俳優、歌手、お笑い芸人……それぞれが自身の土俵で大一番を繰り広げる芸能界。そのなかでも、子を持つ母としての一面を仕事に生かすママタレント(以下、ママタレ)たちが戦うのは、時代の変化や突然のスキャンダルなど、さまざまな荒波が押し寄せる過酷な環境、言わば“ママタレ場所”だ。
そこで本稿では、彼女たちに敬意を表し、芸能界の“事情通たち”とともに、週刊女性独自の「新旧ママタレ番付」を作成。昭和、平成、令和と変化したママタレ像に迫る!
日本人は他人の“少しの不幸”が大好物
「現代のママタレに求められているのは、身近な安心感」と語るのは、放送作家の野呂エイシロウさんだ。
「2年ほど前までは、ひろゆきさん(45)の論破芸や、美容・仕事にストイックに取り組む田中みな実さん(35)が人気を博すはっきりとした物言いが求められた。しかし、コロナ禍を経て以降は、社会不安や物価高騰が続き、解決できない問題が山積みです。そんな現実に疲れたお茶の間の人々は、ママタレに共感や安心感を求めるようになりました」(野呂さん)
高級バッグをいくつも持つセレブママから、今は100均の商品に詳しいママタレに支持が集まる時代に変わったという。
「ファストファッションに詳しいとか、料理に失敗したとか、SNSで庶民派な一面を見せるのが令和ママタレの特徴。例えば、大食いタレントで一世を風靡したギャル曽根(36)は、自分も子どもも大食いなのでコストコにも詳しく、節約レシピのレパートリーも多い。本当は稼いでいるのかもしれませんが、そう感じさせないのが彼女の魅力になっています」(野呂さん)
時代にマッチした親近感を武器にした彼女は、新ママタレ番付の大関に据えた。そんなギャル曽根と親交が深い小倉優子(39)も、大関になりうるだけの力を備えている。
「私はママタレならぬ“ババタレ”を目指す」と、展望を語る作家の岩井志麻子さんは、ゆうこりんのママタレ力についてこう解説する。
「彼女は容姿も可憐で、しっかり者。仕事も家事も育児も完璧にこなすイメージですが、過去に2度の離婚を経験していますよね。そして日本人は、他人が抱える“少しの不幸”が大好物。シングルマザーとして子どもたちを育てるゆうこりんの姿が、共感を呼んでいるのでしょう」(岩井さん)
この“不幸”が強烈なスパイスとなり、新時代ママタレ場所の横綱に躍り出たのが、モデルで女優の佐々木希(34)だ。
「佐々木希さんの圧倒的な美貌は、文句のつけようがありません。それだけでは親近感は湧きませんが、彼女の夫といえば、多目的トイレ不倫の渡部建(50)。『あの佐々木希でさえ浮気をされるのか』と、彼女が見舞われた不幸に日本中が衝撃を受けました」(岩井さん)
さらに、出身地・秋田で培った“ヤンキー魂”も、佐々木希の強みになっていると分析。
昭和ママタレの星は誰!?
「渡部とすぐに別れるだろう、と誰もが予想しましたが、スキャンダルから2年たっても離婚していません。あまり家庭事情をオープンにするタイプではありませんが、彼女の働く姿から『アタシは自分の男を信じる』というヤンキー気質が見て取れます」(岩井さん)
愛され要素の“不幸とヤンキー魂”を兼ね備えた佐々木希に幸あれ。
一方、旧ママタレの横綱に名前が挙がったのは、西の女帝・上沼恵美子(67)だ。今でこそ共働き家庭は一般的だが、上沼が結婚した'70年代は家庭と仕事を両立する女性は少数派だった。
「彼女は間違いなく、昭和・平成を代表する最強ママタレのひとり。結婚当初は一度芸能界を引退しましたが『浪速のヤング主婦代表』として芸能界に舞い戻りました。女は家庭を守るもの、という価値観の時代に抗い、大活躍したツワモノです」(テレビディレクター)
子育てだけでなく、姑との同居も経験した上沼。浪速のヤング主婦代表はだてじゃない!
続く大関は、前出の岩井さんが「ヤンキー魂のかたまり」と絶賛するハイヒール・モモコ(58)。過去には『ハイヒールモモコ一家の夏休み』と題し、家族全員顔出しの旅番組を放送するなど、力技で家庭と仕事を両立。家族の絆を仕事に生かした、真正のヤンキーママタレだ。もうひとりの大関・三田寛子(56)はヤンキーとは程遠い梨園の妻。
「私たち世代の昭和保守派にとって、夫(八代目中村芝翫)が何度浮気をしても“芸の肥やし”と割り切って、息子たちを立派な歌舞伎役者に育て上げる姿は妻の鑑。現代の価値観には合いませんが、昭和ママタレの星ですよね」(岩井さん)
夫の不倫会見にもどっしり構えて臨む三田の姿からは、まさに名大関の風格が漂っている。
女性からの好感度なくしては、成立しにくいママタレ業。しかし新時代ママタレのなかには、好感度の低さがかえってエネルギーになるケースもある。そのひとりが、木村拓哉(49)の妻であり、Cocomi(21)とKoki,(19)の母・工藤静香(52)だ。
年齢は50代だが、ママタレとしての活動は最近になるため、新時代の番付入りとなった。
「彼女は2人の娘が芸能界デビューする前後から、SNSで精力的に発信しています。インスタのコメント欄は制限されているので好意的な文言しか公開されませんが、無法地帯のヤフーコメント欄は静香のニュースが出るたびに荒れ放題。娘の足を引っ張っているのでは、と不安になりますが、本人はハイブランドに身を包んだ自撮り写真をアップし続けています」(ネットニュースライター)
ハイパータレント一家を支えるには、アンチを凌駕する“ハートの強さ”が必要? また、芸能ジャーナリストの渡邉裕二さんは“最強ママタレ”と聞いて、元グラドルの熊田曜子(40)を思い浮かべたという。
ママタレとしての才覚とは
「不倫疑惑が報道されるまでは『ワンオペ育児がツラい』『夫が料理を残すので困っている』など、夫のモラハラをインスタに投稿して話題を集めていました。しかし、離婚協議中の現在は、タガが外れたようにかつてのセクシー路線に方向転換。アンチも多くいるので路線変更は大きな賭けですが、彼女のたくましさは群を抜いていますね」(渡邉さん)
女性に寄り添うママタレから一転、女の敵となった熊田は、これからもわが道をひた走っていくだろう。
2007年に20歳の若さで結婚、出産し、現在も4児の母として活動する元モーニング娘。の辻希美(35)。彼女は、平成期を彩った炎上女王だった。
「辻ちゃんは妊娠中にビキニを着て炎上したり、子どもの全裸をブログに載せて炎上したり、何をしても叩かれました。しかし、彼女の主な収入源はブログ。燃えてPVが伸びるほど収益が上がるシステムなので、アンチも逡巡していました。そんななか、辻一家は今年の春、推定数億円を超える大豪邸にお引っ越し。あまりの豪華さに一部では“アンチが建てた豪邸”と呼ばれているそうです」(前出・ネットニュースライター)
アンチによる炎上に屈しなかった辻ちゃんの“押し出し”が決まり手となった。
ひと口にママタレといっても、何をもって“最強”となるかは十人十色。前出の渡邉さんは、ママタレとしての才覚は「成長した子どもの姿」にも表れるのでは、と持論を話す。
「僕が理想の子育てをしていると感じるのは、元わらべの倉沢淳美(55)。彼女は現在、ドバイに住んでいるので日本での芸能活動をセーブしていますが、娘のケイナ(23)も芸能界デビューし、カナダのトロント大学で学んだSDGsを生かした活動を模索しています。
日本のタレントである母の影響とは関係なく、海外で育った娘さんが自ら道を選んだ印象があります。今回、新時代に名を連ねたママタレを母に持つ子どもたちが成長し、大人になったときに再びママタレとしての真価が問われるのかもしれません」(渡邉さん)
生き馬の目を抜く芸能界で切磋琢磨するママタレたち。『週刊女性』はこれからも、彼女たちを応援します!
芸能界ママタレ番付
【平成】
横綱 上沼恵美子(67) 元「浪速のヤング主婦代表」
大関 ハイヒール・モモコ(58) 番組で知り合った一般人の夫も子どもたちも顔出し上等
大関 三田寛子(56) 何度夫が浮気しても平気
関脇 北斗晶(55) 2010年代を席巻したママ。長男・健之介が結婚し次はババタレか
関脇 大島美幸(42) 芸人が結婚を機に、妊活・子育て・料理とママタレの王道を歩むことに
小結 君島十和子(56) お家騒動があったもののセレブママとして君臨
小結 辻希美(35) 早くに結婚したためママタレ歴はすでに15年
【令和】
横綱 佐々木希(34) 夫の不倫騒動が後を引くも佐々木の圧倒的な美貌にみな何も言えず
大関 工藤静香(52) 反感を買えば買うほど輝くダイヤモンド心臓の持ち主
大関 ギャル曽根(36) 料理が得意・子どもも大食いと、嫌われる要素がほぼなし
関脇 小倉優子(39) こりん星を爆発させ、ママタレに。バツ2のシンママになっても好感度はそのまま
関脇 熊田曜子(40) 離婚協議中で3児の母ながらグラビア仕事も続行。図太さがすごい
小結 鈴木紗理奈(45) やんちゃ系タレントだったものの、今やシンママでまっとうな意見が言えるコメンテーターに
小結 藤本美貴(37) SNSも頻繁に更新。夫とセットで使えるほんわか系ママタレとして人気
コメントしてくれたのは……
渡邉裕二(わたなべ・ゆうじ)さん
音楽・芸能ジャーナリスト。文化通信社・文化通信エンターテインメント代表取締役社長。2006年に松山千春ドラマCD『足寄より』で塚本高史と田口トモロヲを起用し、後に映画化、舞台化も果たす。最新刊は『中森明菜の真実』(MdN新書)。
岩井志麻子(いわい・しまこ)さん
1964年、岡山県生まれ。小説家。少女小説家としてデビュー後、『ぼっけえ、きょうてえ』で'99年に日本ホラー小説大賞、翌年には山本周五郎賞を受賞。『5時に夢中!』(TOKYO MX)などでコメンテーターとしても活躍。
野呂エイシロウ(のろ・えいしろう)さん
1967年生まれ。出版社を経て、26歳のとき日本テレビ『天才たけしの元気が出るテレビ』の放送作家予備校の公募にて放送作家に転身。数々の番組をヒットに導いたノウハウを企業広報に生かす戦略的PRコンサルタントとしても活動中。
〈取材・文/とみたまゆり〉