イライラ、頻尿、ホットフラッシュを「おまたカイロ」でこっそり改善!(※画像はイメージです)

 生理前に不調を来すPMS(月経前症候群)や、イライラ、ホットフラッシュなどの更年期症状があるあなた、冷えもひどいのでは?

私自身、仕事に支障が出るほどの過多月経や重い生理痛、腰痛やPMSの悩みをもち、夏でも発熱繊維の長袖Tシャツを着るほどの冷え性でした」と話すのは医師の駒形依子先生。

カイロでは身体の中心に熱が届かない

 勤務していた病院は空調温度が低く設定され、ダウンコートを着て昼食をとったことも。寒さ対策といえば、お腹や腰にカイロを貼りがちだが、

「お腹に貼れば表面は温まります。ですが皮下脂肪、内臓脂肪が断熱材のようになって子宮や腸が温まるまで時間がかかりますし、腰も骨と腸に阻まれて、身体の中心まではカイロの熱が届きません。お腹や腰にカイロを貼っても温まった実感はあまり持てませんでした」(駒形先生、以下同)

 さらに、生理用ナプキンで身体を冷やしているのではないかということに気づく。生理用の紙ナプキンには吸収した経血をゼリー状に固める吸収性ポリマーが入っているが、これは保冷剤にも使われている素材で、経血を閉じ込めた紙ナプキンは保冷剤を肌に密着させているような状態になる。

 同じ仕組みで尿を吸収する尿漏れパッドにも同様のことがいえる。これが子宮の冷えを誘発し、子宮動脈の血液が滞って熱を運べずに身体全体の冷えにつながるのだ。

子宮冷えがもたらす弊害

●子宮内膜症
●子宮筋腫
●膀胱炎
●月経前症候群(PMS)
●生理痛
●過多月経

 しかも、子宮の血行不良が続くと良性のこぶができる子宮筋腫や子宮内膜の組織が子宮の内側以外の場所にできる子宮内膜症などを引き起こす原因にもなる。“おまたに紙ナプキンで冷えるのであれば、カイロを当てれば身体が温まるのではないか”。そんなひらめきから“おまたカイロ”を実践してみると……。

「最初は温かいと感じませんでした。でも、寒いときにカイロを貼ってすぐ全身が温まるかというと、そんなことはありませんよね。身体が冷えすぎていてカイロの熱を感じなかったのだと思います」

 半信半疑ながら自分の身体で試し続けること数か月。徐々に“おまたカイロ”の効果が表れ始めた。

「身体の冷えがやわらいだことで、スーパーの冷蔵品コーナーに立つと頻繁にトイレに駆け込んでいたのがなくなり、お腹をこわさなくなりました。そして、生理が大きく変化。昼間も夜用の紙ナプキンをつけないと不安なほどだったのに、経血量が減りましたし、生理痛が軽くなって規定量以上に飲んでいた鎮痛剤を減らすこともできました」

 不調が解消される手ごたえを感じてからは、家でくつろぐときや、外出先で寒さが心配なときなど、季節を問わず“おまたカイロ”で温活を続けている。

効率よく温めることで頻尿、更年期障害改善

 冷えを解消し生理の悩みも軽減される“おまたカイロ”は、そもそもどんな仕組みで身体を温めるのだろうか。

「カイロを股間に当てるとすぐ上に粘膜があり、粘膜を温めることで膀胱や子宮、腸など骨盤内にある臓器に効率よく熱を伝えることができます。膣も子宮も血流が多い場所なので、温めることで血行が良くなれば効果てきめんといえます」

 膣は10cmほどの長さがありその先に子宮があるが、膣が温まると子宮の下の部分がまず温まる。子宮は動脈が張り巡らされたような臓器のため、一部が温まれば徐々に子宮全体が温まり、そばにある腸も温かくなる。また会陰には子宮や卵巣につながるツボがあり、温めるとお灸のような感じでツボを刺激。さらに子宮の温めにつながるのだ。

 また、“おまたカイロ”のメリットは生理トラブルの解消だけにとどまらず、実は頻尿や更年期障害の改善にも役立つ。冷えるとおしっこが近くなるのは、膀胱組織が冷えてかたくなり、膀胱に尿をためられないのが原因だが、

「カイロの熱が膀胱に伝わって本来の機能が高まり、残尿感や排尿回数の軽減が期待できます。温まると逆にトイレが近くなる人もいますが、それは一時的なものなので心配はいりません」

 一方、更年期障害は下半身を温めることで血液の流れを整えるのが肝要だ。閉経するとそれまで子宮に流れていた血液の行き場がなくなって上半身にとどまりやすくなり、全身のバランスが崩れていろいろな不調が出てくる。

 東洋医学では「気・血・水」が身体を構成する3大要素と考えられ、上半身に血液が集中すると“気”の流れが悪くなってイライラや意欲低下をまねき、“”の流れが滞って汗が噴き出すのぼせやホットフラッシュの症状が現れる。

「下半身を温めて血行が良くなれば、血液や栄養素などを運ぶ“血”が上半身を含め全身をスムーズに巡るようになり、症状の改善につながっていきます」

 実際に更年期症状が改善した患者さんの例もある。子宮内膜症の治療中にがんが発見された40代後半の女性は、子宮と卵巣を切除する手術を受けたあと、急にホットフラッシュやのぼせが始まった。しかし抗がん剤の化学療法をしているためホルモン治療ができず、“おまたカイロ”と骨盤ストレッチを続けることで改善されたという。

「カイロの温めと骨盤周辺の筋肉をほぐしたことで血流が良くなり、酸素やホルモンがきちんと運ばれるようになったと考えられます」

低コストで続けやすい病気を遠ざける温活

 女性特有の悩みに効果を発揮する“おまたカイロ”を普段の生活で試すには?

おまたカイロのやり方(イラスト・さとう遊)

「タイミングや使用時間に決まりはなく、いつでもどこでもできます。カイロの持続時間が6〜8時間なので、心地よいと思えばつけ続けてもいいです」

 熱いと感じたらカイロをお尻のほうにずらして婦人科系の不調に効く仙骨に当ててもよく、ムレやにおいが気にならなければ生理中もOK。冷えとりの度合いは、カイロをつけていて“熱さを感じない→温かい→熱い”と体感の変化が目安になる。

「身体がきちんと温まってくると、カイロがとても熱く感じられてつけていられなくなります。体調に合わせて調整しながら続けていただきたいですね。生理痛も更年期障害も本格的につらくなる前に、温活や生活習慣の見直しで悪化を防ぎましょう」

週刊女性ライターHがトライ!

極度の冷え性で手足は氷のよう。生理痛がひどく鎮痛剤が手放せない。

ゆっくりじんわり冷えがやわらぐ温もり

 つけてすぐはほんのり温かいかな?という程度だったのが、2時間くらいすると身体の中心からじわじわ熱が広がる感じに。普段はトイレで太ももやお腹に触れると冷たいのに、おまたカイロをしていると温かいことに驚いた。手足の指先もキンキンに冷たかったのが少し冷たい程度に。まだ始めて2週間なので、続けることで生理の変化も感じてみたい。

教えてくれたのは…駒形依子先生

こまがた医院院長の駒形依子先生

こまがた医院院長。“子宮が大好きすぎる産婦人科医”として、西洋医学・東洋医学の双方の視点から診療を行うほか、ブログや講演活動などを通じてセルフケア法を発信している。

<取材・文/廣瀬亮子>