70歳まで働くつもりで最近、事務所を開いた会計士の佐竹さん。今までは節約を意識してこなかったと話す。
しかし、自営業になって月収が不安定になったことや、昨今の食料品や日用品などの値上げラッシュに、老後の不安を感じるようになったそう。
無駄な出費を見直しポイ活で乗り越える!
「今のうちに家計を見直し、なるべくお金がかからない仕組みを作ることが重要です。佐竹さんの場合、まずは食費を削るべきですね」と話すのは、節約アドバイザーの丸山晴美さん。
さらに「現金払いで損をしている」と指摘するのは、ポイ活に詳しい経済ジャーナリストの頼藤太希さん。
「値上げが続くこれからの時代、節約のキーワードとなるのが、購入時に得られる『還元』。国や自治体もポイントサービスを導入しており、かなりお得です。毎月かかる生活費にこそ活用してほしい」
【相談者】佐竹信之さん(仮名 59歳)
57歳の妻、大学生の娘2人との4人家族。実の母親が近くに住む。長年勤務した監査法人を早期退職し、会計事務所を立ち上げた。“いつもニコニコ現金払い”が習慣。現在の月収は平均60万円。
【佐竹家 1か月の支出】
・食費……16万円
・光熱費……4万円
・通信費……4万2000円
・雑費(生活用品、衣類、交通費含む)……5万円
・娘2人の小遣い……4万円
・レジャー費(ジム代含む)……5万7000円
・医療費……1万円
・住宅費(固定資産税・保険)……1万5300円
・教育費……12万5000円
・保険代……9000円
●平均支出……54万〜56万円
食費の節約は「外食を減らして段階的に費用を下げる」
朝夕は自宅で妻の手料理を食べるものの、お昼は外食で済ませてしまうという佐竹さん。妻や大学生の娘たちとも外食することも少なくない。
○佐竹家・月の内訳
・食材費 6万円
・外食費 10万円
週1~2回、家族または夫婦2人で外食をしている
「食費はあと8万円は下げたいですね。値上がりが続く外食は、本当に特別な日だけにとどめておきたいところ。自営になって時間の融通が利くからこそ、お昼に自宅に戻ったり、お弁当の日を設けてみましょう」(丸山さん)
値上がり対策としては、小麦粉製品よりもコスパが高いお米が主食の献立を考えるとよい。定番品はスーパーのプライベートブランド食品、業務用などを選ぼう。価格が安定している旬の野菜や豚こま肉、きのこ、卵、大豆製品もねらい目だ。とにかく買い物の回数を減らし、食材の無駄を出さないことが肝心だ。
「ネットスーパーだと在庫や予算を確認しつつ購入でき、無駄買い予防に」(丸山さん)
まとめ買いをしたら、冷凍保存がおすすめ。お肉は小分け冷凍や下味冷凍をしておくと、自炊もラク。
「ご家族で食べ歩くのが趣味なら、予算を別にするのもひとつの手。予算の範囲内でやりくりして楽しめば、十分に節約になります。皆さんで話し合ってみてください」(丸山さん)
★食費の節約・プロのアドバイス★
■当初の月の目標8万から6万円、段階的に下げよう
■スーパーの買い物は3日に1度、メモを忘れずに!
■お酒、お菓子などの嗜好品は「予算が余ったら買う」
ふるさと納税で生活必需品をゲット!
「ふるさと納税をすれば、寄付金から2000円を引いた額を住民税や所得税から控除してもらえます。これで税金を減らしつつ、生活に必要なものをもらってしまえばいいんです」(頼藤さん)
返礼品は贅沢な食材が人気のイメージだが、最近は定番野菜や日用品といった家計の足しになる品を選ぶ人も増えている。
「わが家の返礼品は、野菜、砂糖、トイレットペーパーなど、実用性重視で選んでいます。今月は寄付金額5500円の返礼品で玉ねぎ10kgが届く予定ですよ!」(丸山さん)
家計の節約のためには「買う予定があるもの」をチョイスしよう。
光熱費のポイント「古い家電は思い切って買い替え」が逆にお得
「古い家電をいくつかお使いなので、最新型に買い替えれば、毎月の支払いはもっとスマートになります」(丸山さん)
○佐竹家・月の内訳
・電気代 2万8000円
・ガス代 4000円
・水道代 8000円
家電の定格寿命は約10年。「しんきゅうさん」というサイトに、対象の家電の型番を入力すると、最新家電に替えた場合の電気代と比較することができる。佐竹さん宅の冷蔵庫と同サイズの最新型を比較したところ、年間約7000円以上もムダ払いしていることが明らかに!
家庭で消費電力の大きい冷蔵庫、照明、テレビ、エアコンは確認しておくとよい。
「家電の買い替え時は、自治体の助成制度も活用を。東京都の『東京ゼロエミポイント』は、条件しだいで商品券、LED割引券がもらえる制度。各自治体で異なるので情報は欠かさず調べて」
★光熱費の節約・プロのアドバイス★
■古い家電を新型にすれば、月約2000円の電気代節約がかなう!
■自治体が打ち出す助成制度も要チェック
■サイトで家電ごとの年間電気代を確認しよう
通信費は「家庭で通信会社を統一してお得に」
「支出を減らすなら、やはり大手キャリアからの乗り換えがおすすめ」(頼藤さん)
○佐竹家・月の内訳
・スマホ代 3万2000円(ドコモ5人家族割)
・インターネット代 1万円(J:COMでテレビ、固定電話とセット)
佐竹さんの場合、インターネットで利用しているJ:COMのスマホに乗り換えると、家族とお母さんの5人分で月額8400円になる。単純計算でも今より月2万3600円削ることができる。
逆にドコモの契約を残すかたちで、家の通信一式をかえるのも大いにアリだ。「dポイント」が貯まるうえ、通信料金の支払いにも充当できる。
「同社の格安スマホ『ahamo』に乗り換えると、さらに2000円お得」(頼藤さん)
★通信費の節約・プロのアドバイス★
■インターネットとスマホは同じ会社でそろえたほうが断然お得!
■格安スマホ乗り換えに勝るスマホ節約術はなし
■ドコモのdポイントなら支払いに連動して使える
現金払いをやめただけでガンガン貯まる!
支出を削れるところまで削ったら、ポイントを上手に使って節約を。日々の収支の見直しにも役立てて。
現金払いをクレカに変えて、ポイントで得しよう
佐竹さんは食材費を妻に毎月、現金で手渡している。夫婦で三井住友VISAカードを持っているが「使うたびに借金しているイメージで……」と、自身はほぼ使わず。電子マネーも一家は未導入だ。
「キャッシュレス決済は生活費の支払いに使えばポイントが大量にゲットできます。明細が残るので、実は家計管理もしやすいのです。マメにチェックすると、ご自身の買い物のクセもわかってきますよ」(頼藤さん)
クレジットカードは1%以上の高還元率のものに!
「例えば月の生活費30万円分を還元率1%のクレジットカードで支払うと、3000円分のポイントが貯まります。1年で合計3万6000円は大きいですよ」(頼藤さん)
初心者が手を出しやすいのは還元率の高いゴールドカードへの乗り換え。佐竹さんなら『三井住友カードゴールド(NL)』だが、年会費や付帯サービスは要確認だ。
初心者におすすめのゴールドカード
〈1〉三井住友カードゴールド(NL)
・還元率:0.5~10%
・年間100万円利用で翌年以降、年会費永年無料。年会費5500円
〈2〉JCBゴールドカード
・還元率:0.5~5.0%
・オンライン入会で初年度年会費無料。年会費1万1000円
〈3〉エポスゴールドカード
・還元率:0.5~1.25%
・招待されて会員になった場合、年会費永年無料。年会費5000円
〈4〉楽天プレミアムカード
・還元率:1.0~5.0%
・楽天市場で利用時、ポイントが最大5倍。年会費1万1000円
スマホ決済は二重取りでポイントを増やせ!
支払いアプリを使えば、暗証番号を入れたり、財布から出す煩わしさのない「スマホ決済」。「条件次第ではクレジット払いよりポイント還元率が高いのが利点」と頼藤さん。よく行くスーパーやドラッグストアなどで使える利用頻度の高いものを選んで。
支払い方法は、利用前に残高を入金する「チャージ式」と、紐づけたクレジットカードなどから支払う後払いの「ポストペイ式」がある。
「ポイントを増やすなら、ぜひともクレジットカードと連携を。それぞれのポイントを『二重取り』できるのです。利用会社によっては『三重取り』がかないます」(頼藤さん、詳細は下表参照)
ただ、ポストペイ式の場合、ポイント目当てに使いすぎてしまう人も。
「お金の管理が苦手な人は、チャージ式がおすすめ。クレジットカードからチャージできるので、ポイントの二重取りも可能です。今月分の食費分を事前入金し、その予算内に収めるように過ごすと節約もしやすいです」(頼藤さん)
おすすめのスマホ決済アプリ
〈1〉PayPay(基本還元率:0.5%)
・月30回300円以上・5万円以上利用 翌月+0.5%
・上記に加え対象3サービス利用 翌月+0.5%
合計で最大1.5%還元可能
利用できる店舗が多く、ネット通販(Yahoo!ショッピング、PayPayモール)でも使える。ソフトバンクユーザーは日曜日に還元あり。キャンペーンで大幅還元も。
〈2〉楽天ペイ(基本還元率:1.0%)
・楽天カードで楽天ペイにチャージ +0.5%
・楽天ポイントカードを提示 +1%
合計で最大2.5%還元可能
楽天ポイントを普段の支払いに使え、楽天カードをはじめ、「楽天経済圏」で使いやすい。提携サイトでのネット通販でも利用可能。還元率がアップするキャンペーンやプレゼントあり。
〈3〉d払い(基本還元率:0.5%)
・d払いの支払い方法にdカードを設定 +1%
・dポイントカードの提示 +1%
合計で最大2.5%還元可能
dポイントクラブのランクに応じてポイントが貯まりやすい。ドコモユーザーにお得な還元多数。毎週金・土の「d曜日」はネットショッピング最大4.5%還元。
〈4〉au PAY(基本還元率:0.5%)
・au PAYカードでPAYにチャージ +1%
・Pontaカードを提示 +0.5%〜1%
合計で最大2.5%還元可能
Pontaポイントが貯まる。楽天ペイの対象加盟店でも使える。3のつく日は「三太郎の日」の特典あり。
“老後のカネ不足”必至!節約習慣で貯蓄を
平均寿命が延び、老後は資金的に厳しいのが現状。今からでもできる、老後資金の増やし方を伝授!
リスクや税金の少ない積み立てはやるべき
早期退職で得た退職金や預金もある、現在59歳の佐竹さん。65歳からもらえる年金額を計算すると年約230万円、妻は年80万円だ。
「年金だけで見ると2人で月26万円なので、生活費は切り詰める必要が。70歳まで働く予定なら受け取り開始を70歳に繰り下げれば、年金額は65歳時点での1・42倍、75歳からで1・84倍になります。ただ、実際の手取りは税金や社会保険料が天引きされた額になるので、その点には気をつけて」(頼藤さん)
年金が年300万円を超えると、天引き割合は15%以上になってしまうのだ。
また、預金があっても投資経験のない50代半ば以降には「つみたてNISA」が最適。年齢の上限なく始められ、最長20年利用できる積立投資だ。
ただし、積み立てできる上限はひと月に3万3333円なので、他の積み立てと併用するのが望ましい。
NISA(少額投資非課税制度)
●一定金額範囲内の資産運用で得られた利益分が非課税になる制度
●「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類がある
●投資可能商品、利用できる金額、非課税(税金がかからない)期間がそれぞれ異なる
★おすすめは「つみたてNISA」。年齢上限がなく、年40万円までの投資の運用益を20年間非課税にできる
「自営業なら『小規模企業共済』もおすすめ。毎年節税しながら退職金を作れます」と頼藤さん。
「節約したお金は優先順位をつけて使いたいもの。限られた予算の中でお金を有効に使うためにも、欲しいものややりたいことを書き出し、優先順位をつけてみては」(丸山さん)
都心であれば佐竹さんのように車を手放したほうが節約できるし、歩くと健康にもよい。
「老後を見据え、お金のかからない趣味を見つけておくのもおすすめです」(丸山さん)
★老後資金・プロのアドバイス★
■年金だけで暮らすには、かなりの節約が必須
■働ける間に年金額を増やす「繰り下げ受給」の検討を
■老後資金の確保ならつみたてNISA、小規模企業共済がおすすめ!
教えてくれたのは……
節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。節約や貯金、運用方法など、お金にまつわる著書多数。『節約家計ノート2023』(東京新聞)10月中旬発売予定。
Money&You代表取締役、経済ジャーナリスト。講演や執筆などの活動を通し、日本人のマネーリテラシー向上を目指す。女性向けWebメディア『FP Cafe』『Mocha』やYouTubeにて『Money & You TV』を運営。
取材・文/オフィス三銃士