話題作がそろった秋ドラマで、ある異変が起きている。
「今期のゴールデン・プライムタイムの新作ドラマでは、脚本を女性が担当している作品が9つもあります。中でもフジテレビは4作品中3作品が女性脚本家で、すべてオリジナル脚本という攻めっぷりです」(テレビ誌編集者)
特に話題を集めているのが、川口春奈が主演を務める『silent』だ。
「脚本を務める生方美久さんは、昨年『フジテレビヤングシナリオ大賞』で大賞を受賞しているものの、今作が連ドラ初脚本という新人です。実績もない脚本家にオリジナルを書かせる賭けに出ましたが、これが功を奏しています」(同・テレビ誌編集者)
第4話の放送終了後の見逃し配信数は、6日間で603万回を突破。フジテレビ全番組における歴代最高記録を更新した。ドラマ事情に詳しいフリーライターの田幸和歌子さんは、フジが新人脚本家を起用した理由をこう分析する。
「ヤングシナリオ大賞は、TBS系『アンナチュラル』で知られる野木亜紀子さんや、朝ドラ『おかえりモネ』などNHKで開花した安達奈緒子さんなど、多くの才能を発掘しているにもかかわらず、代表作は他局で……というフジテレビには根付かない残念な流れが定着していました。一方で、フジテレビはどこよりも早くネットフリックスと提携するなど、デジタル戦略に力を入れています。配信でウケる女性向け作品を意識して、女性脚本家の発掘・育成に力を注ぎ始めたのでしょう」
TBSで1度はボツになった“問題作”
長澤まさみ主演の『エルピス―希望、あるいは災い―』は、TBSで1度はボツになった企画を、佐野亜裕美プロデューサーがカンテレに転職してまで実現させた意欲作だ。
「脚本家の渡辺あやさんに依頼したのは2016年。しかし警察や検察だけでなく、テレビ局などメディアのあり方にも一石を投じる作品とあり、佐野PはTBS局内で逆風にさらされ、部署異動に。どうにか映像化できないか考えていたところ、カンテレからOKが出たことで、転職をしたという経緯があります」(TBS関係者)
第2話では安倍晋三元首相の演説の映像を使用するも、見逃し配信では差し替わっているだけに、リアル視聴すべき作品だろう。
「忖度だらけの世の中と、機能していないメディアを鋭くえぐっています。作品として成立するのかもわからないまま脚本が進む中、異例中の異例の経緯で実現しました。佐野Pと渡辺さんの、今の世の中に抱いている危機感が共鳴し合い、フィクションを通して多くの人に伝播している印象を受けます」(田幸さん)
医療の問題提起を描いた『PICU』
吉沢亮主演の月9『PICU 小児集中治療室』は医療ドラマという一見、ありがちなテーマだが、ここにも意外なチャレンジが。
「描くのが難しいといわれている小児科が舞台。また地域医療としてのかかりつけ医との連携などの問題提起にもなっています。小児外科の患者たちや子どもを亡くした両親たちへの心のケアを重点的に描いた『グッド・ドクター』を手がけた金城綾香Pが、医療監修を務める日本小児救急医学会理事の浮山越史医師たちから『PICU』という題材を提案されてスタートしたドラマだけに、取材もしっかりしています」(田幸さん)
好調なドラマからフジテレビ復活の狼煙が上が!?