節約・貯金情報を配信するYouTubeチャンネル『倹者の流儀』を運営するくらまさん

 収入減、物価高で節約志向が強まる中、20代にして2000万円を貯めた強者がいる。しかもわずか4年半でだ。

4年半で2000万円貯めた男の快進撃

くらまさんが1000万円貯めるまでの道のり。当初は就職の失敗や、奨学金の返済などで苦労したという

 彼の名はくらまさん。日中は会社員として働き、副業で節約系ユーチューバーとして自身の生活やお金への考え方を公開している。

 会社員としての収入は月の手取り24万円ほどで、けっして高収入とはいえない金額だが、そのうちの8割近くを貯蓄に回し、生活費はわずか4万~5万円。

 そんなくらまさんも以前はお金に悩まされる生活を送っていたという。

「大学進学で奨学金を借りたので、その返済額300万円を抱えていたころは、返済に追われ、精神的につらかったですね」(くらまさん、以下同)

 卒業後、就職してからくらまさんの快進撃が始まる。週5日で働きつつ、夜間は清掃などのバイトをし、月10万円ほど収入を増やした。生活費もとことん削り、残りはすべて借金返済へ。何かに取り憑かれたかのような集中力で、入社1年で完済したのだ。

「それが成功体験になって、貯金が楽しくなっていきました。その後、ユーチューブを始め、貯金額を公開することも動画のネタにしています」

欲望を制する者は貯金を制する!

 マイナス300万円から、金融資産2000万円にまで上り詰めたくらまさん。資産を一気呵成に増やした秘訣はなんといっても日々の節約にある。

「節約として一番おすすめなのが、住居費を抑えることです。ぼくは都内在住ですが、家賃は会社の補助があり月5000円。この節約効果はすごく大きいと思います」

 次に削るのは食費。以前は1日3食だったが、節約を意識するようになってからは2食にし、ついには夕食の1食のみに。これで月4万円だった食費が1万~2万円で収まるようになった。

くらまさんの家計内訳。実に収入の75%以上を貯蓄や投資に充てている

「食事はすべて自炊。1日1食なので、タンパク質や野菜などの栄養バランスには気をつけています。食費は変動費なので、やる気次第でいくらでも下げられる」

 さらに食費を重視するのには理由がある。

「食費は日々の消費なので生活レベルに直結します。食費を抑えられるということは、生活レベルを抑えられるということ。“食”という欲望をコントロールできるか否かは、貯まるか否かに直結すると考えています。逆に欲望のコントロールができなければ、絶対に資産は増えないと確信しています

 なんともストイック……。ついポテチやスイーツを買ってしまう記者からすると、思わず引いてしまうくらいだが、「貯めたいなら生活レベルを下げなければ」とくらまさんはぴしゃり。

例えば昼食を1食我慢するだけで、1000円浮く。そこで利益が発生したと考えれば、ゴールに一歩近づくのです。お金を貯めたいなら『ちょっとぐらいいいや』という考えは捨てなければダメ」

働けば働くほどストレスが軽くなった

 20代といえばまだまだ遊びたい盛り。けれどもくらまさんは、節約を始めてからは一切遊んでいない。24時間365日を貯蓄のために過ごしている。何を目標に節約・貯金に取り組んできたのだろうか。

「一番は“心の平穏”です。人間が抱えるすべての悩みはお金に直結するものがほとんどで、お金があれば、さまざまな悩みがフラットになると思ってます。実際ぼくも、借金があるときは不安がつきまとい、仕事でストレスがかかると過剰にメンタルが傷ついていました。でも今はさらっと受け流せる。心の余裕が生まれているんです」

徹底的な倹約の方法について、動画で紹介。貯金額や月の収支も公開(『倹者の流儀』より)

 多くの人は働けば働くほどストレスを感じるが、くらまさんは逆。

「働いて貯金が増えれば増えるほど自信がつく。仕事でストレスがかかっても『俺には2000万円がある』と思うと、笑顔でいられる。心が平穏なことは一番の贅沢です」

 なんとも突き抜けたやり方と強靱な精神力は、熟年世代には「とてもまねできない」と尻込みしてしまうが……。

少ない年金だけでも暮らせる体質づくりを

「50代以降こそ絶好の貯めどきです。子育てが一段落し住宅ローンの支払いも終わりに近づいて、今後の出費の見通しがつきやすいからです。両親も貯金はほぼゼロでしたが、僕のユーチューブを見て一念発起し、数年で1000万円貯めました

 くらまさんの両親は52歳で共働き。夫婦でお互いの収入すら知らないというほどお金に無頓着だったそう。貯める意識がゼロに等しかったが、くらまさんのアドバイスもありマネープランを家族全員で真剣に話し合ったという。

50代からの資産形成についても動画で指南。子世代の協力を得るべし(写真はイメージ)

「どういう老後を迎えたいのか、そのためにいくら必要なのか……。具体的な数字が出たら、あとはその数字を達成するために日々行動するだけです。少ない生活費でも暮らせるようになれば、少ない年金額でもまかなえるとわかり、老後不安はかなり消えるはず。65歳まで働いて本気で倹約に努めれば、必ずまとまった額が貯められますよ

 マネープランを考えるときはできれば子どもを巻き込むといい。若い世代のほうがネット証券の活用法など、資産運用についての情報が豊富なことが多いからだ。また親の老後問題は子どもの問題でもある。

 以降は、くらまさんの節約の極意についてひもとく。究極の節約マインドは、すべてまねできなくとも、役立つエッセンスが詰まっているはずだ。

貯まる考え方と行動を身につけ“お金は増えて当たり前”の状態に

「貯金したいなら、生活レベルを下げるべし」とくらまさん。

自分が許せる生活レベルを下げれば、稼がないといけない金額が下がるから、心にゆとりが生まれます。つらい仕事を無理に頑張る必要もないし、少ない年金でも大丈夫。僕も生活費を極限まで下げた今、怖いものはないです(笑)」

 確かに月に5万円で十分暮らせるなら、どんなに収入が減ろうが生活が破綻する可能性は低い。そんな自信が身につく究極の節約スキルの中から、最も重要な10の極意を教えてもらった。

一度の成功体験がのちの貯金額を決める

 最初の極意は『100万円貯めると人生が変わる』。実は100万円すら貯められていない家庭は意外と多い。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」によると、60歳代の2人以上世帯で、金融資産100万円未満と答えた人は25・4%。4世帯に1世帯が当てはまる。

100万円貯金の壁を乗り越えれば、その成功体験が貯金体質をつくる(『倹者の流儀』より)

「貯められない人は、稼いだ分だけ使ってしまう人たち。脱却の足がかりとして100万円を目標にして」

こんな人は絶対貯まらない!

□ 収入が上がると、生活水準も上げてしまう
□ 自分にご褒美をするのが好き
□ 食欲や物欲のコントロールができない
□「ちょっとくらい」と不要な出費をする
□ ストレス発散の方法が買い物やドカ食い

 『100万円貯める』、これが達成できたら、貯め方がある程度わかったという証拠でもある。貯め方が身につけばあとは500万円、1000万円と目標を高くしていくだけだ。

 そのために『有り金は使うな』というマインドは重要。

「人は『100円くらいいいや』と気を緩めがちだが、それが浪費癖となり、なし崩しになってしまうんです」

 徹底した“使わないマインド”のため、くらまさん宅の家具はほぼ段ボール。

「テレビ台、パソコン台などは段ボールです。引っ越すときは捨てればいいし、荷物も減るので楽。どんどん生活レベルを落として物欲を捨て、最終的にはホームレス級に質素な生活が目標です」と話す。

家具を段ボールで代用。自ら「室内ホームレス生活」と呼ぶ快適な部屋(『倹者の流儀』より)

 どうしても使ってしまう人が特に気をつけてほしいのが、『見栄の張り合いに巻き込まれるな』ということ。経済は人の見栄を刺激して、消費を促している。人よりいい服、いい家、いい食べ物、さらには年収まで、人と比べて一喜一憂していないだろうか。

「見栄を張り続けるのは青天井で、無尽蔵にお金と時間が奪われます。旅行好きな知人が、インスタに写真を載せたいという理由だけで、何百万円のリボ払いの借金がある状態でヨーロッパやアメリカに行っていました。他人の目を気にせず、自分の物差しでお金を使ってください」

お金をムダにするのは命をムダにすること

 お金を得るには仕事をしなければいけない。時間を使い、命を燃やして仕事に励んだ対価がお金だ。つまり『お金=時間=命』に等しいとくらまさんは言う。

「命に等しいからこそ、大切に使ってほしいです。お金をムダにするのは、命をムダにするのと同じだと思っています」

 またお金の使い方には人間性が表れるとも話す。

『お金と向き合うことは人生と向き合うこと』……堅実な人生は堅実な金銭感覚が土台となる。貯蓄がないということは、人生を軌道修正する必要があるという証拠だ。

「お金について考えることは、人生と向き合うこととイコールなんです」

 お金の使い方を客観視するには、家計簿は必須だ。借金返済を意識したときから、くらまさんは家計簿をつけ始め、現在も続けている。

『家計簿はお金の健康診断』だと思っています。家計簿を毎月つけていると、ここは絞れた、ここはダメだったとか、変化に気づくはず。風邪をひくときは、寒気がするなど身体がサインを発するように、家計簿を見ていると浪費し始める前兆がわかるんです」

 気づいたらすぐにブレーキをかけることで、健全な家計をキープすることができる。

健康も家計も害する嗜好品は買わない

「僕の資産形成の方法は、投資で一発逆転を狙うとかではなく、確実な一歩を積み重ねること。『当たり前のことを当たり前のようにやる』という気持ちで、積み重ねてきた結果が2000万円。ただ働いて、ただ使わなかっただけ。特別な能力や行動は一切必要ないんです」

「お酒はやめました」とくらまさん。理由は貯金も健康もすり減るから(写真はイメージ)

 お金と付き合ううえでくらまさんが気をつけていることがある。それは『ムダな税金は払うな』ということ。

「たばこ、酒、ギャンブル、宝くじ……これらはすべて特有の課税がされているので手を出しません。車も自動車税がかかるので持つつもりはない。生活に必須なものではないので税率も高いですしね」

 また『借金は死んでもしない』というのもポリシー。ローンはもちろんのこと、リボ払いはもってのほかだ。

「借金して何かを買うのは、自分の未来を前借り=命の前借りをしているようなもの」 大きな買い物をするとしても自分の資産で買える範囲に納めてほしいと話す。

収入が上がっても生活レベルは上げない

 そして最後の極意は『貯金は割合で決める』ということ。今はまだ20代。今後は年収が増えることも予想されるが、年収が増えても生活レベルを変えるつもりはない。

「貯金を金額で決めていると、収入が増えればそれだけ使えるお金も増えてしまいます。すると生活レベルも上がり、計画的な貯金はできない」

 くらまさんがおすすめする貯蓄の割合は最低でも10%。というのも平均的な生涯賃金は2億円といわれ、その10%を貯蓄に回し続ければ、2000万円が貯められるからだ。月収20万円が25万円に増えたとしても、常に10%を貯蓄すれば老後までに2000万円の資金が確保できる計算なのだ。

寝る間を惜しんで働かなくても貯金が増える。「節約は効率的な副業」(『倹者の流儀』より)

 ストイックな節約・貯金の極意ばかりだが、くらまさんは挫折したり嫌気がさすことはないのだろうか?

「増えた貯金残高を見るとハイになってやる気が湧いてくるので、やめたいと思ったことはないですね。倹約は、やればすぐに結果に結びつくので、やり始めると面白くなると思います」

 老後資産の目標額といわれる2000万円を達成したくらまさん。もう貯金は十分なのでは?

「少しペースを緩めるかもしれませんが、目標は5000万円なので、もうちょっと頑張ります」とにっこり。夢へと向かう快進撃はまだまだ続きそうだ。

50代からでも老後資金は貯められる!
くらま流 節約・貯蓄の極意

一、 100万円貯めると人生が変わる
二、 有り金は使うな
三、 見栄の張り合いに巻き込まれるな
四、 お金=時間=命
五、 お金と向き合うことは人生と向き合うこと
六、 家計簿はお金の健康診断
七、 当たり前のことを当たり前のようにやる
八、 ムダな税金は払うな
九、 借金は死んでもしない
十、 貯金は割合で決める

教えてくれたのは……

くらまさん
節約・貯金情報を配信するYouTubeチャンネル『倹者の流儀』を運営。9月末にはくらま流極意が詰まった『すごい貯蓄 最速で1000万円貯めてFIREも目指せる!』(KADOKAWA)を上梓。

取材・文/樫野早苗