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 杏にマツケン、柴咲コウなど、芸能人の間で注目を集める2拠点生活。リモートの定着で一般人にも広がりを見せる一方、思いがけないアクシデントも待ち受けているようで……。『週刊女性』の読者世代が実践する、2拠点生活の現実とは!?

約3割の人が多拠点生活に「興味がある」

 コロナ禍でリモートワークが定着する中、2拠点生活を始める人が増えている。芸能界も例外ではなく、女優の杏は東京・フランスを往復する生活がスタート。また松山ケンイチと小雪、柴咲コウのように、地方に生活拠点を置き、仕事に応じて東京へ移動するタレントも少なくない。

 こうした動きは一般人の間にも広がっている。マイボイスコムが行ったインターネット調査では、2地域以上の多拠点生活に「興味がある」と答えた人は約3割。すでに行っている人の理由は「単身赴任・転勤」が最多だった。

 大阪府で暮らす山根由紀子さん(50代=以下すべて仮名)も、そのひとり。沖縄で単身赴任をしている夫のもとへ、1~2か月に1回通っては1週間ほど滞在する生活を続けている。

「南の島やリゾートでの暮らしに憧れていて。だから夫の転勤先が沖縄と聞いたときは、夢がかなう、と喜びました」(山根さん、以下同)

 しかし、子どもたちは当時、大学生と高校生。学校のことを考えれば一家での移住は困難だ。夫には単身赴任をしてもらうことにした。

「とはいえ夫の様子も気になるので、私だけ1~2か月に1回、沖縄通いをしています。家賃が結構高くて、特に那覇は大阪あたりと変わらないんじゃないかと思うほど。また離島なので、物価や光熱費も高い。プロパンガスを使っている家が多いらしく、(単身赴任中の夫は)1人暮らしなのにガス代が月4000円も請求が来ていました」

 夫の住まいは住宅街のど真ん中。憧れの「ビーチに歩いていける距離」というわけにはいかない。それでも、大自然の猛威は味わった。

「台風を甘くみていました。しょっちゅうくるし、本州より威力がすごい気がします」

 転勤と同じく、やむをえない事情で2拠点生活をする人も。神奈川県の石井美里さん(48)は月2~3回、実家のある鹿児島県へ向かう。要介護の母親の世話をしている父親をサポートするためだ。

「2拠点生活といっても実家なので、新鮮味はゼロ。目新しいのは学生時代にはなかったイオンモールぐらい」(石井さん、以下同)

 石井さんの母親は自分で歩くことができ、食事も1人でとれる。介護自体はそれほど負担に感じていない。

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「じゃあ何が大変って、とにかく遠い! ほとんど移動時間に費やしているようなもの。自宅からは羽田空港のほうが近いんですが、格安航空は成田空港に集中しているので、仕方なく成田へ。

 新幹線は高いうえに7時間はかかるのでパス。車ですか? 私は免許を持っていないし、1度、夫の運転で帰省したときは高速を使っても15時間ぐらいかかりましたね」

 格安航空とはいえ、月2~3回の帰省は費用がかさんでつらい、と石井さん。

「うちは子どもがいないし私も働いているから、まだなんとかやりくりできています。この先、母の要介護度が上がったらと思うと不安でいっぱいです。ただ、介護施設や病院などの情報は地元でなければわからないので、そこはすごく役立っていますね」

格安古民家で味わう田舎暮らしの現実

 自然の中での暮らしに憧れるものの、都心の利便性を手放すのも捨てがたい。東京都の高橋志保さん(40代)の夫は、そんな欲張りな2拠点生活を実現させるべく、山梨県にある古民家を30万円で購入した。ただし、妻の志保さんに黙って……。

「腹が立って、1週間は口をききませんでした」

 と、志保さん。それでも夫は古民家の魅力をしつこく語って聞かせ、子どもも喜んでいる。いったんは折れた志保さんが激高したのは、実際の物件を目にしてからだった。

「写真とは大違い。広々した造りをイメージしていたら、実際は10畳と8畳の部屋にダイニング、あと畑が付いていました。家の中は古くて床も壁もぼろぼろ。トイレは天井が壊れて、その隙間から青空が広がっていました」(志保さん、以下同)

 2年前まで元の家主が住んでいたとは信じられない、あばら家同然の状態だった。

「手放そうかとも思いましたが、買い手がつかないだろうと考え直し、腹をくくって修繕をしまくったんです。さすがにトイレは業者に任せましたが、できることは自分たちで何でもやる。

 すぐ草ボーボーになるので草むしりが欠かせないし、秋になれば半端じゃない量の落ち葉掃除が待っている。これに普段の家事が加わるので、田舎なのにちっとものんびり過ごせません」

 今では週末ごとに古民家で過ごすのが定番になった。ただ当然ながら、ずっと住んでいなくても光熱費や水道代の基本料金は請求される。

「家は安くても、管理や維持に本当にお金がかかると痛感しています。梅宮アンナさんが管理や維持の大変さから、辰夫さんの家を手放したという話に共感しました。それでも、東京じゃゲームばかりしている子どもが楽しそうに薪を割ったり、山で遊んだりしている。もう少し続けてみてもいいかなと思っています」

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 2拠点生活をしてみたけれど「どこにいても暮らしは変わらない」と、打ち切った人もいる。東京都の羽鳥慶子さん(40代)だ。

「私は独身で子どもはいないし、仕事もフリーランス。親もまだ元気。そんな今こそと思い、自治体の支援制度を利用して、東京・長野で2拠点生活を始めたんです。それにジム通いをしても続かないけれど、田舎だったら、自然と身体を動かす機会も増えそうかなと思って」

 2拠点生活を始める前、実践する人のSNSを見ると、出会いにあふれたキラキラした世界が広がっていた。

「正直、そこに多少は期待しました(笑)。でも、長野にいても相変わらず仕事をするのは家だし、買い物はネットで済ませるから、生活は良くも悪くも変わらない。2拠点生活を始める前は、ヨソモノはいじめられるのかな? と心配したんですが、田舎だから人にめったに出くわさない。

 結局、私のようにひきこもりがちなシングル女性の場合、どこに住んでも一緒かなあと思います」(羽鳥さん)

 実際の暮らしぶりや適性など、2拠点生活を始める前には下調べが欠かせない。支援を行っている自治体もあるので気になる人はチェックを!

【2拠点生活をしている理由】
1位 単身赴任・転勤
2位 親や祖父母の介護
3位 気分転換のため
4位 実家の近くで暮らしたい
4位 便利な生活と自然の中での暮らしを両立させたいから
4位 避暑・避寒のため
(出典:マイボイスコムの2021年調査より)