「わあ、懐かしい!」と思わず叫びだしてしまいそうな“昭和レトロ玩具”の数々。あなたはいくつ覚えていますか?
“Z世代”を中心に昭和おもちゃが再発見される
今、いわゆる“Z世代”を中心に「昭和レトロ」がブーム。リアルタイムな人には懐かしいけど、若い人たちには昭和のおもちゃは目新しいもの。
今も変わらず現役なものから、現代向けに進化を遂げたもの、そして惜しまれつつも生産終了したものまで……。懐かしの“昭和玩具”の今に迫ります!
変化が早い時代でも変わらない魅力を発揮
「昭和の時代のおもちゃは、息が長いものが多いんです」と、銀座の老舗玩具専門店「博品館TOY PARK」広報の堅田朋宏さん。
同店では昭和生まれの玩具を多く取り扱っており、より複雑化し続けている『ルービックキューブ』や、飛び出す黒ひげが5倍になった(!)『黒ひげ危機一発』といったように現代的なアップデートが行われているものから、パッケージも中身も変わらないマジックセットなど豊富に販売している。
「コロナ禍においては、クッキングトイやジグソーパズルなどのある程度時間をかけて取り組むおもちゃが売れる傾向でした。その中でも昭和のおもちゃをお子さまに買い与えるお客さまが多く見られました」(堅田さん)
子どもの「情報源」がおもちゃのブームを決めると堅田さん。
「昔のお子さまの情報源は、テレビアニメやマンガ雑誌、そして口コミ。つまり、一度ブームになるとそれが長く続いていたんですね。今はお子さまもネットで情報収集をするため、ブームの移り変わりが早くなる傾向があります」(堅田さん)
一瞬の“バズり”で変わるネット主導の流行の中、昭和レトロ玩具はロングセラーとして今も売れ続けている。
縁日玩具でヒーローに?昭和レトロ満足セット
紙風船にめんこ、ビー玉、コマ、型抜き……「あったあった!」と思わず声がはずむ小さいころに駄菓子店や縁日で見かけたレトロ玩具が約30種入った『昭和レトロ玩具 満足セット』を販売し、注目を集めているのがキッシーズ株式会社。昭和21年創業の縁日玩具の卸問屋「岸ゴム商店」が前身だ。
「こういう縁日玩具を扱うのはほとんどが個人や家族経営のような中小零細企業。高齢化や後継者問題で、作る人も売る人も少なくなっていく中、弊社は60人くらいで組織だってやっている唯一の会社です。後世にいろんなことを引き継がねばと、この満足セットを企画しました」(キッシーズ 細江友人さん)
これらのおもちゃは、製造のための道具が壊れて生産終了するなど、常に絶滅が危惧されている状況。数少ない国内生産品を取り扱うメーカーを中心に声をかけ集めたという。
「アナログ」なおもちゃたちは、昭和の時代に子どもだった現代の40〜60代はもちろん、特にZ世代の若者にも新鮮に受け入れられ、想定の倍以上の売れ行きを見せている。
「夏休みなどの長期休暇でお孫さんが来るタイミングに一緒に遊ぶことで『おじいちゃんがヒーローになれる』セットだといわれていますね。Z世代の若い人たちには『Tik Tokで使ってみたい』などと好評です。世代間をつなぐコミュニケーションツールとしてとても有能なのでは」(細江さん)
そうして親から子へ、そしてその子へ……と継がれていくおもちゃの世界。「懐かしい!」と「逆に新しい!」と誰しもはしゃいでしまう、昭和レトロ玩具の魅力は尽きない。
まだ買えます!昭和から続くおもちゃたち
時代に寄り添い変化しても、人々の心をつかみ続けている昭和おもちゃの数々をご紹介!
スリンキー
金属や樹脂でできたバネ状のおもちゃ、スリンキー(スプリング)。デスクに置けばペン立てやメモホルダーに。高い所から伸ばすもよし、腕にはめるもよし、はたまた階段を自力で下りることもできる。引っ張りすぎて元に戻らなくなったり、絡まっちゃったりしたのもいい思い出。星型などのバリエーションもあるが、現代でも昔日の姿のまま現役!
モーラー(くねくねつちのこ)
生きているみたいに動くCMで子どもたちの注目を集めた「モーラー」。テグスで操作する人形のおもちゃだ。小さい子どもがCMのように動かすことはかなり難しい、どちらかというとマジック寄りのアイテムで、マギー審司の“お友達”だったことも。よりペット感がリアルになった電池式の「じゃれっこモーラー」も大ヒット。※昭和レトロ玩具満足セットには「くねくねつちのこ」が同梱。
リリアン
女子にはおなじみ、簡易編み機のミニチュア版。ひもを順番に爪に引っかけていくと“リリアン(リリヤン)編み”を作ることができる。駄菓子店のベストセラー商品になり、一時期はコンビニのおもちゃコーナーに並んでいたことも。
ドラマ『スケバン刑事』では武器を持った悪人とも互角に戦える便利なアイテムであるが、こちらのリリアンはどちらかというと「編む行為」そのものが目的の平和なおもちゃ。“手芸沼”の入り口になった人も?
チエンリング
“チェーン”のようにつなげられ、“知恵”を使っていろいろなものを作れるチエンリング。ブレスレットやネックレスを作った人も多いのでは?
1950年代の発売以降、駄菓子店・玩具店・スーパー・デパートなど場所を問わずよく売れたという。素材はもともとPVC(塩化ビニール)素材だったものが、工場の変更でPS(ポリスチレン)に変わるも、割れやすさが指摘されたため割れにくくて安心なPP(ポリプロピレン)製へとアップデートされて現在に至る。
トラバルーン
「割れないシャボン玉」として大人気だった商品。チューブの中に入っているのは酢酸ビニル樹脂で、これをストローの先につけて膨らますとビニールの風船玉ができあがる。大きなものを作ったり、たくさん作ってくっつけて遊んだり……とさまざまな遊び方がある。独特の匂いが忘れられないという人も多いのでは?
懐かしい!令和に買える昭和おもちゃ
Z世代のSNSを盛り上げている、懐かしくて新しい昭和のおもちゃたち。意外にいまだに買えるものも多い。
スライム
トロトロネバネバの謎の物体、スライム。触ればヒンヤリした触感が楽しめ、無限のように伸びていく。いろんなところにこびりついてしまうためお母さんの怒りを買い、いつしかゴミだらけになり、カピカピに乾いてその生を全うしてきた。
現代はさまざまな色や香りのスライムを自由に作れるように進化。温度で色が変わるほか、キラキラのラメやビーズで“デコれる”キットもあり、小学生女子の間でちょっとしたブームになったことも。
水飲み鳥
水を入れたグラスの前に置いて揺らすと、水をひと口飲んではゆらゆら揺れる水飲み鳥。この鳥の動作の仕組みはいくつもの物理法則によって成り立っており、化学の授業の教材としても使われることがある。
発売当時、中身にはエーテルなど可燃性の液体が使われていたが、現在は難燃性のジクロロメタンが使われている。お子さまには取扱注意だが、大人になった今こそインテリアにいかが?
ドンケツゲーム・ポカポンゲーム
人形を操作し、相手をヒップアタックで倒す『ドンケツゲーム』に、相手をハンマーで叩く『ポカポンゲーム』。シンプルなのに駆け引き要素のある優れたゲーム性で、基本的な構造は変わらずに販売以来ずっとロングセラー!
どちらも相手の空振りを狙うことが基本的なセオリーだが、子どものころは連打すると勝てると思ってました(よね?)。現在はミニオンなどのキャラ物コラボも多数販売!
アメリカンクラッカー
1971年、アメリカで流行した玩具として日本にやってきた。ひもの先のボールをカチカチとぶつけて遊ぶおもちゃ。
パッチンカップ(ポッピンアイ)
カプセルトイなどで手に入れることができた合成ゴムのおもちゃで、裏返しにしてしばらくすると元に戻る反動で飛び上がる。当時は密閉できる構造だったので肌につける遊び方もあったが、現在は誤飲事故防止のため空気穴があいている。
パンチガム
「1枚いかが?」と差し出されたガムを取り出すと、爪のあたりに金属玉がクリーンヒットするといういたずらアイテム。国産のパンチガムは2000年代に製造を終了しているが、現在も国外で作られ続けている。
昔は容赦なく「痛い」と感じるパワーだったが、現在はスポンジでガードされ、より安全に配慮。痛みよりも、ガムがもらえない失望感を相手に与えることのほうがいたずらとしては悪質だと思います!!
思い出をありがとう……惜しくも生産が終了したおもちゃたち
人気があったものの、様々な事情で今はもう買うことのできない昭和おもちゃたち。なかでも代表的なものをピックアップ。
昆虫採集セット
昆虫を捕まえる……ではなく、主に「捕まえた昆虫を標本にする」ことができる科学道具セット。殺虫液と保存液に、本物の針がついた注射器(!)までセットになっており、何度となく問題視され製造販売は中止に。
ようかいけむり(おばけけむり)
指につけて指をつけたり離したりすると謎のけむり(正体はヤニのような樹脂)が出てくるアイテム。製造元の町工場のご主人の高齢化によって惜しまれながら製造終了。デッドストックは一時期フリマサイトで暴騰も。
駄菓子店の紙せっけん
1970年代の駄菓子店でよく見られた、せっけんメーカーが作っていた紙せっけん。お出かけの際のエチケットとしても、またいい香りがするのでおしゃれに目覚めた女子に大人気なアイテムだった。せっけんを削り、ひとつひとつ手作業で袋詰めされていたとか。採算の関係により今年で製造中止に。
ゲーム&ウォッチ
1980年に発売された任天堂の初となる携帯型ゲーム機。当初はサラリーマンの通勤時向けにデザインされ、ワイシャツのポケットサイズで作られたという。販売40周年の2020年には29年ぶりに新モデルが発売された。
ファミリーコンピュータ
「ファミコン」の愛称もおなじみ、全世界の子ども(大人も)をとりこにしたテレビゲーム機。2003年まで製造され、出荷台数は6千万台以上。現在も世界中で互換機が流通しており、遊べるゲームは永遠に不滅です!
取材・文/高松孟晋 撮影/齋藤周造