各アプリは恋愛や婚活などの目的ごとに特化しているというが…

 9月9日、国立社会保障・人口問題研究所が'21年の「出生動向基本調査」の結果を公表。18歳から34歳の独身者を対象とした調査では、「一生結婚するつもりはない」と答えた割合が男女共に過去最高となっている。

 一方で、夫婦を対象にした調査では'18年7月から'21年にかけて結婚した人の13・6%がマッチングアプリやSNSなどで出会ったことが判明。結婚に対する考え方や出会いの変化が如実に表れており、大きな話題となった。

累計会員数が1000万人を超えるマッチングアプリも

ここ3年で結婚した夫婦の13.6%は、インターネットサービスがきっかけと回答(※画像はイメージです)

 マッチングアプリとは、インターネットを通じて、性別を問わず不特定多数の相手とリアルで出会うことのできるサービスのこと。数年前から20~30代を中心に流行しており、累計会員数が1000万人を超えるアプリも登場している。週刊女性では、実際にアプリを使って伴侶を見つけたという30代の男性に、その経緯について話を聞いた。

「マッチングアプリを始めた当時の私は、仕事柄、新たな人間関係を望めるような環境がなく、土日休みでもなかったため、なかなか出会いのチャンスがありませんでした。そんなときに、同じ職場の同僚から“こんなアプリがあるよ”とすすめられたんです」

 男性はお試しでマッチングアプリに登録したという。

「最初は“本当に出会えるのか?”という疑問と、相手の素性がわからない不安が大きかったのですが、徐々にやりとりしていく中で特に気の合った女性と交際することになりました。アプリを始めてから1〜2年で結婚にこぎつけました」(30代男性)

 従来のマッチングアプリは恋人・友人探しが主な目的とされていた。なぜここへ来て“マッチングアプリ婚”が増えてきたのだろうか。WEBメディア『マッチングアプリ大学』で、自らの体験をもとにアプリについて解説しているライターの白崎萌さんに話を聞いた。

「最近のマッチングアプリの特徴は2つあると考えていまして、まず出会い方の多様化が挙げられます。自分でプロフィール検索をして気に入った相手にメッセージを送るだけでなく、登録したプロフィールをもとにAIがおすすめの相手を紹介してくれたり、ビデオ通話やグループで音声通話ができる機能もあって、自分に合った出会い方を選べるようになりました」

マッチングアプリによる「出会いの多様化」とは

 例えば野球観戦を趣味として登録しておけば、同じ趣味を持った相手とマッチングしやすくなる。そしてグループで通話すれば、1対1が苦手な人にとってはハードルが下がる。

「2つ目は、婚活に特化したサービスの充実ですね。本人確認などのセキュリティー面で大幅な強化が施され、迷惑ユーザーを排除する動きを活発化させるなど、安全性を強調するサービスが目立っています。そうして、ネットでの出会いに安心感を与えたうえで、従来の結婚相談所が行っていたようなサービスを導入し始めたんです。例えば、プロのカメラマンにプロフィール写真を撮ってもらったり、結婚や恋愛に関する相談を受け付けていたり。結婚相談所がオンライン化しているんです」(白崎さん)

 出会い方に多様性が生まれ、婚活向けのサービスや安全性が充実したことで、インターネットで本格的な婚活をする人が増えてきた。コロナ禍でリアルでの出会いの場が激減した影響も大きい。

「ここ2年でマッチングアプリの利用者は大幅に増加しました。リモートワークを含め、オンラインでの人間関係が普及したことで40代、50代の利用者も増えているんです。また、タレントの新山千春さんがマッチングアプリで恋人を見つけたとカミングアウトした影響も大きく、それをきっかけにアプリを始めた人も多いみたいですよ」(白崎さん)

新山は海外のアプリを使ったことや出会った彼氏がデザイナーだと明かした(本人YouTubeより)

 さまざまな状況が追い風となって増加している“マッチングアプリ婚”だが、懸念点が全くないわけではない。

マッチングアプリの恐怖体験

芸能人を使ったアプリのCMも多く、『Omiai』は女優ののんを起用(公式YouTubeより)

「性的な要求をしてきたり、怪しいサプリメントをすすめてきたり、仮想通貨への投資話を持ちかけてくるなど、本気で恋愛としての出会いを求めている人との見極めが難しいんです。もちろん、セキュリティーの強化によってある程度の規制はできるようになりましたが、100%危険を排除することはできませんから」(白崎さん)

 実際、マッチングアプリにまつわるさまざまな失敗談や恐怖体験も寄せられている。

「ネット上にあったサロンモデルの写真をプロフィールに設定していたようで、実際会ってみたら全くの別人だった」(20代男性)

「初めて会った日に飲食店に行って、お手洗いのために席を外して戻ってきたら“お会計しといたよ”って。ところが、後日届いたカードの請求書にはこの飲食店の明細が。どうやら私のカードを勝手に使用していたみたいで、すでに連絡がつかなくなっていました」(20代女性)

「初回のデートで2軒目にふらっと入ったバーがぼったくりバーでした。その女性とバーはグルで、マッチングアプリを使って出会った男性を偶然を装って連れてきていたみたいです」(40代男性)

 また、運よく結婚相手が見つかったとしても“マッチングアプリ婚”にはジレンマも。

「アプリを通じてできたパートナーを、友人や親に紹介するときに出会いのきっかけを伏せるカップルもいます。特に、親世代にはなかなか理解してもらえない、と考えている人が多いようです」(恋愛コンサルタント)

 そのような状態で、はたして婚姻関係は長続きするのだろうか……。

もちろんすれ違いなども起きるでしょうが、それはどんな形の結婚でも同じ。むしろ最近話題となる“熟年離婚”のようなケースでは、子育てを終えた後に趣味や性格の不一致が顕著となって、離婚を選ぶカップルが多いと聞きます。その点、“マッチングアプリ婚”では、趣味や性格の一致が前提となっているので、すぐに破綻してしまうようなケースは少ないでしょう」(同・恋愛コンサルタント)

 近年のブームのためマッチングアプリ婚の未来危険度は現時点では定かではない。
だが、お見合いのようなしがらみや、婚活パーティーのような敷居の高さもない分、一過性のブームで終わらず、今後の出会いのスタンダードな形になっていく可能性を秘めていそうだ。