今年上半期に生まれた子どもは38万4000人余りで、厚生労働省が把握している2000年(平成12年)以降、初めて40万人を下回ったことが分かったという。
また、9月9日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第16回出生動向調査」によると、「恋人として交際している異性がいる」「婚約者がいる」と回答した割合は、2000 年代前半をピークに男女とも低下しているのだという。
出生数については新型コロナの影響も多分にあろうが、若者たちの恋愛離れ、さらに非婚化については“出会い”がうまくいっていないということも一因といえそうだ。
「どうして相手が見つからないのかな?高望みしているワケじゃないのに。普通の人でいいんだけどなあ」
男女問わず婚活中の人からよく聞く言葉。しかし、その普通は当人が思っている以上に実はハイスペックで、出会える確率は極めて低い。
婚活女性の求める「普通の男性」は普通じゃない
婚活女性が求める「普通の男性」像はとされているものがある。アンケートを取ったというわけではなく、ネット上の声が独り歩きしたもののようだが、2020年の12月に放送された「グッとラック!」(TBS系)で紹介されており、これをまとめると、
・見た目は星野源のようなイメージで、身長165㎝以上、体重は60~80kgでジムに通っている
・学歴は大卒で、(日大・東洋大・駒沢大・専修大)以上
・年収は都内在住の場合は500万円以上、地方在住の場合は銀行や大手企業勤務
・鼻毛が出ていない・体臭がない、髪の毛は月に1~2回切る(つまりハゲはNG)、寝る前に化粧水をつける
かつてバブル時代には結婚相手の男性には、三高(高学歴、高収入、高身長)を求められた時代もあった。それにくらべたら随分、条件が低くなったと思われるかもしれない。
しかし、年収一つとっても、普通とはほど遠い。結婚適齢期であるアラサー男性で年収500万円以上を超えるのは、都内では2割、地方で1割にしか過ぎない。
統計資料を用い、上記のような男性がどれだけいるかを計算すると、日本人男性の中で「200人に1人くらいではないか」と述べるインフルエンサーもいる。
婚活女性が思い描く「普通」と「現実の普通」ではかなりかけなれていることが分かる。 そのギャップを分かりやすく教えてくれる漫画が冬野梅子氏作『普通の人でいいのに!』(『まじめな会社員』第2巻収録)。
マッチングアプリでの出会いに疲弊した33歳の主人公は、普通の男性との普通の出会いを求めるように……そこで35歳の職場の先輩と交際をスタートさせる。
しかし、先輩は、
・ブラック企業の長時間労働でジムに行く余裕がないから中年太りで、散髪もいけず、加齢と不摂生で肌荒れしている。
・年収は380万円
星野源とは似ても似つかない現実の平均的な男性の実態を知り、主人公は愕然とする。 婚活で「普通」を求めている女性は、多かれ少なかれ主人公と似たような体験をするはずだ。
婚活男性が求める「普通の女性」も婚活市場に存在しない
一方、婚活男性が求める「普通の女性」というのも、似たり寄ったり。いろいろな婚活サイトの情報などを総合すると、
・乃木坂46の誰か、とはいわないまでも乃木坂のような清楚感がある(高畑充希、水卜麻美アナの名を挙げるサイトも)
・身長は150cm~165cm
・化粧が薄い
・共働きしてくれる(ただし自分より年収が高いと尻込みする)
要はまず派手めは困り、その上で可愛いほど歓迎ということなのだろう。
また、多くの婚活男性は結婚相手にさらに2つの条件を求めている。
1つ目は家事で、とくに料理。 掃除、洗濯は家電が進化したこともあり、男性でもやりこなせるようになりつつある。でも、やはり料理は簡単には身につかないし、作るのも面倒だ。 一人暮らしだとついつい、外食やコンビニで済ましてしまい、栄養が偏りがち。そこで、愛情のこもった妻の家庭料理が食べたいという。
共働きが必須なのに、料理は作ってもらいたいというのはある意味矛盾する条件といえるだろう。
2つ目は年齢。 結婚相手には20代の女性を求めていて、せいぜい32歳までが限界だという。 これは同年代だけではなく、できるかどうかは別として、30代~50代の男性全てが結婚相手に20代女性を求めているのだ。 30歳を過ぎたら。女はアウトということらしい。
その理由は女性の出産できる年齢制限が関係している。 35歳以上が初めて出産すると高齢出産と定められ、出産のリスクが上がる。35歳までに出会って、交際、結婚、妊娠、出産を済まさないといけないので32歳が限界だというのだ。
「普通の人でいいのに!」の主人公は33歳で、とっくにその基準からは外れていた。
しかし、現実はそうはいかない。現実のデータでは多くの婚活男性の夢をくじく、厳しい結果が出ている。大手マッチングアプリとニッセイが共同で行ったアンケートによると、現実に婚活男性が20代女性と結婚できる確率は30歳前後でどんどん下がっていき、30代だと24.2%、40代では1.5%、50代が0.08%。
対象年齢を20代女性に絞っていると、ずっと結婚できないままということに……。男性も女性も、思い描く「普通」と現実の「普通」とが乖離する限り、いつまでも結婚相手が見つからないことになりそうだ。 その前にはまず「普通の人との普通の出会い」というものが幻想であることを理解する必要がある。
そして、目の前の人に向き合っていく、良さを見つけていくことから始めるしかないのかもしれない。
婚活女性が気付きはじめる
一方で、“現実を悟り始めた女性”のあるツイートも話題になっている。
「最近になって、私は非モテの男を彼氏や旦那にしなきゃいけないレベルの女であることを自覚して受け入れ始めたんだけど、非モテの男がもう少しレベル高くあって欲しい。具体的にはルックス、コミュニケーション能力、気遣いのレベルを上げて欲しい。上げていただけたら私も愛せます。お願い致します」
このツイートには「付き合って育成すればいい」「お互い様」「完成品ばかり求めるな」などの賛否両論が集まり、中には誹謗中傷にレベルの意見も寄せられる結果に。
残念ながら、SNSや掲示板の世界では、
「“普通”を求める婚活女性を嘲笑する男性」
「婚活で出会う男性に苛立つ女性」
双方がウサを晴らす場になっており、お互いに歩み寄るような雰囲気はないようだ。これでは非婚化や晩婚化、引いては出生率の低下を食い止めることはできないだろう。
それにしても、このようなケースで“普通のルックス”として引き合いに出されてしまった星野源と高畑充希も良い迷惑であったかもしれない。
たまには、スマホから目を離して、目の前にいる人と向き合ってみる。 そこから、一歩をはじめて見てはどうだろうか?