「それでは聞いてください、『チグハグ』」
♪チ、チ、チ、チ、チ、チ、チグハグ
K-POPに寄せず、あえて昭和アイドル風
たとえば最近身の回りで起こったちょっとした「チグハグ」失敗、恥ずかしエピソードを語り、冒頭のような曲フリとともにダンス動画を投稿するーー。
昨年結成の7人組ボーイズグループTHE SUPER FRUITが8月にリリースしたデビューシングル『チグハグ』を使用したダンス動画がTikTok上で大量投稿され大バズり中。TikTokでの「#チグハグ」の総視聴回数が6億回を突破し、配信チャートでも1位を獲得している。
冒頭で紹介した曲の出だし、さらに一度聞いたらすぐ覚えられるようなサビのキャッチーさ。わかりやすさばかりでなく、この曲を歌うTHE SUPER FRUIT、通称“スパフル”のメンバーもまたインパクトがある。やや中世的なルックス、メンバーカラーで分けられたセーラーの衣装が「昭和ボーイズアイドル」を思い起こされ、おしゃれなのか懐かしいのか混乱するほどだ。
「ある意味、ものすごくダサいと思われるかもしれません(笑)」
と、あるテレビ誌記者は笑いながら続ける。
「初見では昭和アイドルのパロディグループのように見えちゃう人もいるかもしれません。もしくはデビュー当時のSMAPのような(笑)。令和ではほぼ見かけなくなってしまった、キラキラカラフルな“古き良き”男子アイドル像がそこにありました」
しかし日本国内ではジャニーズ事務所をはじめ、ボーイズアイドルたちはK-POP人気を意識しているのか、ルックスだけでなく楽曲もK-POPに“寄せて”いる傾向がある。
「ルックスもパフォーマンスも似てきているので、新しいグループが出てきたときに、ジャニーズなのか、ほかの事務所のグループなのか、はたまたK-POPグループなのか、見分けがつかないという声も少なくない気がします」(前出テレビ誌記者)
そんな中「ベタ」なアイドルの登場だ。
古臭いように見えて実は新鮮
スパフルは、昭和アイドルをリアルタイムで知っている世代にはどこか懐かしく、若い世代にとっては新鮮に映る存在なのかもしれない。
「髪型や笑顔の作り方などのルックスにも引き込まれますが、『チグハグ』という曲のキャッチーさが本当に強いんです」
というのは、ある芸能関係者。
「近年、本当に売れる曲は、CD売上ではなくTikTokをはじめとした動画投稿などでの浸透度の高さです。過去の曲が突然掘り起こされて再評価されるなど計算できない現象が起こっています。TikTokでのハメ込みにぴったりすぎるフレーズやダンスは、出だしもサビも10秒というのが相性バツグンであることは間違いない。
そこに『チグハグ』という誰でもある程度引用できる曲振り、ダンス以外にもマネしたくなる要素もある。一見、古臭いように見えて実は最新の発想なのかもしれません」
さらに、こんな背景も推察する。
「スパフルの先輩的なボーイズグループにCUBERSがいます。所属事務所が新たに設立したプロダクションの第1弾アーティストということになりますが、CUBERSのメンバー・末吉9太郎はもともとハロー!プロジェクトなどのアイドルも大好きで、アイドルファンのあるあるネタなど動画投稿して話題を集めています。アイドル好きに刺さるようなツボがわかっているのかもしれませんね」(同)
地上波の番組などへの登場も増え、いよいよ広くお茶の間に浸透するかもしれない“スパフル”。2022年後半の目玉になる(なっている?)可能性は高い。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉