 叱る代わりにおすすめなのが「そんなことを言われると悲しい」というフレーズ。自分の気持ちを相手に伝えると心を落ち着かせる効果があり、子どもにとっても、自分が言ったことを振り返るきっかけになる。

 そのうえで、「なぜそんなことを言ったか」と話し合い、言葉の裏に隠れていた子どもの感情を引き出してあげて。

◆夫から文句を言われた

→→大きなため息をつく

「味が薄い」などのひと言に腹が立ち、売り言葉に買い言葉でヒートアップ。これを避けるには深呼吸がおすすめ。人は怒りやストレスを感じると自律神経が興奮モードに入るので呼吸が浅くなり、身体はますますストレスを感じてイライラ。

 断ち切るには深呼吸がよく、特に大きくため息をついて吐くことに集中すると自律神経が整って気持ちが落ち着いていく。

 ただ、相手の前でこれ見よがしにやってしまうと、新たなトラブルの火種となるので気をつけて。怒りが弱まったら「しょうゆをかけて味を調節して」と感情を交えずに具体的な言葉を伝えて。

※写真はイメージです

ケース別 切り替え術【仕事編】

◆ミスが重なり仕事が進まない

→→香りの良いコーヒーを飲む

 他人のミスで手間が増えたりと、思いどおりに仕事が進まずイライラ……。そんなときには、アロマテラピーなど香りを用いるとリラックス効果が得られるので、気分のリセットには良い香りが効果的。

 中でもコーヒーの香りは怒りを鎮める働きがあるのでおすすめ。加えてカフェオレやソイラテなど乳製品や大豆製品が加わると、気持ちを穏やかにする脳内物質のセロトニンが増えるのでより効果的だ。

 糖分も精神的ストレスを緩和させるので、コーヒーに砂糖を加えたり、甘いお菓子をつまんだりして気分転換を。

◆夜眠れなくて心配になる

→→寝なくていい

 翌日に大切な用事があって「早く寝なければ」と思うほど緊張して眠れない……。暗い部屋の中で寝ようと必死になればなるほど、イヤなことや不安な気持ちは膨らんでいくので、いっそ部屋を明るくして一度起きてしまおう。

 眠らなくちゃと焦れば余計に興奮状態になるので、眠らないという選択をするほうが心が落ち着く。翌日も多少寝不足のほうが緊張しにくくなるので、より良いパフォーマンスを上げられるはず。

◆理不尽な仕事を頼まれた

→→頭の中で100から0まで数える

「私の状況も考えてください!」などと感情的な発言は、相手も感情的になり悪い結果を招くのでNG。「100から0まで逆に数える」方法で怒りの感情を切り替えて。

 100、99、98……と数えるにはある程度集中しないとできないため、怒りから意識が薄れて冷静になっていく。怒りが少し収まったら、できるだけ具体的に理不尽だと感じる点について伝えてみよう。

 生産的に仕事を進める方法を相談すれば、理解が得られやすくなる。

※写真はイメージです

ケース別 切り替え術【友人関係編】

◆マウンティングされたとき

→→「かわいそうな人」と思う

 夫の年収や容姿など、自分のほうがすぐれていることを主張してくるマウンティングは、「私を下に見ているのか」と悔しく感じるもの。

 こんなときはほかの誰かに「○○と言われて悔しかった、ムカついた」と言葉に出すと、すっきりしやすい。

 またマウントを取る人は満たされていない人が非常に多く、「他人から認められたい」との思いが強い、実はかわいそうな人。それがわかれば「へー」と適当に相づちを打ち、さらりとスルーできるようになるはず。

◆嫌みを言われた

→→「やめてほしい」と淡々と伝える

「あなたはダメな人だね」と自分を否定されたり、「私のほうが仕事が早い」と誰かと比べられたりすると後々になって怒りが増幅しやすい。

 負の気持ちを持ち越さないために「そんな言い方はやめて」「私のやり方なのでアドバイスは不要よ」と、自分の意思を冷静に淡々と伝えるのがベスト。

 また、短時間で何かに没頭して気持ちをスイッチするのも手。スマホゲームなどは自分の頭が“無”になりやすい。続けていると「ゲームで気持ちをスイッチ」がパターン化し、より切り替え上手に。

◆SNSでうらやましい投稿を見た

→→SNSに触れる時間を制限する

 どこに行った、何を食べた、誰と会ったなど、SNSには楽しい投稿があふれていて、自分の生活と比べて思わず悔しく思うことも。けれども最近では“SNS破産”という言葉もあり、キラキラした自分を演出するために無理をしている人も多数。

 また、発信者が“見せたい世界”を加工して見せている“作られた世界”である場合も。SNSに触れる時間を制限して、適度な距離感で捉えることが生き方上手の第一歩。

※写真はイメージです

教えてくれたのは……大野萌子さん ●公認心理師、心理カウンセラー、一般社団法人日本メンタルアップ支援機構代表理事。人間関係改善スキルを得意とする。机上の空論ではない“生きたメンタルヘルス対策”を提供。近著『1ステップで気分があがる↑気持ちのきりかえ事典』(扶桑社)が好評発売中

『1ステップで気分があがる↑気持ちのきりかえ事典』(扶桑社)※記事中の画像をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします

〈取材・文/樫野早苗〉