松田聖子の再来、そう呼ばれたアイドルがいる。あややこと、松浦亜弥(36)だ。
最後のソロアイドル松浦亜弥
2001年、14歳で歌手デビュー。その年から5年連続で『紅白』出場を果たすなど輝かしい実績を残した。モーニング娘。やAKB48など、グループアイドルが席巻してきた平成以降の芸能界にあって「最後のソロアイドル」とも評されるゆえんだ。
が、'13年にw-inds.の橘慶太と結婚して活動を休止。20歳過ぎから患っていた子宮内膜症を乗り越え、現在は3児の母となっている。
そんなあややの13年ぶりの新曲『Addicted』が11月25日に配信される。興味深いのは、プロデューサーでもある夫の言動だ。
《うちの奥さんSNS全くやらないので(笑)僕が毎回代わりに告知や配信するしかなくてFanの皆様申し訳ないです!》
自身のツイッターで、あややのファンを気遣うコメント。そこにはどこか、人気アイドルをかっさらっていった後ろめたさも感じ取れる。
というのも、彼女には本気のファンが多かった。それこそ昨年、松坂桃李の主演で公開された映画『あの頃。』は大のあややファンが繰り広げる実話ベースの青春ストーリーだ。
そんなファンの「ガチ恋」を彼女の結婚は打ちのめした。決定的だったのは、当時のコメントである。
《今年の冬で12年の付き合いになりますが、私の青春には、すべて彼がいます。悲しいこと、辛いこと、嬉しいこと、楽しいこと全部です》
12年といえば、彼女が歌手デビューして結婚するまでとほぼ同じ。あややが青春のすべてだったファンにとっては、複雑だろう。
とはいえ、彼女はもともと、誰かに媚びるようなタイプではない。ハロプロの先輩でユニットを組んだこともある後藤真希とは一時、険悪な仲に。もうひとりのユニットメンバーである藤本美貴と親しかったため、ゴマキが孤立して、ほとんど口をきかなかったと歌番組で振り返っている。
その後、ゴマキもトークバラエティーのなかで、ふたりの関係に触れ、楽屋でおたがいを「嫌い」だと言い合ったことを明かした。
「平成の山口百恵」だった松浦亜弥
そんな松浦は、ファンに対してももたれ合うことをよしとしない。'10年のバレンタインライブでは、
「来てくれるのはうれしいけど、あんまり私ばかり追っかけてちゃダメよ。私、みなさんの人生にまで責任持てませんからね」
と語りかけた。そういう意味で、パフォーマンス的には「聖子の再来」でも、生き方としては「平成の山口百恵」だったのかもしれない。
百恵もまた、アイドル時代に生涯の伴侶を見つけ、恋人宣言まで行って、結婚。それを機に引退して、その後は夫の三浦友和が窓口のようになった。
実は聖子以降、アイドル時代のファンも確保しながら、芸能活動と結婚、育児などを両立させようとする生き方が主流になっている。そんな中、松浦は異色のスタンスを選択。ソロアイドルとしての輝きはもとより、こうした潔い区切りの付け方も伝説化につながった。それゆえ、新曲が配信されるだけで大歓迎されるのだ。
ハロプロのアイドルでは、クローゼット不倫で消えた矢口真里やひき逃げ事故で引退した吉澤ひとみのように、区切りの付け方に失敗した人も珍しくない。やはり、区切りは大事なのである。
というわけで、この連載も百回を迎えた今週でひと区切り。来週からは新連載でお目にかかります。引き続き、よろしく──。