『料理レシピ本大賞inJapan』司会を務めた天野ひろゆきさん

 2014年にスタートした『料理レシピ本大賞 in Japan』。これは「多くのファンがいて、ベストセラーも多数ある料理レシピ本の、書籍としての魅力をアピールしたい」という書店員たちの思いから発足した賞だ。

 第9回の今回も、レシピ本、子ども向けの本、エッセイ、コミックなど145作品がエントリー。

2度目の大賞を受賞した料理研究家・リュウジさん

 9月6日に授賞式が行われ、受賞者が喜びのコメントを披露。料理部門の大賞に輝いたのは料理研究家・リュウジさんの『リュウジ式至高のレシピ』(ライツ社)。リュウジさんは一昨年に続いて2度目の大賞受賞となった。YouTubeでは簡単でインパクトのある“バズレシピ”も注目されるリュウジさんだが、今回は「料理研究家としていちばん出したかった」という基本のレシピを3年間の構想を経てまとめた。

「この本でより多くの人を“料理の沼”に引き込みたい」とリュウジさん。(※画像クリックでAmazonの販売ページへ移動します)

「前回の『悪魔のレシピ』は初心者向けでしたが、今回はより手間をかけて料理をしたい人向け。ハンバーグ、から揚げなど僕が思う世界一美味しい定番料理を詰めました」とコメント。

 準大賞は料理研究家Mizukiさんの『今日のごはん、これに決まり! Mizukiのレシピノート決定版!500品』(学研プラス)。Mizukiさんは毎日ブログやインスタグラムでレシピを紹介する中で、読者から寄せられる「料理がしんどい」「献立を考えるのが大変」などの声を解消できるような、すぐできるレシピを提案。

Mizukiさんは「簡単料理で浮いた時間を家族と楽しんで」(※画像クリックでAmazonの販売ページへ移動します)

 その中からえりすぐりの“神レシピ”500品を1冊にまとめた。「多くの人が求める『簡単』『時短』『節約』の背景には家族や周囲の人への思いやりがあると気づいた」と、今後も困りごとを解決するような発信を続けていきたい、と語った。

注目された親子W受賞

 料理愛好家の平野レミさんと食育インストラクター和田明日香さんの親子受賞も注目された。エッセイ賞を受賞した平野レミさんの『おいしい子育て』(ポプラ社)は、現在40代になる息子さん2人が小さいころに書いたエッセイをリニューアルした本。

『おいしい子育て』は嫁の和田さんや女優・上野樹里さんとの対談も。(※画像クリックでAmazonの販売ページへ移動します)

 育児や仕事との付き合い方、料理哲学などを綴り、オリジナルレシピも掲載。平野さんは「親が子どもにできることは、外で遊ばせて、ごはんをいっぱい食べさせて、バタンキューと寝かせてしまうこと。私もこれだけはずっとやってきました。子どもに料理をしなさいと言ったことはないけれど、息子たちは料理を作っています。親の背中を見ていたのかな」と話した。

 料理部門に入賞した和田明日香さんの『10年かかって地味ごはん。』(主婦の友社)は、見た目は地味だけれど美味しいおかずを掲載。和田さんは、結婚してから平野さんの影響で料理を楽しめるようになったと語り「家族が美味しいと言えばそれでいい、と作り続けてきた地味なごはんを紹介しています。今後も名もなき地味ごはんを愛していただけるよう、第2弾の本も制作中です」と話した。

『地味ごはん。』はレシピが話し言葉で読みやすい(※画像クリックでAmazonの販売ページへ移動します)

 授賞式の最後は実行委員長の加藤勤さんが登壇し、平野さん・和田さんの親子受賞や、土井善晴さん・光さんの共著『お味噌知る。』(世界文化社)の受賞を受けて「今回の受賞傾向はひと言でいうと『家族』。また、これまでの料理レシピ本大賞は、『時短』『簡単』などの本が強かったけれど、今年はじっくり作るレシピ本が多かった。コロナ禍に家族で過ごす時間が増え、料理にかける時間や、家族で料理する機会も増えたのだと思います。来年は10周年を迎えますので、さらに盛り上げたい」とコメント。

 今年も全国の書店で受賞作品コーナーを設けてフェアが行われる予定。著者や出版社の愛のこもったレシピ本を、書店でぜひ手に取ってみて!

<取材・文/野中真規子>