人気沸騰の5人組のYouTuber、コムドット。そのリーダーであるやまとが、今見据えているものとは?(撮影:長田慶)/東洋経済オンライン

「本当は政治家になりたかったんです。今はもうまったくですが。日本を変える方法は政治だけじゃない。違う角度から変えにいきます」

 そう語るのは、コムドットのリーダーのやまと。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 コムドットは2018年に結成した5人組のYouTuber。モデルなどとしても活動を広げ、2021年12月に発売した写真集は芸能人らを一気に抜き去り、男性歴代1位を記録。雑誌の表紙を続々と飾り、CMや地上波での冠番組が始まるなど、ネットの枠を超えて一大ムーブメントを巻き起こしている。

「リアルに夢をかなえる姿や、世の中の理不尽と戦う姿勢を見てもらいたい」

 自他ともに認める「戦略家」であり、自らを「革命家」とも称するやまとに、さらなる挑戦への思いを語ってもらった。

夢や目標数値をあえて宣言してきた理由

 コムドットが始動したのは、今から4年前の2018年10月1日。当時やまとは19歳で、大学在学中だった。中学校のバスケットボール部出身の幼なじみ5人で結成し、「地元ノリを全国へ」というスローガンを掲げ、活動を開始。

 日常を切り取ることや自分たちが素直に楽しむことを前面に打ち出した「24時間ドロケイ」「カラオケドライブ」「クレジットカードの旅」 などの動画で、人気を着実に積み上げていった。

(写真提供:コムドット)/東洋経済オンライン

 結成当時、将来なりたい職業のランキングでYouTuberが上位になるなど、すでに市場は群雄割拠の状態だった。

「今から、無名のYouTuberが人気を得るのは不可能」。多くの人がそう思う中、コムドットは“新世代のYouTuber”として、瞬く間に登録者数を積み上げていった。

「僕たちは失うものがなかったので、グループの目標や夢を最初から堂々と宣言しました。表だって何かを公言したり、外に向けて夢を宣言することが日本人は苦手で、言わない人が多い。そうしたことが、ほかのYouTuberよりもわかりやすかったんだと思います」

 例えば、CMに出演したいと思ったら、1人で静かに願うだけでなく、日頃から「CMに出たい」と周囲に公言し、SNSでも発信する。次第に「頑張れ、いつかできたらいいね」と共感してくれる人が現れ、実現したときには、多くの人と達成の喜びをわかちあうことができる。

「僕たちはやりたいこと、夢、目標を宣言する集団なんです。努力する姿を隠すことなく、リアルなエンターテインメント化したことが、コムドットの現在につながったんじゃないかと思います」

自信家のやまとを育てた、母親の教育

 とくにやまとは、「ビッグマウス」ぶりを発揮、大胆な目標を発信し続けていた。

 チャンネル登録者数が50万人に到達したときには、ある決意をTwitterに投稿した。

【宣戦布告】 全YouTuberに告ぐ コムドットが通るから道をあけろ、俺らが日本を獲る

 炎上することも覚悟で、夢から逃げられない状況に自分たちを追い込んだ。謙虚が美徳とされる日本において、目標を公言し続ける精神力の強さはどこから生まれてきたのか。

(撮影:長田慶)/東洋経済オンライン

「何かを宣言して挑戦することへの抵抗感をなくしてくれたのは、母の影響が大きいです。小学校のころからいろんな経験をさせてもらいました。例えば小学生からずっと英検を受けさせられていて、高2で準1級を取ったんですが、無限に挑戦の海に突っ込まれてきた感覚です。

 やってできないのは当たり前で、何ができなかったかを確認して、またチャレンジする、その繰り返しです。その経験は自己肯定感を育てるのにベストだったと思っていて、壮大なチャレンジ精神が育ちましたよね」

 幼少期の原体験がなかったら、こんな自信家には育っていなかった、とやまとは振り返る。

“チームのために”コムドット最大の危機を乗り越えて

 しかし、そんなやまとにも自信が揺らぎかねない、大きな逆境の瞬間もあった。

「YouTubeを始めた当初は、自信満々に“敵無し”だと、絶対に売れると思ってたんです。けど、そう甘くはなくて。僕は、地元の友達を日本一かっこいいと思っていてコムドットを結成したわけですが、この業界は無名なものを(人が認める)価値に昇華して提供することって難しいんです。人からは無価値と思われているけど僕は価値を感じている。それをどうやったら世の中にも感じてもらえるかをすごく考えました」

 親や友達は応援してくれたが、無謀な挑戦と見る人もいただろう。そうした中、メンバーたちは大学を辞めたり、就職を蹴ったりして、YouTubeに人生を懸けていた。

「売れなかったら大変なことになる」

 現実的なことを考えたら恐怖に全身が覆われるような感覚があったという。

(撮影:長田慶)/東洋経済オンライン

「今振り返っても、あのときの恐怖、不安感ほど大きいものはなくて。それに比べたらその後の苦労なんかは、全然大したことないです。

 僕には(うまくいく)自信があったんですけど、つねに自信があるように振る舞って、誰も不安にさせないっていうことは、すごく意識していましたね」

 コムドットはYouTuberとして初めてTikTokを活用して、切り抜き動画からYouTubeへの流入へとつなげるなど、SNS戦略を重点的に強化していった。

 メンバーにはファッション番長、特攻隊長、バグ担当などと、それぞれの強みを打ち出し、うそのないリアルな姿を映し出すことにもこだわった。タイトル、サムネイルなど、どんな企画なら反応するのかトライ&エラーを繰り返し、毎日配信を続けてきた。

 ひたすら繰り返す中で、動画の再生数は爆発的に拡大。コムドットが2周年を迎える頃には、株式会社を設立するまでに成長。現在、やまとは代表取締役社長として社員を雇い、動画制作からアパレルブランドの運営まで、事業領域を広げている。

 会社として、いちばん大事にしている価値観は何か。

「すべてはチームのために、ということです。“ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン”。僕たちの仕事はどれも1人では完成させられないものです。メンバーも裏方もリレーみたいにつながって仕事を作り上げている。だから、すべてはチームで生んできた成果なんです。

 会社によっては、個人の成績によって給料に差が出るかもしれないけれど、うちはそういうのはないです。誰かが大きい仕事をやってきたとして、『やるじゃん、すごいじゃん』とほめたたえますが、それもすべてはチームの成果につながるわけです。演者として表に出る僕たちも、裏方も、それぞれの役割を理解して、チームのためにと取り組んでいますね」

200日連続で働く、“勝つまでやりきる根性”

 コムドットのYouTube登録者数は、2022年9月現在で364万人にまで増えた。次なる目標としては、年内400万人を公約としている。

 会社として、勝負において大切なマインドを、“勝つまでやりきる根性”だという。

 例えば現在、コムドットはYouTube動画を週に6本投稿しているが、1本完成するのに12~17時間かけているという。編集に妥協などはいっさい存在しない。

 コムドットの今にあるのは、がむしゃらさそのものだ。

 日々の生活について聞いてみると、こちらが想像する以上のハードな日々を送っていた。

(撮影:長田慶)/東洋経済オンライン

「この間数えたら、200日ぐらい連続で働いていました。まさか、と思われるかもしれないですけど、気合いで乗り越えてます。『病は気から』って言葉は本当ですよ。うちの社員で体調を崩してる人は本当にいない。部活みたいに、全員が試合に出てる感覚。

 自分が穴を開けられないという使命感や義務感がある。世間一般から見れば少しブラックかもしれませんが、僕たちは今はそういう時期。みんなやる気に燃えてますよ(笑)」

 そんな熱意あふれるメンバーを束ねるリーダーとして、意識しているのは、どんなことなのか。

「自信を持つことです。つねに圧倒的な自信を持つ。リーダーの器がチームの器を決めると思っていて。リーダーがその夢に希望を持って、どれだけワクワクしているかが重要で、自信のない素振りを見せれば、メンバーを不安にさせます。自分はどんなことがあっても堂々と振る舞い続けてきました。僕が誰かリーダーの下に付くとしたら、自信のない人には絶対付きたくないですしね」

 リーダーとしてブレない背中を見せ、メンバーの本気を引きだす。そして、無理そうなことも自信で突破させる。そういうエネルギーが集結したときのパワーの凄みをやまとは知っている。

何者でもない僕たちが泥臭くもがく姿を見せたい

「YouTuberとしての枠を広げたい」。そう語るやまとは、その言葉どおりにさまざまなメディアに活躍の場を広げている。

 2020年8月にやまとが上梓した初エッセイ本『聖域』は累計発行部数40万部のべストセラー、2021年12月に発売した『コムドット写真集 TRACE』は33万部超の売り上げで歴代男性写真集1位の記録を塗り替えている。

 そして、念願の地上波冠番組の『コムドットって何?』が今秋フジテレビでも放送される。

「コムドットは売れるべくして売れた」──今年8月に発売されたやまとの新刊『アイドル2.0』は、有言実行で夢を実現してきたコムドットのビジネス戦略やリーダー論、セルフブランディングなど、新世代のビジネス書として発売した。10代~20代のコムドットのファンだけでなく、40~50代のビジネスパーソンにも購入者が多いという。

『アイドル2.0』(講談社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

『アイドル2.0』の中で、「挑戦の象徴こそコムドットであり、何者でもない僕たちが泥臭くもがく姿が新しい時代を切り拓く」とやまとは高らかに宣言している。

 はたして、コムドットの描く未来像とはどんなものなのか。

「漫画化、映画化、テレビのゴールデンタイムで冠番組も実現したいなって思います。

 個人的には、モデルとしてパリコレの舞台にも立ちたい。注目されてるといろんな目を気にして、動きづらくなったりするのですが、プレッシャーはまったくないです。それを成功させるかどうかは僕たち次第だと思う」


(撮影:長田慶)/東洋経済オンライン

 日本を獲ると宣言するコムドットだが、その先に海外は見据えているのだろうか。

「海外で売り出すことは、まったく考えてないです。日本という市場は、向こう10年は大きいと思ってるので。来年からいろんな国に飛び回って面白い企画に挑戦していけたらとは考えていますけどね。ただ、10年後の日本は、どうなっているのかわからないですが」

「10年後の日本には、危機感しかない」

 インタビューの最後、やまとは、活気が乏しく感じられる日本への思いを語ってくれた。

「日本人は、協調性、調和性、和を重んじる。長く受け継がれてきた美徳ですが、それが過剰すぎるから、国としての勢いがなくなってしまったんじゃないか僕は感じています。それに加えて、SNSの監視の目が強くなり、人の目や発言を気にして誰も動かなくなってしまった。

 そんな時代だからこそ、動いた僕たちが目立つことができたんだと思いますが、もっといろんな業界で大胆に挑戦する人が現れたらいいなと。10年後の日本を想像したら、僕には危機感しかないです。今いる業界から、日本を変えられるキッカケを作っていこうと思います」


池田 鉄平(いけだ てっぺい)Teppei Ikeda
ライター・編集者
Jリーグ、国内、外資系のスポーツメーカー勤務を経て、ウェブメディアを中心に活動。音楽一家で育ち、アーティストとしてインディーズでアルバムリリースも経験。スポーツ、音楽、エンタメを中心に取材活動を行っている。