輸入小麦の価格高騰を受けてパンや麺類が大幅に値上がりするなか、“米”に注目が集まっている。なかでも、レンジで加熱するだけで炊きたてのようなご飯が食べられる“パックご飯”は、コロナ禍でまとめ買いをする人が増え、市場が拡大している注目の商品。
巣ごもり需要でも注目を集める「パックご飯」
農林水産省の調査によると、2021年のパックご飯の生産量は23万4064トンとなり、ここ10年で生産量は倍近くに増えている。
5ツ星お米マイスターの澁谷梨絵さんも、パックご飯だからこその魅力をこう語る。
「現在、日本には900品種ものお米が存在するといわれています。さらに、同じ品種でも産地が変われば味も変わります。さまざまなお米を手軽に食べ比べられるのはパックご飯ならではの魅力です」
パックご飯の利点はまだまだある。保存性や利便性の高さを評価するのはフードプロデューサーの石川範子さんだ。
「最近は添加物不使用なのに賞味期限が1年以上という商品も多く、非常食にも最適です。レンジで数分加熱すればすぐ食べられるという簡便さも素晴らしいですね。用途に合わせて量が選びやすい、冷めても美味しいなど、常備しておけば何かと重宝します」
毎日違う品種が食べられるプチ贅沢も味わえれば、家事の手間を助けてくれる便利さも兼ね備える。今回は1食150円以下の市販のパックご飯20種類をおふたりに実食してもらい、ランキングを作成。毎日の食卓に登場するにふさわしいパックご飯はどれ!?
〈採点方法〉
ランキングは、口当たりや舌触りの良さ、噛んだときの弾力などを評価した「食感」、パック特有のプラスチック臭や酸味料の香りがするかをチェックした「香り」、150円以下のなかでも毎日食卓に出し続けられる値段かを考えた「コスパ」の3項目を、それぞれ3点満点で採点。
各項目の合計点数により、ランキングを決定した。商品の価格はすべて1パックあたりのもので税込み、編集部調べ(2022年10月現在)。
【10位〜8位】手に取りやすいコンビニ商品がランクイン
〈10位〉神明 2食小分けパック北アルプスの天然水仕立てごはん
神明/110g×2 108円
【食感】0.5点【香り】0.5点【コスパ】2点 合計3点
さまざまな場面に対応する小分けパック
「利便性は二重丸ですが、小分けのお米は加工が難しいのか、後味に癖が感じられます。サラッとした食感で印象が薄い」(澁谷さん)
「小さいために香りがこもりやすく、昔ながらのパックご飯らしい味と香りがします。小食の人や、小腹がすいたときなどに最適な“110g”というサイズ感は良いですね」(石川さん)
〈9位〉ローソン コシヒカリごはん
ローソン/180g 118円
【食感】1点【香り】1点【コスパ】1.5点 合計3.5点
米ぬかっぽい香りは好き嫌いが分かれそう
「お米本来のにおいが強く、ほのかにパック臭も感じます。少し冷ませば気にならなくなり、食べやすくなります」(澁谷さん)
「極力パック臭を消すためなのか、米ぬかのような独特な香りが強烈にします。ナチュラルさを押し出したパッケージも含め、アピールの仕方はうまい商品だと感じました」(石川さん)
〈8位〉ファミマル 国内産コシヒカリごはん
ファミリーマート/180g 108円
【食感】1点【香り】1点【コスパ】2点 合計4点
ファミマのPBは“THE普通”な味わい
「コシヒカリ特有のもちもち感はありますが、上位にランクインしたもちもち系食感の商品と比べると、粒立ち、味、食感、いずれも“普通”という印象です」(澁谷さん)
「コシヒカリらしい粘り気があります。ただ、粘り気があるせいなのか米粒同士がくっついて固まりになりやすい点が惜しいですね」(石川さん)
惜しくもランク外のパックご飯
■パパッとライス こしひかり やんわか
はごろもフーズ/100g×2 131円
「程よいやわらかさを通り越し、水っぽくてべちゃべちゃの食感に」(澁谷さん)
■低温製法米のおいしいごはん
アイリスオーヤマ/180g 120円
「保温モードで炊飯器に入れっぱなしにしてしまったご飯のような味がします」(石川さん)
■国産こしひかり 分割小盛
テーブルマーク/100g×2 143円
「酸味料の酸っぱさが強いです。やはりパックを小さくすると加工が難しいのかも」(石川さん)
■TOPVALU 国産こしひかりごはん
イオン/180g 81円
「ph剤のせいで、とても酸っぱい! 会津産こしひかりの良さが感じられません」(澁谷さん)
■タニタ食堂の金芽米ごはん
東洋ライス/160g 138円
「栄養価が高い胚芽米の一種ですが、味に特徴がないのが残念。コスパもあと一歩」(澁谷さん)
■東洋水産 あったかごはん
東洋水産/200g 108円
「こもったにおいがします。ブレンド米の配合比率が記載されている点は安心できていいですね」(石川さん)
■くらし良好 ごはん
コプロ/200g 99円
「パサパサで古米っぽい。カレーなど味の濃い料理と組み合わせて食べるといいかも」(澁谷さん)
【7位〜5位】良コスパ・シンプルな味の商品がランクイン
〈7位〉7プレミアム 特別栽培米 宮城県産 ひとめぼれ
ファミリーマート/180g 108円
【食感】1.5点【香り】1.5点【コスパ】1.5点 合計4.5点
おかずの美味しさを引き立てるあっさりご飯
「ひとつひとつの粒がしっかりしています。やわらかめの食感なのに、味はさっぱり。『ひとめぼれ』という品種の特徴は強すぎません」(澁谷さん)
「炊きたてのような粒立ちの良さ! あっさりした味なので、7プレミアムから出ている味つけが濃いめのおかずとの相性が良いのでは、と思いました」(石川さん)
〈6位〉情熱価格 ふっくら仕立て おいしいご飯
ドン・キホーテ/180g 86円
【食感】1点【香り】1点【コスパ】3点 合計5点
「驚安の殿堂」の名に恥じぬ圧倒的コスパの良さ
「ドン・キホーテのPB商品。オリゴ糖で甘みがつけられていて、コンビニおにぎりのお米を彷彿とさせる味です。独特な香りで、酸味料も入っていますが、それほど気になりません」(澁谷さん)
「“炊いた米”というより、“うまく調理した米”という印象を受けます。この品質を1食100円以下で売るドンキはすごい!」(石川さん)
〈5位〉みなさまのお墨付き ごはん
西友/200g 113円
【食感】1.5点【香り】1.5点【コスパ】2.5点 合計5.5点
毎日食べるなら、シンプルなご飯で決まり
「舌触りが少しザラッとしますが、200gも入ってこのお値段、そして1年も日持ちするというのは、企業の並々ならぬ努力を感じますね」(澁谷さん)
「可もなく不可もない味ですが、量、値段、味を総合的に見たとき、もっとも日常に寄り添ってくれるご飯なのではと思いました。冷ましたほうが美味しいです」(石川さん)
【番外編】麦やこんにゃく入り! 変わり種パックご飯
■マンナンごはん
大塚食品/140g 144円
「混ぜ込んだマンナンヒカリがパサパサなので、“ご飯風”の食品を食べたいダイエッター向き」(澁谷さん)
■サトウのごはん 麦ごはん
サトウ食品/150g 147円
「国産米粒麦を30%も使用し、麦感をしっかり感じます。サトウの幅の広さはすごい!」(澁谷さん)
■へるしごはん
サラヤ/150g 138円
「大麦入りで糖質やカロリーが控えめなのはうれしいですが、酸味料の酸っぱさが気になります」(石川さん)
【4位〜2位】炊くより美味しい!? 平均以上のパックご飯
〈4位〉Happy Belly パックご飯 新潟県産こしひかり
Amazon/200g 119円
【食感】1.5点【香り】2点【コスパ】2.5点 合計6点
“甘め&やわらかめ好き”におすすめの一品
「Amazonのオリジナルブランドから発売されているパックご飯。粒は比較的に小粒で、炊いたご飯に近い印象を受けます。もちっとして、お米本来の甘さが際立っているのが特徴です」(澁谷さん)
「パッケージも新しいデザインだな、と感じます。やわらかめに炊いたご飯が好きな人におすすめしたい商品です」(石川さん)
〈3位〉越後のごはん
越後製菓/200g 104円
【食感】2点【香り】2点【コスパ】2.5点 合計6.5点
「見た目より中身で勝負」がやっぱり正解!
「小粒のお米を高い圧力で加工している影響なのか、粒が潰れて見た目は微妙……。でも、食べてみるといちばん炊飯器で炊いたご飯に近い食感で、良い意味で裏切られました!」(澁谷さん)
「加熱後の見た目はあまり良くありませんが、味はシンプルで美味しいです。商品コピーどおり、冷めても美味しさが長持ちするので、お弁当に入れても良さそう」(石川さん)
〈2位〉サトウのごはん 新潟県産コシヒカリ
サトウ食品/200g 144円
【食感】3点【香り】2点【コスパ】2点 合計7点
パックご飯の王者! どんなおかずとも相性よし
「コシヒカリにしては粒が大きく、“炊き映え”が良いです。潰れている米が少なく、これだけきれいに炊き上げられる技術は感動を覚えますね」(澁谷さん)
「若干パック臭がしますが、従来の『パックご飯=美味しくない』という印象を塗り替えた立役者だと思います。あっさりしているので誰でも食べやすく、どんなおかずにも合いそうです」(石川さん)
【1位】食べた瞬間『うまい!』と声が出る米屋のパックご飯!
〈1位〉天然水仕立て ふんわりごはん 北海道のおこめ ゆめぴりか
ウーケ/200g 124円
【食感】3点【香り】3点【コスパ】2.5点 合計8.5点
米屋のプライドが感じられるクオリティー!
「ウーケは、日本最大の精米卸販売企業・神明のグループ会社。米屋のプライドが感じられる仕上がりです。ツヤもあり粒立ちもバツグン。もちもち感が強いのに、それぞれの粒がくっつかずに独立していて素晴らしいです!」(澁谷さん)
「ひと口食べた瞬間、自然に『うまい!』と声が出ました。商品名のとおりに“ふんわり”としていて、まるでもち米のよう」(石川さん)
■もっと美味しく食べるヒント【“天地返し”で水分を飛ばすべし!】
パックご飯は、独特のパック臭と、水っぽさが気になる……という人も多いのでは?
「パックご飯は加熱すると想像以上に水分を吸ってしまうので、加熱後にパックの底からご飯をひっくり返す“天地返し”をするのがおすすめ。底にたまった水分を飛ばすと風味が良くなります。うちわなどであおぐと、より粒が立ちますよ」(石川さん)
実食を終えて
「食べ比べてみると、品種やメーカーごとの違いがよくわかりました。炊いてから1年以上、美味しさと安全性が保たれる商品を作り出す各社の技術には尊敬の念を抱きますね」(澁谷さん&石川さん)
ガチ試食判定をしてくれたのは……
テレビや雑誌などのメディアに多数出演中の、5ツ星お米マイスター。米屋として、全国各地の田んぼに足を運んで探し出した米や雑穀の販売も行う。近著に『炊飯器で一発定食』(学研プラス)がある。
NHKの人気番組『ガッテン!』において、23年間にわたり食専門のディレクターとして活躍。大反響を呼ぶヒット回を多数生み出した。科学的な視点を持ち、食材が持つ美味しさを引き出す食のスペシャリスト。
取材・文/山中千絵(清談社) 撮影/矢島泰輔