(左から)『ちむどんどん』の黒島結菜、『舞いあがれ!』の福原遥

 いよいよ最終回が近づいてきたNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』。SNS上では毎朝のように脚本にツッコミが入り、前参議院議員までもが《脚本の論理性が崩壊しています》とツイッターで酷評するなど話題に事欠かない。SNSでは《ちむどん、とっくに脱落してたので、次の朝ドラ楽しみ!》といった声も多く、次回作への期待が高まっている。

舞いあがれ!』不穏な気配

 次の朝ドラは来月3日から放送スタートする『舞いあがれ!』。主演は福原遥(24)で、舞台は東大阪と長崎の五島列島。ヒロインがパイロットを目指す物語だ。次こそ視聴者をひきつける脚本で汚名返上といきたいところだが、すでに不穏な気配が漂っているという。

「いまから1年ほど前に制作発表されたときは、脚本家は1人だけだったのですが、撮影もとうに始まった今年の6月になって突然、『脚本家を2人追加する』とNHKが発表したのです」(テレビ誌ライター、以下同)

 もともと発表されていた脚本家は桑原亮子氏。これまでに連ドラは1回しか経験したことがない。そして、今年6月に追加された脚本家は、嶋田うれ葉氏と佃良太氏の2人。NHKは「ヒロインが幅広い専門分野で活躍する姿を描くにあたり、新たにお二方に加わっていただくことになりました」と説明しているが、桑原氏が最初にこの仕事の話を受けたのは2020年初頭だ。2年半も経ってようやく専門分野が幅広いことに気がついたというのは苦しい言い訳ではないだろうか。

「制作現場に想定外のことが起こったとしか思えません。というのも、追加されたメンバーのひとりである嶋田氏は、あのいわくつきの『エール』のときにも急きょ脚本に加わっているのです」

『エール』は2020年の前期に放送された朝ドラ。主人公のモデルである作曲家の古関裕而役を窪田正孝(34)、ヒロインを二階堂ふみ(28)が演じ、新型コロナで急逝した志村けんさん(享年70)が出演していたことでも話題になったが、実は脚本家で、もめにもめた作品なのだ。

「『エール』の脚本家は『コード・ブルー』シリーズ、『ハゲタカ』などを手掛けたベテランの林宏司氏でしたが、演出家とそりが合わず異例の途中交代。そのピンチを救ったひとりが嶋田氏なのです」

 林氏の代わりに脚本を引き受けたのは、脚本家の清水友佳子氏と番組チーフ演出の吉田照幸氏、そして嶋田氏。緊急交代のあと、コロナによる収録中止や2か月半に及ぶ放送中断期間など、異例づくめの朝ドラになったが、放送は無事に終了した。『エール』のときにピンチを救ってくれた恩人である嶋田氏に今回も救いの手を求めたNHK。

 いったい次回の朝ドラに何が起きているのか。

要因に「働き方改革」

 NHKの番組制作に詳しい芸能事務所関係者に話を聞くと、どうやらNHK局内の「働き方改革」が関係しているようだ。2013年にNHKの記者だった佐戸未和さん(当時31歳)が自宅で死亡し、その後の調査で長時間労働が原因だったことが判明。これを受けてNHKは躍起になって「働き方改革」を進めてきた。

「働き方にうるさくなる前は、局内で知り合いのディレクターなんかに会うと、『今日は僕を見なかったことにしておいて。休みを消化しないと上がうるさいんで、今日は局にいないことになってるんですよ』なんて言われることもあったんですが、いまはそういう『休んだふり』もできなくなったみたいです」(前出の芸能事務所関係者、以下同)

 実際に、NHKが発行する社内誌『Network』の2019年のアンケートによると、「働き方改革の取り組みは進んでいるか」との質問に76%の人が「取り組みが進んでいる」と回答。2019年に働き方改革法が施行されたあとは、さらに厳格になっているようだ。

「朝ドラの制作現場も、昔は夜中まで収録して翌朝からまた撮影、なんてことが日常茶飯事だったのですが、いまは何かとチェックされますから。脚本家にも『働き方改革』が及んでいるのかもしれませんね」

『舞いあがれ!』のヒロインはパイロットを夢見て航空学校に入学するのだが、フライト訓練の様子や座学での授業における専門用語など、たしかに脚本の下調べに時間がかかるシーンも多い。

 ましてや桑原氏はまだ経験の浅い脚本家だ。初の朝ドラは慣れないことも多いだろうし、なにより放送中の『ちむどんどん』の脚本がSNS上でなんて言われているのか、知らないはずがない。桑原氏がプレッシャーに押しつぶされそうになっているのは想像に難くない。

「『エール』のときのように制作陣と脚本家がもめているという話は聞こえてきていませんので、プレッシャーなどから過重労働になりがちな桑原氏の負担を軽くするために、手間のかかる週の脚本をピンチヒッターの2人が分担しているんじゃないかと思います」

 ちなみに、桑原氏と一緒にピンチヒッターとして途中参加した佃良太氏は、次世代の脚本家を育てるためにNHKが開催している「創作テレビドラマ大賞」で大賞に選ばれ、去年初めて自分の作品がNHKでドラマ化された新人脚本家だ。

 朝ドラ『舞いあがれ!』は、この2人の力を借りて無事に舞いあがることができるのか。注目の第1回放送まで1週間を切った。

NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』
NHK総合 月~土 8:00~8:15、12:45~13:00
(土曜は一週間の振り返りを放送)
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/chimudondon/
 
5月上旬、スーパーのレジで寄り添いながらお会計をする黒島と高良

 

高良とスーパーに向かう足取りは軽く、黒島はウキウキした様子だった

 

杏の自宅で料理をしたあと、庭でくつろぐ黒島結菜(本人YouTubeより)

 

『エール』ヒロイン発表会見 撮影/週刊女性写真班