10月3日、福原遥が主演を務める連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK)がスタート。107作目となる朝ドラだが、いつも以上に大きな話題となっている。
「前回の『ちむどんどん』が散々でしたからね。論理性を欠いた脚本や雑な展開が批判され、ヒロインの性格にも疑問の声があがりました。時代考証の間違いも数多く指摘されています。SNSでは“#ちむどんどん反省会”がヒートアップし、悪い意味で目立ってしまいました。『舞いあがれ!』が視聴者の信頼を取り戻し、国民的番組としての復権なるかと関心が集まっています」(テレビ誌ライター)
“4度目の正直”で思わず涙
初回の平均世帯視聴率は16・3%。『ちむどんどん』の16・7%、『カムカムエヴリバディ』の16・4%を下回ったが……。
「主演の福原さんが登場するのは2週目以降ですから、心配ないと思いますよ。空に憧れてパイロットを目指すという朝ドラらしい夢のあるストーリーで、視聴者は安心して見ることができるでしょう」(同・テレビ誌ライター)
福原にとって、朝ドラ主演は長年の悲願だった。
「制作発表ではうれし涙を流していましたね。過去に朝ドラのオーディションを3度受けて、最終審査にも残れませんでした。憧れの井上真央さんが『おひさま』に出演していたこともあって朝ドラへの思いが強く、“4度目の正直”ということで思わず涙がこぼれてしまったのでしょうね」(スポーツ紙記者)
オーディションに応募した2545人の中から、見事にヒロイン岩倉舞役に選ばれた。喜んでいるのは福原だけではなく、NHKにも彼女の朝ドラ主演を歓迎する理由があるという。
「福原さんはNHKとの関わりが深いんです。'09年からEテレで放送が始まった子ども向け料理番組『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』で主人公を演じ、“まいんちゃん”としてブレイク。番組は4年続き、ローティーンの間ではカリスマ的存在となってモデルデビューもしています。
'13年からはEテレの教養バラエティー『すイエんサー』に出演。今年4月から放送された山下智久さん主演のドラマ『正直不動産』でも、主要キャストのひとりでした」(同・スポーツ紙記者)
紅白出場の可能性は?
業界では“福原遥はNHKに育てられた”と言われているほど、相思相愛だったのだ。念願の朝ドラ主演が実現したうえに、さらなる大役を任されるという話も。
「福原さんは'19年に歌手デビューしていて、今年6月にはアルバム『ハルカカナタへ』をリリース。著名なプロデューサーやアーティストが参加したオリジナル曲を歌っています。歌手としても本格的に活動していて、何より“NHKの寵児”ですから、今年の『紅白歌合戦』に出場するのではないかと噂されていますよ」(制作会社関係者)
昨年の『紅白』では、『カムカムエヴリバディ』で主演を務めた上白石萌音が歌手として出場した。
「『カムカム』とのコラボコーナーが盛大に設けられ、ドラマのストーリーや上白石さんの好感度が高かったことでいい効果が出たようです。もう一度同じ手を使おうと考えても不思議ではありません」(前出・スポーツ紙記者)
だが、実現には高いハードルがある。
「“空き”がないんですよ。今年は郷ひろみさんや桑田佳祐さん、それに小泉今日子さんや中森明菜さんの“花の82年組”が周年を迎えていて、大御所アーティストの出演が多くなる予定です。福原さんが歌手として出場するのはちょっと難しい。ゲストコーナーや審査員としての出演なら、可能性は高いでしょうね」(NHK関係者)
福原の『紅白』出場が噂される背景には、朝ドラとの切っても切れない関係がある。フリーライターの木俣冬さんに話を聞いた。
「朝ドラと『紅白』のコラボは近年始まったものではなく、例えば'96年から放送された『ふたりっ子』で演歌歌手を演じた河合美智子さんが、劇中歌『夫婦みち』で翌年の紅白歌合戦に出場しています。'86年に『はね駒』主演の斉藤由貴さんが、'92年に『ひらり』主演の石田ひかりさんが司会をしていますね」
朝ドラが紅白の救世主に!?
音楽を扱ったストーリーの朝ドラだと、『紅白』との相性がいいようだ。アイドルを目指すヒロインを描いた'13年の『あまちゃん』とのコラボは強い印象を残した。
「単純に『あまちゃん』のキャストが出演したのではなく、ドラマの延長のような世界観でコーナーを演出していました。小泉今日子さんや薬師丸ひろ子さんが歌唱したこともあって大盛り上がり。世間からの評判もよかったんです。それ以降、朝ドラと『紅白』でコラボをすることが増えたという印象がありますね」(木俣さん、以下同)
'18年の『紅白』では春スタートの『なつぞら』でヒロインを演じた広瀬すずが紅組司会を務め、放送中だった『まんぷく』の安藤サクラも登場。'20年には『エール』のモデルとなった古関裕而の楽曲を出演者が歌唱した。
「音楽の趣味嗜好が多様化したことで、最近では『紅白』に出場するアーティストのジャンルもバラバラになりました。その結果、好きなアーティストだけを見るという視聴者が増え、世帯視聴率は低下していますね」
昨年は関東地区の平均世帯視聴率が前年比6・0ポイント減の34・3%で、2部制となった'89年以降で過去最低となった。『舞いあがれ!』には、朝ドラと『紅白』両方の人気復調がひそかに期待されている。
「朝ドラはSNSなどでも放送ごとの反響が大きく、お年寄りだけでなく若い世代にもウケる強力なコンテンツです。そのキャストを『紅白』に出演させることは理にかなっていると思いますよ」
“NHKの寵児”こと福原は、『紅白』の視聴率を舞いあがらせることができるか。
木俣 冬 ライター、インタビュアー、ノベライズ作家。主な著書に『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』、ノベライズに『ちょっと思い出しただけ』『NHK連続テレビ小説なつぞら』