鉄道系YouTuberスーツが普通運転免許を取得したその日に返納したことで炎上している。ネットでは「1日で免許返納は草過ぎる」と批判がある一方、「免許取ってそれをどう使おうと本人の自由」という擁護派も多くて、賛否両論が巻き起こっている。即日免許返納の顛末と、YouTuberスーツの人となりを追ってみた。
自動車免許取得動画の結末がまさかの即日返納
登録者100万人が目前に迫る人気YouTuberスーツのメインチャンネル「スーツ交通」で、スーツが大阪から豊中自動車教習所に通う様子を動画アップしたのは今年7月。
教習所に通うために、わざわざ羽田から伊丹まで飛行機通学をしていた。スーツ曰く、受験勉強以上の約3倍ぐらい熱心に勉強したという。約1か月の教習所通いのプロセスを約2時間の長尺動画で描いていた。
10月1日にはいよいよ免許取得編が公開されたが、一発合格で運転免許を取得したものの、自動車を運転するうちにスーツは
「みんな交通ルールを守って運転していると想像していたが、実際には道路は無法地帯」
「ルールを遵守していない人が多い状況において、どのように事故を起こさない運転をするかが重要」
「何トンもある乗り物を時速60㎞で運転する資格を持つ人はプロフェッショナルでなければならない」
「急な飛び出しなどの可能性を予見できなければ、本来自動車の運転は認められないのではないか」
と考え、記念に一度だけ運転をすると、すぐ運転免許を試験場に届けて返納。おそらく日本で一番早く運転免許を返納した人になるということ。
スーツは動画の後半で、パンチで穴を開けた免許証を公開し、裏面には取得した日と同じ日付で「申請による取り消し」と書かれていた。
しかし、1日で免許返納の情報がSNSで拡散すると、動画で免許取得にエールを送る教習所の先生達に「先生に申し訳ないと思わないのか」「運転しないなら最初から免許をとるな!」という批判が殺到した。
スーツ本人は教習所の動画で公言していた通り、「実際に自動車を運転することで、真の意味での交通安全を理解すること」が目的であり、交通安全することで先生達の教えは活かされていると主張した。
アンチファンだけでなく、元々のファンも戸惑いがあったようだ。「運転しないのはともかく、免許返納までしなくてもいいんじゃない?」「免許返納する理由が分からない」という声も聞こえた。
スーツは元祖鉄道系YouTuberで、横浜国立大学卒の学歴エリート
スーツこと藤田裕人(ふじたひろと)氏は24歳。
親子2代の鉄道マニア。職務乗車証があればJRの乗車が乗り放題になることから、JR職員になることを夢見て、鉄道マニアの生徒が多いといわれている岩倉高等学校運輸科に進学。
ところが、JR東日本の試験にまさかの不合格となり、横浜国立大学へ進学した(2021年9月に卒業)。大学時代からYouTubeで鉄道に関する情報を発信し、メインチャンネルの登録者数は97.8万人でもうすぐ100万人突破を目指す勢いだ。
大学進学当初は友達がいなかったといい、ボッチ系YouTuberのはしりでもある。本人の弁では、年収は5,000万円だという。
スーツには過去にも炎上騒ぎが起きている。視聴者がツイートで「撮り鉄学生が必ず1度は親に言われたであろう発言『そんなもの、他の人が撮った写真を見ればそれでいいだろ』」
スーツはその発言に「もしそう言われたら、じゃあ他人の子どもを公園で眺めていればいいのに、なぜ自分を産んだのかと問いただすといいと思います」と返信した。
この発言に、鉄道に興味のない人から「子どもとモノを一緒にするのか?」「親が子どもを大事に思っているか分かっていない」という批判が殺到。自身のYouTube動画でこのように反論している。
「頼んでもいないのに勝手に生みやがってこんなクソつまらない人生生まれてこなければ良かった」と子どもが言った場合、親は本質的な反論は絶対にすることができない。自分の都合でするという意味では子作り・子育てと趣味は同じ。写真は消去できるが子どもは消去できないというが、撮り鉄にとっての(写真含めた)思い出だって消去や撮り直しはできない、と。
言葉の表面だけをなぞっただけでは誤解する人も多いが、YouTube動画をじっくり視聴すれば、熱っぽく真摯なスーツの言葉の真意はある程度理解できよう。
YouTube歴が長く既にアンチ耐性に強い
初めての著書『神と呼ばれる鉄道YouTuber スーツの素顔』では「私のことが嫌いな人は、かなり多くいるだろうと思っています」と語る。スーツ自身がYouTuberが嫌いだったので、嫌いな人の気持ちがよく分かるという。
スーツはアンチコメントの1つ1つを丁寧に読み、さらにネット掲示版「5チャンネル」に集まるアンチコメントもチェックする。アンチの人の方が動画を隅々まで見ており、改善点が分かる教材になるからだ。
当初こそアンチコメントに対して気に病んでいたものの、収益が上がるに連れて悩みは解決していったという。「チャンネル運営が軌道に乗ってくる喜びは、まさに天にも昇るほど」だと語った。収益が入る喜びに対して、アンチコメントなどなんともないということか。
スーツは「見たい」「乗りたい」「やりたい」と思ったことは、どんなことでも
たとえ批判があってもやり抜く心構えなのだろう。
運転免許の即日返納に対して、「自分も運転が苦手で返納したいと思いながらできなかった。見本にしたい」「日本の道路は無法地帯という問題提起に共感できる」「免許返納した方がいいという運転をする人は多い」など共感する意見も多かった。
即日返納の奇抜さにばかり目がいくが、スーツが言いたかったことの本質を掴んでいる声も多くあった。
スーツの行動は日本の交通事情に一石を投じるだろうか?