松嶋菜々子の代表作となった『やまとなでしこ』

 現在放送中の朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合 月曜〜土曜 朝8時〜ほか)は福原遥演じるヒロイン・舞がパイロットを目指す物語。古くは『アテンションプリーズ』('70年 TBS系)など、昔から航空業界を舞台にしたさまざまなドラマが作られ話題となった。それぞれの世代に私だけの“空ドラマ”がきっとある─ということで全国の30代以上の女性にアンケート。あなたの推しドラマはどれ!?

【航空系ドラマランキング】1位は『スチュワーデス物語』249票

 1位は『スチュワーデス物語』('83~'84年 TBS系)。40年前のレジェンドドラマが50代以上の圧倒的な支持を得て1位に輝いた。当時人気アイドルだった堀ちえみがJALのスチュワーデス訓練生を演じ、その演技も話題に。

 教官役の風間杜夫とのスポ根的な師弟関係や、ヒール役を演じた片平なぎさの怪演など大映ドラマならではのけれん味もふんだんにちりばめられており、

「独特の演技と想像を超えるストーリー展開が癖になった」(53歳、愛媛県)、「堀ちえみのドジっぷりが面白かった」(73歳、神奈川県)、「子どものころ夢中になり、スチュワーデスに憧れた」(49歳、東京都)

 と多くの視聴者の心に今でも強いインパクトを残している。ドラマウォッチャーのカトリーヌあやこさんは、「ビンタをしたりと、今だとコンプライアンス的に問題のある描写が多々ありますが、それゆえに面白い(笑)。

 ただ、訓練の様子はものすごく丁寧に描かれており、客室乗務員の仕事とはこういうものなんだという勉強にもなりました。JAL全面協力だから可能だったディテールの細かさと物語のぶっ飛んだ部分とのギャップが魅力です」と語る。

2位『やまとなでしこ』239票

 2位は意外にも『やまとなでしこ』('00年 フジテレビ系)がランクイン。航空モノというより月9の王道ラブストーリーだが、松嶋菜々子が演じたヒロインのCA姿が印象に残っている人が多いのだろう。

「CAの制服姿はもちろん、松嶋菜々子のファッションを見るのが好きでした」(41歳、兵庫県)、「松嶋菜々子の高飛車な感じが痛快。しょぼくれた堤真一の誠実さもよかった」(53歳、熊本県)。

「松嶋さん演じる桜子は育ちが貧しくお金にものすごく執着している今でいう港区女子みたいな女性で、機内で金持ちの名刺を集め、夜な夜な合コンを繰り返す。

 ちょうど名称がスチュワーデスからキャビンアテンダントへと変わる過渡期の作品で、客室乗務員が憧れの存在からモテ女子のアイコンになったことが象徴的に表現されています。CAに関してはイメージ重視でコミカルに描かれていますが、恋愛ドラマとしては屈指の名作」(カトリーヌさん)

3位『GOOD LUCK!!』158票

 3位は木村拓哉がANAのパイロットを演じた、これぞ航空ドラマの『GOOD LUCK!!』('03年 TBS系)。

最終回の視聴率は37.6%を記録した『GOODLUCK!!』

「木村拓哉がパイロットなんてカッコよすぎてずるい」(48歳、埼玉県)、「パイロットと整備士の恋。最後のビーチのシーンが印象的」(59歳、神奈川県)などの声が。

「第1話放送後には全面協力のANAの株が上がり、翌年の就職希望者も増えたというキムタクパワーのすさまじさを見せつけられた作品。劇中ではやたらと『ぶっちゃけ』を連発してました(笑)。

 副操縦士は“コーパイ”、機体は“シップ”みたいに業界用語も頻出し、操縦を受け渡すときに交わされる『アイ・ハブ・コントロール』というフレーズがカッコいいんです。ヒロインの柴咲コウさんの職業がCAではなく整備士だったのもひとひねりあってよかった」(カトリーヌさん)

4位『おっさんずラブ-in the sky-』103票

 4位に入ったのは、これまた変化球の『おっさんずラブ-in the sky-』('19年 テレビ朝日系)。一世を風靡した前作から舞台を航空会社に変え、田中圭が客室乗務員を、吉田鋼太郎がパイロットを演じた。「男同士のピュアな恋愛事情にキュン♪」(54歳、北海道)という意見が多数で、やはりBLドラマという市場を切り開いた名作である。

『おっさんずラブ-inthesky-』では田中圭と吉田鋼太郎の恋模様が話題に

「舞台となっているのは架空の航空会社ですけど、LCCのPeachが撮影協力をしていて、ドラマ全体の色みがピンクで華やかなんですよ。田中圭のCA姿もピンクのネクタイも可愛くて、だからPeachを選んだのかと納得しました」(カトリーヌさん)

5位『NICE FLIGHT!』38票

 5位にはこの夏放送されていた『NICE FLIGHT!』('22年 テレビ朝日系)がランクイン。玉森裕太演じるJALの副操縦士と中村アン演じる管制官の恋物語を主軸にしつつ、「飛行機が飛ぶまでの大変さが理解でき、着陸するまでの様子がよくわかった」(46歳、福島県)というように空港で働くさまざまな人々の姿をリアルに描いた。

「このドラマで管制官が国家公務員だということを知りました。管制官の声に恋をするという設定も面白く、機長役が吉瀬美智子という女性パイロットなのも今どきだなと。制服を着るときにスローモーションになったり、料理をする玉森くん、洗濯をする玉森くんなど日常生活がいちいちCMっぽく撮られていて、萌え要素も満載でした」(カトリーヌさん)

 5位以下のラインナップを見ても、刑事モノ、企業モノにアイドルドラマと、ひと口に航空業界ドラマといってもその内容はバラエティーに富んでいる。

 朝ドラでもかつて『雲のじゅうたん』('76年 NHK総合)という創成期の女性パイロットを主人公にした名作があった。時代時代で必ず航空業界ドラマが作られているのは、それなりの理由があるとカトリーヌさんは分析する。

「花形であるパイロットとCAはもちろん、管制官、グランドスタッフ、税関職員と、いろいろな職業に支えられているから群像劇として描きやすい。同時にすごく頻繁に新しいものに置き換わっていく業界なんです。スチュワーデスからCAに呼び名が変わったり格安航空ができたり……というように、時代とともに業界自体が変化していく。

 景気にも敏感ですし、コロナの影響を真っ先に受けたのも航空業界でした。それゆえドラマでも描かれやすい。今は民間の宇宙ロケットも飛びはじめましたし、これからはSFではなく現実のドラマとして、宇宙を舞台にした作品が登場するかもしれません」(カトリーヌさん)

 前作の朝ドラ『ちむどんどん』がマイナス面での反響が大きかった作品だっただけに、否が応でも注目が集まる『舞いあがれ!』だが題材の選択は正しかったようだ。

「まだ序盤ですが物語がヒロインにフォーカスされているし、空への思いも凧が模型飛行機になり、人力飛行機になり、やがて本物の飛行機へと順番を踏んでいるのもいい。きちんと起承転結を描いてくれるありがたさを噛みしめています(笑)。幼なじみ役の赤楚衛二くんはもちろん、今後パイロット仲間として登場するSnow Manの目黒蓮くんにも注目。ジャニーズのパイロットの系譜が脈々と受け継がれているのはさすが! この先の展開も期待していいと思います」(カトリーヌさん)

【航空系ドラマランキング】
1位 スチュワーデス物語('83〜'84年、TBS系)249票
  出演/堀ちえみ 風間杜夫
2位 やまとなでしこ('00年、フジテレビ系)239票
  出演/松嶋菜々子 堤真一
3位 GOOD LUCK!!('03年、TBS系)158票
  出演/木村拓哉 柴咲コウ
4位 おっさんずラブ-in the sky-('19年、テレビ朝日系)103票
  出演/田中圭 吉田鋼太郎
5位 NICE FLIGHT!('22年、テレビ朝日系)38票
  出演/玉森裕太 中村アン
6位 アテンションプリーズ('06年、フジテレビ系)30票
  出演/上戸彩 錦戸亮
7位 スチュワーデス刑事('97年〜'06年、フジテレビ系)27票
  出演/財前直見 水野真紀
8位 沈まぬ太陽('16年、WOWOW)26票
  出演/上川隆也 渡部篤郎
9位 ぼくの姉キはパイロット!('87年、TBS系)25票
  出演/浅野温子 男闘呼組
10位 TOKYOエアポート〜東京空港管制保安部('12年、フジテレビ系)23票
  出演/深田恭子 佐々木希

カトリーヌあやこ●漫画家、ドラマウォッチャー。『週刊ザテレビジョン』にてイラストコラム「すちゃらかTV!」、『週刊朝日』にて「てれてれテレビ」を連載

(取材・文/蒔田陽平)

松嶋菜々子

 

松嶋菜々子と反町隆史(2018年)

 

【航空系ドラマランキング】

 

2014年9月、娘の学習塾送迎にきた松嶋菜々子と反町隆史